質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇二号

高年法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年四月十八日

大久保 勉   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   高年法に関する質問主意書

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年法」という。)には、希望者全員を対象とする継続雇用制度を就業規則で構築すること及び継続雇用後の労働条件について就業規則で定めることについて明示されていない。そのため、労働基準法第八十九条第二号及び第三号からそれらの就業規則作成義務が導かれるにも関わらず、高年法に明記されていないという理由で、①平成二十四年高年法改正後も継続雇用制度に対象となる定年退職者の選別基準を残したままにしている会社及び②継続雇用後の労働条件が就業規則上明示されていない会社が多数存在している。
 その結果、①定年後の継続雇用を希望する労働者に対して、選別基準に該当しないとして継続雇用規定に基づく継続雇用を拒否しつつ、就業規則上の根拠を有しない労働条件を大幅に切り下げた個別の労働条件を提示して労使紛争に発展する事案及び②継続雇用をするとの意思表示をしつつも、社内の継続雇用規定に継続雇用後の労働条件の明示がないとして、特定の労働者についてのみ他の従業員と比較して大幅に労働条件を切り下げた個別の労働条件を提示して労使紛争に発展する事案が多発している。
 紛争を多発させている要因は、希望者全員を対象とする継続雇用制度と継続雇用後の労働条件について就業規則において予め定める必要があることが高年法の運用上徹底されていないため、労使双方の予測可能性を害している点にある。
 なお、高年法改正の議論では、継続雇用後の労働条件の決定は労使の自由な交渉に委ねるとされたが、これは労使の自由な交渉を踏まえて、各会社の実情にあった内容で就業規則を定めることを想定したものであり、就業規則そのものを定めず、定年退職者が会社の提示する恣意的な労働条件の受け容れを強制されることまでは想定していないと考える。
 右記の通り、高年法と就業規則との関係が不明確であるため、以下、質問する。
 希望者全員継続雇用と継続雇用後の労働条件について就業規則において予め定めるべきか否かは、「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」(平成二十四年十一月九日厚生労働省告示第五百六十号)においても明示されていない。この点については、高年法の改正又は通達等において、希望者全員継続雇用とされる継続雇用制度及び継続雇用後の労働条件について、就業規則上具体的に明示するよう国全体の運用を改善していく必要があると考えるが、就業規則での明示の要否及び今後の労使紛争発生防止のための対策について、高年法の趣旨及び労働法制全体の見地から、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。