質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第七六号

内閣参質一九〇第七六号
  平成二十八年三月十八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員蓮舫君提出災害対策としての緊急事態条項全般に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員蓮舫君提出災害対策としての緊急事態条項全般に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、中央防災会議防災対策推進検討会議が平成二十四年三月に取りまとめた「防災対策推進検討会議中間報告」及び同年七月に取りまとめた「防災対策推進検討会議最終報告」において措置すべきとされた全ての事項について、災害対策基本法の一部を改正する法律(平成二十四年法律第四十一号)、災害対策基本法等の一部を改正する法律(平成二十五年法律第五十四号)、大規模災害からの復興に関する法律(平成二十五年法律第五十五号)等により、必要な措置を講じたものと認識している。

二について

 御指摘の「緊急車両」の意味するところが必ずしも明らかではないが、例えば、一部の地域において、燃料不足により、警察用自動車の交通整理等のための出動ができなかった事例や、消防用自動車の見回りのための出動ができなかった事例があったと承知している。

三について

 お尋ねについては、災害時における石油の供給不足への対処等のための石油の備蓄の確保等に関する法律等の一部を改正する法律(平成二十四年法律第七十六号)により、我が国への石油の供給が不足する事態に加え、我が国における災害の発生により国内の特定の地域への石油の供給が不足する事態が生じ、又は生ずるおそれがある場合においても国家備蓄石油を譲り渡し、又は貸し付けることができることとしたところである。あわせて、同法により、我が国における災害の発生により特定の地域への石油の供給が不足する事態が生じ、又は生ずるおそれがある場合において当該地域への石油の安定的な供給を確保するための石油精製業者等相互間の連携に関する制度を創設したところである。
 また、平成二十四年度から、国家備蓄石油のうち石油製品について、その種類、それぞれの備蓄量及び蔵置の場所を拡充してきたところである。

四について

 お尋ねのような事例については、個別具体的には把握しておらず、お答えすることは困難である。政府としては、災害対策基本法の一部を改正する法律(平成二十六年法律第百十四号)により、道路管理者が緊急通行車両の通行の妨害となる車両その他の物件の占有者、所有者又は管理者に対し、当該車両その他の物件を付近の道路外の場所へ移動することその他緊急通行車両の通行を確保するため必要な措置をとることを命じ、又は自らこれらの措置をとることができることとしたところである。

五について

 自然災害及び原子力災害の複合災害が発生した場合、災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二十八条の二第一項の規定に基づく緊急災害対策本部と原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十六条第一項の規定に基づく原子力災害対策本部をそれぞれ設置するところ、平成二十七年七月七日開催の中央防災会議において修正された防災基本計画において、警察機関、消防機関、海上保安部署及び自衛隊からなる実動組織の活動を含む災害対策が総合的かつ効率的に実施できるよう、新たに、両本部の情報収集、意思決定並びに指示及び調整を一元化することとしたところである。また、関係機関間の連携を強化するため、複合災害の発生を想定した訓練等を実施しているところである。

六について

 御指摘の「東日本大震災において、当該罰則に基づき逮捕等がなされた」事例を網羅的に把握しているものではないが、例えば、平成二十五年一月に福島県警察において、災害対策基本法第六十三条第一項の規定に基づき市町村長が設定した警戒区域に許可なく立ち入った者を同法違反により逮捕した事例があると承知している。

七及び八について

 御指摘の「強い権限」の意味するところが必ずしも明らかではないが、東日本大震災において、災害対策基本法第六十四条第一項及び第六十五条第一項に規定する市町村長の権限について、お尋ねの「実際に権限が行使された」事例の有無及び「権限が適正に行使されなかった結果、何らかの実害等が発生した」事例の有無については、政府として承知していない。なお、消防庁が実施した消防防災・震災対策現況調査によると、東日本大震災を含めた災害全般について、①同法第六十四条第一項及び②同法第六十五条第一項に規定する権限を発動した回数は、平成二十二年度は、調査を実施していない岩手県、宮城県及び福島県を除き、全国でそれぞれ①二十四回、②二回、平成二十三年度は全国でそれぞれ①九回、②六回であると承知している。

九について

 お尋ねの「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故後、物資の運搬を行う運転手等が放射線等による影響を懸念した結果、同原子力発電所を含む周辺地域等への物資の運搬等が円滑に行えなかったという事例」としては、例えば、平成二十五年二月に福島県郡山市が東日本大震災の記録を残すために作成した「東日本大震災郡山市の記録」に記載されている同県南相馬市内の給油所への燃料配送を運送会社が拒否した事例などが挙げられ、当該事例においては、その後同市の消防団員や自衛隊員が運転手となって配送することとなり、その配送に時間を要したところである。
 このような事例の反省を踏まえ、災害時の燃料の安定供給に支障が出ないようマニュアルの策定等を進めるとともに、万一の原子力災害時の確実な物資の運搬が可能となるよう運転手向けの訓練や研修の充実などを図っているところである。

十及び十一について

 震災関連死(東日本大震災による負傷の悪化等による死亡事案で、市町村により、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和四十八年法律第八十二号)に基づく災害弔慰金の支給対象と認められたもの(災害弔慰金の支給を受けるべき遺族の不存在等によりその支給が行われていないものを含む。)をいう。)については、復興庁において、平成二十四年三月末時点で把握されている事案における死者の性別及び死亡時年齢、死亡時期、死亡原因等について一定の調査及び分析を行い、同年八月二十一日に「東日本大震災における震災関連死に関する報告」を公表したところである。なお、今後、同様の調査を行うことは予定していない。
 また、御指摘の「各自治体でばらつきのある災害弔慰金の支給状況」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同法第三条第一項の規定に基づき、市町村は、条例の定めるところにより、適切に災害弔慰金の支給を行っているものと承知している。

十二について

 御指摘の「被災者の命や生活等を守るために早急に必要だと判断した法律」及び「国会審議の結果実現できなかったこと」の意味するところが必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難である。

十三について

 お尋ねは、議員立法として提案されたものについての国会の運営に関する事項であり、政府としてお答えすることは差し控えたい。

十四について

 お尋ねの「政府が「オールハザード」として列挙している事態」は、政府の危機管理組織の在り方に係る関係副大臣会合において平成二十七年三月三十日に取りまとめた「政府の危機管理組織の在り方について(最終報告)」における「緊急事態」に関する記述を指すものと考えられるが、各緊急事態への該当性は個別の状況に応じて判断すべきものであり、お尋ねのような事例について、一概にお答えすることは困難である。