質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第三三〇号

内閣参質一八九第三三〇号
  平成二十七年十月六日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員大久保勉君提出あはき師の労災保険取扱いに係る労働局との協定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大久保勉君提出あはき師の労災保険取扱いに係る労働局との協定に関する質問に対する答弁書

一について

 前段及び中段のお尋ねについては、厚生労働省職員が御指摘の「本件説明」をした事実は無く、お答えすることは困難である。
 後段のお尋ねについては、労働者災害補償保険制度において、あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師(以下「あん摩マッサージ指圧師等」という。)の施術に係る療養の費用の請求については、実際に施術に要した費用を適正に請求していることが確認できるよう被災労働者が自ら費用を負担した後に保険者である政府にその費用を請求する(以下「償還払い」という。)ことを原則としているが、あん摩マッサージ指圧師等を構成員とする団体であって、都道府県労働局長との間に、労災保険あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師施術料金算定基準(以下「算定基準」という。)等を傘下の会員に周知徹底させる協定を締結した団体(以下「協定締結団体」という。)の会員であるあん摩マッサージ指圧師等の場合には、算定基準等について適切な運用を図ることが期待できることから、被災労働者が療養の費用の受領を施術者に委任(以下「受領委任」という。)することを例外的に認めている。

二について

 お尋ねの「あはき師による労災保険の療養(補償)請求が不正の温床となっていることを示すデータ」については、把握していない。
 また、協定締結団体の会員であるあん摩マッサージ指圧師等とそれ以外のあん摩マッサージ指圧師等の間に療養の費用の請求について差異を設けている趣旨は、一についてで述べたとおりであり、「労災保険における「はり・きゅう及びマッサージ」の施術に係る施術料金等の取扱いについて」(昭和五十七年五月十一日付け基発第三百二十六号―一)及び「指名施術所に対する療養(補償)給付たる療養の費用の受任者払の取扱いについて」(昭和五十七年五月十一日付け基発第三百二十六号―二)に基づき、実施している。
 さらに、柔道整復師が行った施術に対する療養の費用の請求については、かつて整形外科を担う医師が少なかったこと及び柔道整復師が脱臼又は骨折に対する応急手当をする場合には柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第十七条の規定により医師の同意を要しないとされていることを踏まえ、例外的に、受領委任することを認めており、「柔道整復師に対する療養補償費の受任者払の取扱いについて」(昭和三十四年八月五日付け基発第五百四十五号)及び「個人の申請に基づく柔道整復師等の受任者払の取扱いについて」(平成三年七月八日付け補償課長事務連絡第二十三号)に基づき、実施している。

三について

 あん摩マッサージ指圧師等を構成員とする団体であって、都道府県労働局長との間に、算定基準等を傘下の会員に周知徹底を図る協定を締結していることを要件としている。

四について

 協定締結団体に加入していないあん摩マッサージ指圧師等の施術に係る医療保険制度の療養費又は労働者災害補償保険制度の療養の費用の請求方法については、いずれも償還払いであるため、差異はない。

五について

 お尋ねのデータは、存在しない。
 また、御指摘の対象団体への加入の有無については、医療保険制度におけるあん摩マッサージ指圧師等の施術に係る療養費の請求とは無関係であることから、御指摘の調査を行うことは考えていない。

六について

 お尋ねのデータは、存在しない。
 また、医療保険制度におけるあん摩マッサージ指圧師等の施術に係る療養費は、被保険者の申請に基づき、保険者が審査を行い、保険者が必要と認めた場合に支給されるものであり、不正請求であるかどうかの判断についても、保険者が行うことになることから、御指摘の調査を行うことは考えていない。

七について

 御指摘の「本件実務」は労働者災害補償保険制度の適正な運営のために設けられた合理的な制度であり、憲法第十四条が保障する平等権を侵害するとの御指摘は当たらないものと考えている。

八について

 御指摘の「本件実務」は、算定基準等について適正な運用を図ることで、労働者災害補償保険制度の公正な運営を図るという合理的な目的の下に、療養の費用の請求方法を定めるものにすぎず、あん摩マッサージ指圧師等が協定締結団体に加入しないで営業を行うことを規制するものではなく、また、被災労働者が保険給付を受ける権利を侵害しているものではないため、手段としても合理的であることから、憲法第二十一条第一項が保障する結社の自由及び憲法第二十二条第一項が保障する経済活動の自由を侵害するとの御指摘は当たらないものと考えている。