質問主意書

第190回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

国家戦略特別区域における医学部新設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年一月十九日

相原 久美子   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   国家戦略特別区域における医学部新設に関する質問主意書

 政府は、国家戦略特別区域における医学部新設に関して、「国家戦略特別区域における医学部新設に関する方針」(平成二十七年七月三十一日内閣府・文部科学省・厚生労働省決定。以下「方針」という。)を定め、また、平成二十七年十一月十二日、方針に基づき、「文部科学省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件」(平成二十七年内閣府・文部科学省告示第一号。)を定めた。
 その後、同月二十七日に東京圏の国家戦略特別区域計画が認定され、今後、千葉県成田市において、学校法人国際医療福祉大学が医学部の設置の認可を受けた上で、平成二十九年四月から国際的な医療人材を育成するための医学部を新設する予定となっている。
 そこで、国家戦略特別区域における医学部新設に関して以下の質問をする。

一 方針の「目的」において、「世界最高水準の「国際医療拠点」をつくるという国家戦略特区の趣旨を踏まえた、国際的な医療人材の育成のための医学部新設の方針を定める。」とされている。これを踏まえて政府の見解を問う。
 成田市における説明「国家戦略特区における医学部新設について」(平成二十七年九月二十七日成田市企画政策部国家戦略特区推進課)によれば、千葉県内の医学部は千葉大学の一校のみであり、人口十万人当たりの医師数は全国最下位レベルにあるなど医師不足は将来的にも厳しい状況が続くと見込まれることに鑑み、こうした状況を改善し、地域医療の崩壊を未然に食い止めるためとして、成田市は、国家戦略特別区域を活用した医学部新設を提案したとされる。
 他方、政府作成の方針においては、「一般の臨床医の養成・確保を主たる目的とする既存の医学部とは次元の異なる、上記の目的に沿った際立った特徴を有する医学部とすること。」とされている。
 政府作成の方針には地域医療の充実強化の視点は見受けられないが、成田市における医学部新設の説明はこれと矛盾するものになっている。このことについてどのように考えるか。

二 方針の「方針・進め方」において、「成田市分科会における議論を踏まえ」とされている。これを踏まえ、以下について政府の見解を問う。

1 成田市分科会の出席者の大半が国、成田市及び学校法人国際医療福祉大学等の関係者であるが、成田市民の代表者や地域医療関係者も出席させ、意見を議論に反映させるべきではないか。
2 成田市分科会はこれまでに計五回開催されているが、審議時間は合計約四時間と非常に少ない。住民や地域医療関係者の意見は無視する形で形式的な議論により結論が導き出されているのではないか。

三 方針の「留意点」において、「自律的な運営のための具体的な計画が立てられている等、実現可能性が認められること。」とされ、また、「教育上必要な基準等」において、「現行の設置基準のほか、過去の基準や既存の医学部の水準を参酌して必要な教育環境を整備することはもとより、大学附属病院の病床数の確保や、その他校地・校舎等の確保に関する所要の手続を含め、世界最高水準の医学教育を実施することができる教育環境を整備する。」こととされている。これを踏まえ、以下について政府の見解を問う。

1 医学部新設事業において、成田市の財政負担は最大で約百三十億円超と見込まれているが、当該事業に係る国から成田市に対する財政措置は検討されているか。また、財政措置が検討されている場合、具体的な国の負担額はいくらか。
2 財政措置が検討されていない場合、国家戦略特別区域制度を活用した医学部新設という国家的事業において、成田市及び市民が多大な事業費負担を強いられることは不合理であると考える。政府は、財政措置を検討すべきではないか。

四 医療従事者及び関係団体からは、国家戦略特別区域における医学部新設に関して、医師不足対策にはならず、また、地域医療の再生を妨げるおそれがあるなどとして強く反対する旨の声明が発表されている。政府は、こうした反対意見や懸念に対して納得のできる説明をする必要があると考えるが、見解を問う。

  右質問する。