質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第三四一号

内閣参質一八九第三四一号
  平成二十七年十月六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出犯罪賠償金の支払確保策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出犯罪賠償金の支払確保策に関する質問に対する答弁書

一について

 損害賠償債権の回収については、債務者である加害者が任意に支払をする場合等もあり、政府において、その全てを把握することは困難なことから、損害賠償命令制度が利用された事案における損害賠償金の支払状況の網羅的な調査は行っていない。

二について

 犯罪被害者等が損害賠償命令制度を利用するか否かについては、個別の事案における事情によるものであって、「同制度の利用が低調である」との御指摘は必ずしも当たらないものと考えているが、引き続き、同制度の周知に努めてまいりたい。

三について

 加害者の損害賠償債務の国による立替払については、平成十八年四月十日の犯罪被害者等施策推進会議決定に基づき開催された「経済的支援に関する検討会」の最終取りまとめ(平成十九年九月)において、「そもそも加害者に資力がなく、犯罪被害者等が、事実上損害賠償を受けられず、何らの救済も受けられないでいる実情に鑑み、社会の連帯共助の精神から、国が給付金を支給する制度が創設されたものであり、実質的な面から見ても、従来の求償実績に照らし、求償権行使については実効性の担保が期待できず、給付制度と異ならないから、結局、・・・給付制度の検討に帰着するものと考えられる」とされ、平成十九年十一月六日の犯罪被害者等施策推進会議において、犯罪被害者等の経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿等に関し、同最終取りまとめをその結論とする旨の決定がされたところである。その後、加害者の損害賠償債務の国による立替払について、同決定における結論を変更するような事情の変更はないものと考えている。

四について

 訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者に対しては、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第八十二条第一項の規定に基づき、裁判所は、申立てにより、訴訟上の救助の決定をすることができ、当該決定は、その定めるところにより、裁判費用並びに執行官の手数料及びその職務の執行に要する費用の支払の猶予等の効力を有する。
 また、民事裁判等手続(裁判所における民事事件、家事事件又は行政事件に関する手続をいう。以下同じ。)において自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民若しくは我が国に住所を有し適法に在留する者(以下「国民等」という。)又はその支払により生活に著しい支障を生ずる国民等に対しては、日本司法支援センターは、民事裁判等手続の準備及び追行のため代理人に支払うべき報酬及びその代理人が行う事務の処理に必要な実費(訴えを提起する場合の手数料を含む。)の立替え等の業務を行っている。
 お尋ねのような訴訟費用についても、これらの制度による支援が適切に行われているものと認識している。

五について

 お尋ねの「加害者からの賠償金回収も担わせる国の専門部署」の具体的に意味するところが明らかではないが、政府として、引き続き、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間の団体等の連携の下、損害回復・経済的支援等への取組も含めた犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進してまいりたいと考えている。

六について

 財産開示手続については、その実効性が乏しいとの指摘があり、これを重く受け止めなければならないと考えている。債権者の権利の実現をより一層確保するため、同手続の在り方等に関し、検討を進める必要があると考えている。