質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第六六号

内閣参質一九〇第六六号
  平成二十八年三月八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員有田芳生君提出通訳案内士の法的地位に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員有田芳生君提出通訳案内士の法的地位に関する質問に対する答弁書

一について

 通訳案内士(通訳案内士法(昭和二十四年法律第二百十号。以下「法」という。)第二条に規定する通訳案内士をいう。)の制度は、制度創設後六十年以上が経過し、その間、訪日外国人旅行者の飛躍的な増加等により通訳案内を行うための事業環境が大きく変化し、通訳案内士の地域的な偏在、言語間の偏在、通訳案内士の資格を有しない者による違法な通訳案内等、様々な課題が顕在化しているものと認識している。このような中、政府においては、平成二十六年十二月に、「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」(以下「検討会」という。)を観光庁に設置し、通訳案内士制度の在り方について、学識者、通訳案内士団体、観光関係事業者、地方自治体等の関係者から意見聴取し、検討しているところである。御指摘の業務独占についても、検討会における議論の対象に含まれるものであるが、その評価について結論は得られておらず、現時点において業務独占に問題があるか否かについてお答えすることは差し控えたい。
 なお、規制改革会議(以下「会議」という。)において通訳案内士制度について議論するに至った経緯は、内閣府に設置されている「規制改革ホットライン」において、平成二十七年十一月、インバウンド・観光に関連する要望を集中的に受け付けたところ、通訳案内士制度に関する複数の要望が寄せられたことから、平成二十七年十二月二十一日に開催された会議において、通訳案内士制度の見直しについて会議で検討していくことを決めたものである。その後、本年一月二十八日及び二月十日に開催された会議において通訳案内士制度の見直しについて議論を行ったところ、通訳案内士を業務独占の資格としたままでは、急増する訪日外国人旅行者の多様なニーズに対応することは困難ではないかとの意見が多数出され、引き続き検討していくこととされている。

二について

 御指摘の「観光庁の統計」は、観光庁において平成二十五年度に行った通訳案内士制度の見直しに係る調査を指すものと思われるが、お尋ねの就業状況に関する政府の認識については、当該調査において通訳案内士を対象として資格取得の動機について調査を行ったところ、「語学力を証明するため」、「自己研鑽・趣味のため」等、必ずしも通訳案内士として就業することを目的としていない者が一定数存在することから、一概にお答えすることは困難である。なお、当該調査は、平成二十五年度においてのみ実施しているところである。

三及び四について

 政府としては、御指摘のような「大手の旅行会社などが、日常的に無資格通訳案内士を雇用している」といった実態は承知していないが、旅行者からの通報等により、通訳案内士の資格を有しない者であって、報酬を得て、通訳案内を業として行っている者(以下「無資格通訳案内士」という。)の実態を把握するよう努めている。また、通訳案内士の資格を有しない者であって、報酬を得て、通訳案内を業として行うことは、法第三十六条に違反するものと認識している。

五について

 これまで法第四十条により法第三十六条の規定に違反した者に該当する者として五十万円以下の罰金に処することとされた事例はない。政府としては、引き続き実態把握に努めつつ、旅行業者等に同条の規定の趣旨の周知徹底を図るとともに、同条に違反する行為について通報があった場合には、適切な措置を講じてまいりたい。

六について

 政府としては、旅行者からの通報等により、御指摘のような「観光客を安価な商品を高額で販売するなどの悪徳店に連れて行くランドオペレーター」が存することは把握しているが、このような者が無資格通訳案内士を使用しているかどうかについては把握していない。なお、旅行業者の委託を受け、運送、宿泊等のサービスの手配を行う業者であるいわゆるランドオペレーターが無資格通訳案内士を使用したとして摘発された事例は、これまでない。

七について

 一についてで述べたとおり、政府としては、現在、検討会において、通訳案内士制度の在り方について検討を行っているところであり、お尋ねについては、現時点においてお答えすることは差し控えたい。