質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇八号

動物実験基本指針の策定及び運用状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年五月二日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   動物実験基本指針の策定及び運用状況に関する質問主意書

 我が国においては、動物実験の3Rの原則の実効性を担保するために、環境省の「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(以下「飼養保管基準」という。)とは別に、文部科学省が「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(以下「文部科学省基本指針」という。)を、厚生労働省が「厚生労働省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」(以下「厚生労働省基本指針」という。)を、農林水産省が「農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(以下「農林水産省基本指針」という。)を定めている。
 動物福祉をめぐる国際的論調の高まりを受け、現行制度の見直しの必要性について考えたいので、以下質問する。なおここで聞いているのは、動物実験の3Rの原則の実効性担保を目的とし、機関の長の責務、動物実験委員会の設置、委員の構成、教育訓練、情報公開等について定めた動物実験基本指針のことであり、GLP等他の目的で行われている制度については含めない。

一 文部科学省基本指針、厚生労働省基本指針、農林水産省基本指針について、周知が図られている先は具体的にはどこか。独立行政法人、地方公共団体、業界団体等、通知を行っている先を各基本指針ごとに挙げよ。

二 厚生労働省基本指針には、実施機関として「動物実験等を実施する機関であって、次に掲げるもの(これに係る動物実験等を実施する附属の研究所等も含む。)をいう。①厚生労働省の施設等機関 ②独立行政法人(厚生労働省が所管するものに限る。) ③その他の厚生労働省が所管する事業を行う法人」が挙げられているが、

ア 動物実験等を実施している①及び②はそれぞれ具体的にどの法人を指すか。列記されたい。
イ ③については、具体的にどの法律に基づく事業を行う法人が含まれるのか。法律名を列記されたい。
ウ ③については、民間企業も対象となると理解して間違いないか。
エ ①、②及び③について、対象となる法人を全て把握し、厚生労働省基本指針の遵守状況について調査しているか。

三 特定保健用食品の審査制度、機能性表示食品の届出制度等、食品表示に関する業務については、消費者庁が事業を行っているが、

ア これらに関わる動物実験を行う民間企業が遵守すべき国の指針は、厚生労働省基本指針であると理解して間違いないか。
イ 対象となる法人を把握し、厚生労働省基本指針の遵守状況について調査する責任は、消費者庁と厚生労働省のどちらにあるのか。

四 農林水産省基本指針では、実施機関として「農林水産に関する試験研究、検査、開発又は学術研究を行う農林水産省の所管する機関であって、次に掲げるもののうち、動物実験等を実施するものをいう。①農林水産省の機関 ②独立行政法人(農林水産省が所管するものに限る。) ③民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人(農林水産省が所管するものに限る。)」が挙げられているが、これはそれぞれ具体的にどの法人を指すか。この中に民間企業は含まれるか。

五 食品の製造販売等を行う民間企業が、食品もしくは食品成分の効能等の宣伝や、学術誌への論文投稿等の目的で、食品衛生等に関連する法令で求められているわけではない動物実験を行っているが、このような事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針は定められているか。定められている場合、国はこれら事業において動物実験を行う機関を全て把握し、動物実験基本指針の遵守状況についても確認しているか。

六 動物性医薬品の開発・承認申請等や農薬の開発・登録申請等に関連して動物実験を行う事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針は定められているか。定められている場合、国はこれら事業において動物実験を行う機関を全て把握し、動物実験基本指針の遵守状況についても確認しているか。

七 独立行政法人国民生活センターにおける商品テスト等、消費者庁が所管する事業において動物実験が行われているが、これらの動物実験を行う事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針は定められているか。定められている場合、国はこれら事業において動物実験を行う機関を全て把握し、動物実験基本指針の遵守状況についても確認しているか。

八 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)上の新規化学物質の事前審査制度や、各種研究助成金によって行われている事業、国立研究開発法人産業技術総合研究所で行われている動物実験等、経済産業省の所管する事業においても動物実験が行われているが、これらの動物実験を行う事業者や研究機関が遵守すべき国の動物実験基本指針は定められているか。定められている場合、国はこれら事業において動物実験を行う機関を全て把握し、動物実験基本指針の遵守状況についても確認しているか。

九 環境研究総合推進費の採択課題において動物実験が行われている等、環境省の所管する事業においても動物実験が行われているが、これらの動物実験を実施する事業者が遵守すべき国の動物実験基本指針は定められているか。定められている場合、国はこれら事業において動物実験を行う機関を全て把握し、動物実験基本指針の遵守状況についても確認しているか。

十 前記九までに挙げられていない省庁のうち、所管する事業において動物実験が行われていることを把握している省庁は存在するか。存在する場合、具体的にはどの省庁の所管するどのような事業か。それらをカバーする動物実験基本指針は存在するか。

十一 動物実験を行う民間法人全てが対象となる国の動物実験基本指針は存在するか。

十二 文部科学省基本指針、厚生労働省基本指針、農林水産省基本指針に違反した状況で動物実験を行っている機関に対するペナルティとして明文化されたものは存在するか。

十三 文部科学省基本指針、厚生労働省基本指針、農林水産省基本指針に定められた事項を遵守していない個人、例えば動物実験計画書の審査を経ずに動物実験を実施する等した個人へのペナルティとして明文化されたものは存在するか。

十四 国の競争的研究資金のうち、動物を用いる試験・研究に研究費が支払われているものはどれか。そのうち、遵守すべき国の動物実験基本指針及びその指針に違反した場合に応募資格停止等となることが明文化されているものはどれか。

十五 国内で動物実験を実施している機関のうち、国もしくは地方自治体が把握している機関は何割程度と考えられるか。

十六 国際獣疫事務局の「陸生動物衛生規約」では、担当官庁の役割として施設のコンプライアンスを検証するシステムを実施することが挙げられており、施設は少なくとも年一回定期的に検査(inspection)されるべきとされているが、これを実施しているか、もしくは何らかの形での実施を義務付けている官庁は存在するか。

十七 前記一から十六までの回答を勘案し、動物実験の適正化について、我が国の法令及びその遵守状況は十分であると政府は考えるか。特に動物実験基本指針については、環境省の飼養保管基準とも合わせ、国で一本化したものを動物の愛護及び管理に関する法律のもとに策定し、動物実験を行う全ての機関に周知する必要があると考えるが、いかがか。現時点での見解をお示しいただきたい。

  右質問する。