質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第三〇号

国鉄共済年金に係る不均衡の是正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年一月二十八日

吉田 忠智   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   国鉄共済年金に係る不均衡の是正に関する質問主意書

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(以下「被用者年金一元化法」という。)が二〇一五年十月に施行されたことにより、公務員共済年金が厚生年金に統合され、公的年金としての共済年金は終了した。
 しかし、国鉄共済年金の財政危機を理由とした十%の給付の削減、職域年金の支給停止による格差は是正されず、公務員共済年金や他の公共企業体職員等共済年金との不均衡は解消されないままとなっている。
 また、追加費用削減策としての恩給期間に係る給付の引き下げは、恩給対象者以外の人も「追加費用対象期間」として減額されている。
 掛金制度の無い恩給と掛金を負担した共済年金者を一くくりにして減額することは公平性と説得性を著しく欠くものと言える。
 よって、以下質問する。

一 国鉄共済年金の財政危機の原因となった国鉄職員構成上の歪みについて、以下の項目に関する政府の事実認識を明らかにされたい。

(1) 昭和十二年から二十三年までの戦中・戦後期十二年間に百八万人の職員を採用していること。
(2) 昭和二十年から二十三年の間に二十五万九千人を採用すると共に、二十三万九千人の復員者等の受け入れをしていること。
(3) 昭和十二年から十九年の戦前・戦中期、国鉄は戦時輸送力の増強という国策上の要請から、また、応召・外地派遣により不足した青壮年熟練労働力の補充のため、青年層を中心として五十八万四千人の新規採用を行ったこと。
(4) 戦後、復員者・外地引揚者の吸収や、戦後混乱期における減耗職員の補充のため大量採用を続けた結果、若年層に過大な職員層を抱えることとなったこと。
(5) 昭和二十四年に「行政機関職員定員法」の施行による人員整理が行われた。国鉄における行政整理の基準は、職務に必要な資格要件の有無、勤続年数の長さ(先任順位)が基準とされたため、整理対象の中心は若年層職員となったが、当時の若年層職員数は約十万人にのぼり、行政整理によってもなお、この職員構成上の歪みは解消されなかったこと。
(6) 昭和三十一年の年金受給者十五万二千人が昭和六十二年には四十七万人となっていること。

二 前記一で示した国策遂行のために採用されたこれらの職員が昭和五十五年以降大量に退職時期を迎え、国鉄共済年金の成熟度が急激にその速度を速め、他の共済年金に比べ高度化し、財政危機をまねいたことは、国鉄共済年金の運営主体の財政努力を超える問題であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 昭和六十一年の年金制度の改正で、公的年金として制度設計された共済年金の職域年金が国鉄共済年金については支給停止とされ、平成九年に公共企業体職員等共済年金が厚生年金に統合された後も職域年金の支給停止は継続されたままとなっている。
 厚生年金への統合にあたって、NTT共済年金は職域年金を退職特例年金として、存続組合のNTT厚生年金基金から引き続き支給されている。
 被用者年金一元化法により公務員共済年金の職域部分は、「施行日前に共済年金の受給権を有する者については、従来通り職域部分を支給する」とされ、統合後に退職して年金裁定を受けるときは厚生年金となるが、職域部分廃止後は、別に法律で定め、職域年金に相当する新しい年金として「年金払い退職給付」を創設し、保険料を積み立てる民間の企業年金に相当するものとして支給するとしている。
 この様に長年、格差・差別行為に耐え忍んできた国鉄共済年金受給者に対し、被用者年金一元化を機会に、可及的速やかに不均衡の是正を図るべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 第百八十回国会における衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(平成二十四年六月七日)で、中島正純議員の「被用者年金一元化法案の追加費用の削減について」の質問に対して、安住淳国務大臣は「昭和三十四年までは恩給制度がありましたので、その前からお勤めになっている方々は今でもこの恩給の支給が対象になっているわけですね。そういう点からいうと、追加費用、今回、二七%削減の考え方を示しましたけれども、これは、本人の保険料負担は四・四%であったのに対して、恩給期間の本人負担は二%でございました。このために、恩給期間に係る給付が本人負担の差に見合った水準になるように、その差二・四%の、共済制度発足時の全体の保険料八・八%に対する比率、これを、二七%相当の部分ですから、削減をするということにいたしました。」と答弁し、恩給対象者に限定した政府見解が示された。
 一方、共済年金者の減額には、全く触れていない。このような国会審議経過からみて今回の減額は理不尽かつ不当極まりない。
 また、安住大臣は、年金給付について「本人負担の差に見合った水準になるように」と述べており、いわずもがなではあるが共済年金者は本人負担千分の五十を支払ってきている経緯から、今回の減額は計算式が成り立たないことと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。