質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第三三号

束ね法案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年二月三日

吉川 沙織   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   束ね法案に関する質問主意書

 近年、内閣提出法律案において、複数の法律を改正等しようとするときにこれらを束ねて一本の法律案として提出する、いわゆる「束ね法案」が増加している。例えば、平成二十六年、第百八十六回国会に提出された「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」は十九本、平成二十七年、第百八十九回国会に提出された「電気事業法等の一部を改正する等の法律案」は七本、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」は十本の法律の改正法案等を束ねて一本の法律案として提出され、今国会においても、十一本の法律の改正法案を束ねた「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(仮称)」の提出が検討されている。こうした束ね法案は、国会審議を形骸化し、国会議員の表決権を侵害するおそれがあり、国民への情報公開の観点からも問題がある。こうした観点から、以下、質問する。

一 過去十年間の常会に内閣から提出された束ね法案の数及び内閣提出法律案に占める割合の推移を年別に示されたい。あわせて、うち本則で三本以上の法律の改正等を行う束ね法案、同様に七本以上の法律の改正等を行う束ね法案の数及び内閣提出法律案に占める割合の推移についても示されたい。

二 複数の法律の改正法案等を束ねて一本の法律案として提出する基準を示されたい。これまで政府は、内閣法制局が示した三原則を繰り返し答弁しているが、これに変更はあるか。

三 複数の法律の改正法案等を束ねて一本の法律案として提出することにより、法律案の問題点についての詳細な議論が制約される。また、三本以上の法律の改正法案等を束ねて提出する場合には、何の法律が改正されるのかさえ国民から見えにくくなる。安易な束ね法案の提出は、安倍内閣総理大臣が多用する「国民への丁寧な説明」の趣旨に反するものであり、内閣提出法律案はできるだけ改正法案ごとに分けて提出すべきと考えるが、見解を問う。

四 個々の法律案に対する賛否が異なる場合でも、束ね法案では一括して賛否を表明しなければならない。このことは、憲法で保障された国会議員の表決権を侵害するものではないか。

五 WTO設立協定の締結に伴う国内法整備法案については、第百三十一回国会に「著作権法及び万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律の一部を改正する法律案」、「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案」、「繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案」、「農産物価格安定法の一部を改正する法律案」、「特許法等の一部を改正する法律案」、「関税定率法等の一部を改正する法律案」、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律案」の七法律案として提出された。条約締結に伴う国内法整備という点では同じであるにもかかわらず、TPP協定の締結に伴う国内法整備に関しては、束ねて一本の法律案として今国会に提出することが予定されているのはなぜか。この間、どのような事情の変更があったのか。TPP協定の締結に伴う国内法整備についても、WTO設立協定と同様、複数の法律案に分けて提出すべきではないか。

六 TPP協定の締結に伴う国内法整備の対象となる法律は、ごく一部を除き、それぞれ趣旨、目的が異なっており、内容的にも相互に関連していない。また、本来付託される常任委員会も同一ではなく、これまで政府が法案を束ねる際の基準としてきた内閣法制局の三原則とも相反するものではないか。

  右質問する。