質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第五八号

東日本大震災の応急仮設住宅の供与期間の終了とその対応策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年二月十八日

徳永 エリ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   東日本大震災の応急仮設住宅の供与期間の終了とその対応策に関する質問主意書

 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)に被災して避難している人々に係る応急仮設住宅は、災害救助法に基づき無償で提供され、国と協議の下、福島県が延長を行ってきた。平成二十七年六月十五日、福島県は避難者に供されている応急仮設住宅の供与期間を平成二十九年三月末までとするとし、避難指示区域以外からの避難者に対する平成二十九年四月以降の取扱いについては、災害救助法に基づく応急救助から新たな支援策へ移行すると発表した。福島県はその後、避難指示区域外からの避難者への対応として、平成二十七年十二月七日に移転費用の支援について、また同月二十五日に「帰還・生活再建に向けた総合的な支援策」(以下「総合的な支援策」という。)について発表した。
 避難指示区域以外からの避難者、いわゆる自主避難者への住宅支援については現行施策のさらなる延長を望む声が全国の避難者から出ており、新たな枠組みに移行した場合の経済的負担(家賃負担)への懸念も広がっている。また今後避難指示区域の解除が進めば、対象範囲・対象者が広がることにもなる。「政府が前面に立つ」とこれまで約束してきたことからも、政府として単に福島県に「お任せ」でいいという話ではなく、今回の福島県の支援策について国(政府)の見解を質すことが重要と考え、以下の通り質問する。

一 福島県の総合的な支援策は、平成二十九年四月以降は避難者が公営住宅の家賃を払って生活する形が基本になっており、家賃への支援は民間賃貸住宅の家賃を公営住宅並みに軽減するためという考え方である。そもそも、災害救助法に基づく現行の施策を平成二十九年四月以降も延長するという選択肢も検討すべきではないか。仮に原発事故からの避難者への住宅支援策を変更するとしても、現状では無償の応急仮設住宅等から一律に公営住宅(並み)の家賃負担への移行という形が適切なのか。その場合も、段階的できめ細かな激変緩和措置等が必要ではないか。これらの点について国の見解を問う。

二 仮に全体的には公営住宅(並み)の家賃負担へ移行するとしても、より低所得の避難者(母子家庭、生活保護受給者、低年金などの避難者)に対しては、(当面は家賃無料を継続するなど)公営住宅(並み)よりも家賃負担を軽減する措置を講ずるべきではないか。

三 雇用促進住宅の家賃は公営住宅よりかなり高くUR賃貸住宅に近い。総合的な支援策ではUR賃貸住宅は民間賃貸住宅扱いで家賃補助の対象となるが、雇用促進住宅は家賃補助の対象になっておらず家賃負担が重くなる。これは「公営住宅(並み)の家賃負担」の原則から外れることになるので、雇用促進住宅も家賃補助の対象とすべきではないか。

四 前記一から三の措置を行う際に発生する追加的な財政負担は国が持つべきと考えるが、どうか。

五 平成二十九年四月以降も雇用促進住宅やUR賃貸住宅を借り続ける場合は、通常の契約と同じ手続きが必要となり、敷金や保証人などを用意しなければならない。雇用促進住宅においては、収入が家賃及び共益費の合計額の三倍以上という要件が課される。結果として、低所得の避難者(母子家庭、生活保護受給者、低年金などの避難者)は住み続けることができなくなる可能性があるのではないか。民間賃貸住宅についても、収入の不安定な状況で地元に保証人も用意できず、新しい住居を確保することが困難になるのではないか。

六 そもそも現在応急仮設住宅として供されている公営住宅等に避難者が引き続き居住できるのかについて、福島県は各都道府県に働き掛けるとしているが、未だ定かではない。避難者が公営住宅等に引き続き居住できるよう、国がイニシアティブを取って関係各都道府県に働き掛けるなどすべきではないか。

七 福島県ふるさと住宅移転補助金交付要綱に基づく補助金(福島への帰還に関して家族世帯で十万円、単身世帯で五万円。二年間避難したことが認められれば既に帰還して生活している人も可)は、引っ越し費用が十分にカバーされる訳ではないが、やはり「帰還圧力」と言われても仕方がないのではないか。そもそも、子ども・被災者支援法(東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律)第二条第二項の「被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない」との規定が尊重されていないのではないか、この点を国はどう考えるか。

八 総合的な支援策の一環として、避難世帯に対して福島県が実施している「住まいに関する意向調査」について、福島県は応急仮設住宅等に住んでいる人を対象としているとしており、自費でアパートを借りた人や事情があって応急仮設住宅等から引っ越した人は対象としていない。意向調査は、それらの人々を含めより広く対象とすべきではないか。

九 「住まいに関する意向調査」の実施が、十二月二十五日の総合的な支援策の発表の後というのは問題ではないか。避難者の意向を把握した上で支援策を考えるべきではないか。今まで各地で行われた説明会で避難者から出た意見も支援策にほとんど反映されていない。避難者の意見を反映するよう、国としても福島県等に促すべきではないか。

  右質問する。