質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一五八号

在外選挙人名簿登録者数の増加施策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年六月一日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   在外選挙人名簿登録者数の増加施策に関する質問主意書

 海外在留邦人数は、平成二十六年(二〇一四年)十月一日現在の集計で、百二十九万百七十五人で、内三箇月以上の長期滞在者が八十五万三千六百八十七人、永住者が四十三万六千四百八十八人で今後とも増加が見込まれている(外務省領事局政策課「海外在留邦人数調査統計」)。
 一方、在外選挙人名簿登録者数は、平成二十七年九月二日現在十万二千九百二十四人と過去九年間横ばいの状況が続いており、推定登録率も十%弱で頭打ちとなっている(総務省自治行政局選挙部管理課「選挙人名簿及び在外選挙人名簿登録者数」)。また、投票率についても、元々二十%台の前半で低迷していたが、直近の第四十七回衆議院議員総選挙に伴う在外投票においては、十八・八七%(比例代表選挙)と二十%を割り込んでいる。
 投票行為は、憲法で保障された、主権者である国民の基本的人権の行使である。日本国政府にはこの基本的人権の行使が円滑に行われるよう、最大の支援を行う義務がある。海外に在留する邦人の選挙権を実効あらしめるためにも、また、海外からの視点を国政に反映させ、国際常識を踏まえたより良い政治を実現するためにも、在外選挙人名簿登録者数を増加させるための取組みは、急務であると考える。
 以上の認識に基づき、以下質問する。

一 外務省が平成二十五年度に在外邦人向けに実施したアンケート調査では、在外選挙人名簿未登録者の内、六十四%が「登録手続が簡単であれば登録する意思はある」と回答している。
 それに関し、現状では在外選挙人名簿の登録申請にあたっては、原則本人が在外公館に出向かなくてはならないことになっている。在外公館から遠方に居住する邦人にとっては、登録が重い負担となっている。
 「投票環境の向上方策等に関する研究会」でも議論されているように、この課題について、国外を転出先とする転出届をした者は、国内における最終住所の所在地の市町村に対して、同時に在外選挙人名簿の登録の申請を行うことができる制度を一刻も早く実現すべきと考えるが、政府の見解如何。

二 在外選挙人名簿の被登録資格として、申請者の住所を管轄する領事館の管轄区域内に引き続き三箇月住所を有することが要件とされている。
 海外旅行との差別化、二重投票を避けるため等の必要性があるのは理解できるが、最終住所の所在地の市町村の選挙人名簿に登録されている場合など三箇月の居住要件を設ける必要性が高くないケースもあり、そのようなケースについては居住期間要件を撤廃または短縮することも可能ではないかと考えるが、それに関する政府の見解をお伺いする。

三 国内へ一時帰国した際、転入届を提出していれば、国内滞在の期間の長短に関わらず、転入届提出後四箇月を経過すると在外選挙人名簿の登録が抹消される(公職選挙法法第三十条の十一第二号)。在外選挙人名簿に再度登録されるには、再度の登録申請が必要であり、言わば「手続の一からのやり直し」となる。
 この課題については手続の簡略化や国内での滞在期間に応じた配慮を行うなど早急な対応が必要と考えるが、この点に関する政府の問題意識と対応策をお伺いする。

四 在外選挙人名簿登録者数の増加のためには、在外邦人への周知活動の徹底が重要であると考える。この点に関し、この度、在米邦人を代表する一部の方々に聞き取り調査を行ったところ、在外選挙人名簿登録の申請用紙が外務省や総務省及び総領事館等のホームページからダウンロードできることについての周知が、ほぼなされていなかった。一方、外務省在外選挙室に問い合わせたところ、在外選挙制度について、多数の媒体において頻繁に広報がなされていることが判明した。
 それにも関わらず、現実に周知がなされていないのは、どのような理由からと分析されているのか。またそれを踏まえた解決策を示されたい。

五 日本の在外選挙においては、在外選挙人は国内最終住所地等に対応する選挙区に登録され、その選挙区の候補者に対して投票を行っている。しかし、この方法では海外に在住する国民としての意思を国政に反映させることは困難な側面がある。この点につき、他国の立法例では、在外選挙人だけの海外選挙区を創設しているケースも有る。海外選挙区の創設については、海外に在住する国民としての意思を反映しやすいというメリットが有る。また、在外選挙人名簿の一括した管理がしやすくなる点や、海外選挙区独自の選挙運動が可能となる点、補選事務を簡素化することができる点等、海外選挙区創設にはいくつかの利点が指摘されている。
 この海外選挙区の創設に関する政府の見解をお伺いする。

  右質問する。