質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第七四号

日朝ストックホルム合意と菅内閣官房長官記者会見に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年三月七日

有田 芳生   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   日朝ストックホルム合意と菅内閣官房長官記者会見に関する質問主意書

 平成二十六年五月二十九日の日朝ストックホルム合意に係る菅内閣官房長官記者会見(以下「本記者会見」とする)及び関連事項について質問します。

一 わたしが、平成二十八年一月二十日付けで提出した「日朝ストックホルム合意に関する質問主意書」(第百九十回国会質問第二〇号)質問三において、「合意文書には「行方不明者」とありますが、これは警察庁が拉致の可能性を排除できない行方不明者として全国で捜査・調査している、いわゆる特定失踪者のことですか。警察庁は、平成二十七年七月二十七日現在でこれらの行方不明者数は全国で八百七十七人存在することを明らかにしています。合意文書にある行方不明者は、この八百七十七人のことですか」と質問したところ、政府は答弁書(内閣参質一九〇第二〇号)三についてで、「北朝鮮は、拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を行っていると承知している」と答えています。
 ところが、菅内閣官房長官は、本記者会見において、「拉致被害者及び拉致の疑いが排除されない行方不明の方々」という表現で合意内容について発表しています。この会見内容からすると、日朝ストックホルム合意にある行方不明者とは、拉致の疑いが排除されない行方不明者であると判断してよろしいですか、明確にお示しください。

二 菅内閣官房長官は本記者会見において、「今回の協議において北朝鮮側は、一九四五年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者、拉致被害者及び拉致の疑いが排除されない行方不明の方々を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を実施することを約束をいたしました」と述べています。
 菅内閣官房長官のいう、一九四五年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者、拉致被害者及び拉致の疑いが排除されない行方不明者について、それぞれの定義を明確にお示し下さい。

三 菅内閣官房長官は、日朝政府間協議における日朝双方の合意内容について発表した本記者会見後の記者会見においても日朝ストックホルム合意に関連した内容に触れています。
 それらの記者会見において菅内閣官房長官は、「とりわけ拉致問題は、安倍政権にとって最重要課題であり」(平成二十六年七月三日)、「とりわけ、拉致問題は、安倍政権にとって最重要課題であり」(同年七月四日)、「安倍政権にとって、拉致問題は最優先課題」(同年十月二十日)、「安倍政権にとって、拉致問題は最優先課題」(同年十月二十二日)、「日本側からは、拉致問題が日本にとっての最重要課題であるということを繰り返し強調するとともに」(同年十月三十一日)と述べ、安倍政権にとって拉致問題が最重要課題であるとの方針を繰り返し明言しています。
 ところが、これらの記者会見において、日朝ストックホルム合意に明記された拉致被害者以外の課題については言及がありません。政府は、拉致問題以外の課題については解決の優先課題ではないとお考えなのですか、そうならばその理由をお示し下さい。

四 菅内閣官房長官は、累次の記者会見において「安倍政権にとって、拉致問題は最重要課題」であると繰り返し述べ、他の課題については言及していません。これは、日本国民の基本的人権には人によってそれぞれ軽重があると認識しているからですか。また、「安倍政権にとって、拉致問題は最重要課題」であるとの政府方針は、日本国憲法第十四条に規定する法の下の平等に抵触しませんか。政府の見解を、あわせてお伺いします。

五 わたしが、平成二十五年五月二十三日付けで提出した「政府・拉致問題対策本部ホームページに関する質問主意書」(第百八十三回国会質問第一〇六号)に対する答弁書(内閣参質一八三第一〇六号)において、政府は、一についてで「政府が北朝鮮によって拉致された可能性を排除できない者として北朝鮮に対し情報等を提供し調査を求めている三十数名については、全員御指摘の八百六十八名の中に含まれている」、五についてで「政府としては、これまで北朝鮮側に対し、北朝鮮との協議の場等において、北朝鮮によって拉致された可能性を排除できない者に係る関連情報の提供を繰り返し要求してきているところであるが」と答弁しています。
 また、わたしが、平成二十五年十月二十一日付けで提出した「警察庁が開示した行政文書に関する質問主意書」(第百八十五回国会質問第一六号)に対する答弁書(内閣参質一八五第一六号)において、政府は、八についてで「本年八月二十八日に開催された北朝鮮における人権に関する国連調査委員会の委員に対する政府合同説明会において、我が方から、警察が捜査・調査している北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者が八百六十三人存在する旨を伝えたところである」とも答弁しています。
 以上のことからすると、菅内閣官房長官が本記者会見において発表した「拉致の疑いが排除されない行方不明の方々」とは、警察が捜査・調査している北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者であると判断してよろしいですか。政府の明解な見解をお示し下さい。

  右質問する。