質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第三〇〇号

内閣参質一八九第三〇〇号
  平成二十七年九月二十九日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員藤末健三君提出ホルムズ海峡における機雷掃海の必要性に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出ホルムズ海峡における機雷掃海の必要性に関する再質問に対する答弁書

一及び二について

 他国に対する武力攻撃の一環として敷設された機雷を除去する行為は、「武力の行使」に当たり得るが、政府が想定しているホルムズ海峡における機雷掃海の事例は、機雷が敷設された後、事実上の停戦状態となり、戦闘行為はもはや行われていないが、正式停戦が行われず、遺棄機雷とは認められないようなケースである。
 ホルムズ海峡は、我が国が輸入する原油の約八割、天然ガスの約三割が通過する、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路であり、仮に、ここに機雷が敷設された場合には、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するおそれがあり、エネルギー源の供給が滞ることによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こるなど、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況、すなわち存立危機事態に該当する場合もあり得ると考えられる。ホルムズ海峡に機雷が敷設された状況が存立危機事態として認定されることを前提とするならば、敷設された機雷は、それ自体が正に国民の生死に関わるような深刻、重大な被害を及ぼしている元凶であり、一旦敷設されればその場所にとどまり、将来にわたって被害を継続させ拡大させていく性質を有していることからできる限り早くこれを除去する必要性が高いこと及び機雷の除去は、これが敷設された場所にまで行かなければできないことから、当該機雷の掃海は、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しし、平成二十七年九月十九日に成立した我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)による改正後の自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十六条第一項及び第八十八条並びに改正法による改正後の武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第二条第二号及び第四号、第三条第三項及び第四項並びに第九条第二項第一号ロに明記されている「武力の行使」の三要件(以下「新三要件」という。)を満たすことがあり得ると考えている。
 このようにホルムズ海峡における機雷掃海の事例は新三要件に該当する場合もあり得るものであるが、今現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではない。
 特定の国がホルムズ海峡に機雷を敷設することを想定しているわけではないが、ホルムズ海峡を擁する中東地域においても安全保障環境がますます厳しさと不透明性を増す中で、国民の命と平和な暮らしを守るため、あらゆる事態に万全の備えを整備しておくことが必要であると考えている。