質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二〇四号

内閣参質一八九第二〇四号
  平成二十七年七月二十一日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員石上俊雄君提出産業活性化のための国家デジタル戦略に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出産業活性化のための国家デジタル戦略に関する質問に対する答弁書

一の1について

 政府としては、「世界最高水準のIT利活用社会」を実現するとする「世界最先端IT国家創造宣言」(平成二十五年六月十四日閣議決定。以下「平成二十五年創造宣言」という。)を策定し、着実に実施してきたが、様々な物にセンサ等が埋め込まれ、収集された多量の情報がインターネットでやり取りされるいわゆるIoTや、いわゆるビッグデータ解析等の技術の進展等を踏まえ、今般、「世界最先端IT国家創造宣言」(平成二十七年六月三十日閣議決定。以下「平成二十七年創造宣言」という。)を策定したところであり、これに基づく施策を着実に実施することにより、我が国における新たなビジネスの創出や国際競争力強化について取り組んでまいりたい。

一の2について

 文部科学省においては、平成十八年度から世界最先端・最高性能のスーパーコンピュータ「京」(以下「「京」」という。)及び「京」を最大限活用するためのソフトウェアの開発を進め、総合科学技術会議(当時)から着実に進められたと認められるという評価を得た。また、平成二十六年度から「京」の後継機となるスーパーコンピュータ及びこれを活用するためのソフトウェアの開発に着手したところである。このような最先端のスーパーコンピュータの開発等については、「「日本再興戦略」改訂二〇一五」(平成二十七年六月三十日閣議決定)等も踏まえ、継続的に取り組んでいるところであり、現時点では、御指摘のような「スパコン法」を検討することは考えていない。

一の3について

 ロボットの利用に伴う高画質で長距離の画像伝送などの新たな電波利用のニーズに応えるため、現在、情報通信審議会において、使用可能な周波数や空中線電力等についての技術的な議論を着実に進めているところである。今後、同審議会における議論が完了した部分から、順次、制度の整備を行うこととしている。

二について

 お尋ねの「自動走行」の実現に向けて、平成二十五年九月十三日の総合科学技術会議(当時)において戦略的イノベーション創造プログラムの十の対象課題の一つとして「自動走行(自動運転)システム」が選定されたところであり、同プログラムに基づき、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた成果の展開も意識しつつ、官民が一体となって取り組むべき共通基盤技術の研究開発を中心として取組を推進することとしている。また、研究開発の早い段階から海外の関係機関と協働する環境を整えることも目指しており、関係府省はもとより民間企業とも協力しながら、共通基盤技術の標準化における我が国の主導的役割の確保や我が国の国際競争力の強化に向けた研究開発を着実に進めているところである。今後、「科学技術イノベーション総合戦略二〇一五」(平成二十七年六月十九日閣議決定)及び「「日本再興戦略」改訂二〇一五」等も踏まえ、関係府省間で密接に連携を図りながら、これらの取組を強化してまいりたい。

三の1について

 高精細な映像の流通やいわゆるIoTによる今後の通信の増大に対応すべく、情報通信ネットワークの一層の高速化及び大容量化に向け、それぞれの情報通信ネットワークの特性や開発段階に応じ、産学官が連携して、研究開発の推進、技術の標準化、製品化に向けた開発等が着実に進められているところである。政府としては、今後も産学官による研究開発等の取組を促進し、情報通信ネットワークの一層の整備及び充実を図ってまいりたい。

三の2について

 御指摘の「8K放送の実現」や「テレビのスマート化」については、平成二十七年三月の4K放送開始に際して技術基準の策定などの環境整備を行い、着実に推進してきたところである。平成二十七年創造宣言において、平成三十二年には、「多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K番組やスマートテレビに対応したサービスを享受できる環境を実現する。」としているところであり、今後も引き続き、平成二十七年創造宣言に基づき、着実に取組を推進してまいりたい。

四の1について

 老朽化したインフラの維持管理については、これに資する技術研究開発が、平成二十五年九月十三日の総合科学技術会議(当時)において戦略的イノベーション創造プログラムの十の対象課題の一つである「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」として選定されたところであり、同プログラムに基づき、外部有識者による評価及び助言を得つつ進められている。また、「インフラ長寿命化基本計画」(平成二十五年十一月二十九日インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議決定)においても、「ICT、センサー、ロボット、非破壊検査、補修・補強、新材料等に関する技術研究開発を進め、それらを積極的に活用する」こととしているところであり、同計画に基づき、技術研究開発を進めているところである。このような技術研究開発については、着実に実施されており、今後も引き続き、着実に進めてまいりたい。

四の2について

 防災・減災に係る様々なデジタル技術の活用については、平成二十五年創造宣言、「世界最先端IT国家創造宣言」(平成二十六年六月二十四日閣議決定)、平成二十七年創造宣言や「科学技術イノベーション総合戦略二〇一五」において、多様な手段によるデータ収集の拡充、高度なシミュレーションを利用した精緻な地震・津波被害に関する予測技術の実用化、JアラートやLアラート等による災害関連情報の重層的な収集・伝達体制の構築、ソーシャルメディアを用いた災害情報収集・分析と災害推定技術の開発等、情報通信技術の活用による防災・減災体制の構築のための取組が掲げられており、これらを着実に進めてきたところである。今後も引き続き、関係府省が連携して、こうした取組を進めてまいりたい。

四の3について

 御指摘の「リアルタイム生体情報や遺伝子情報、過去の診断結果等を統合した医療ビッグデータの解析」の意味するところが必ずしも明らかではないが、生活習慣病の予防等により、健康寿命の延伸や医療介護費の適正化を図ることは重要であると認識しており、これまでも、診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)のデータや特定健康診査のデータ等を活用した医療保険者による保健事業を推進するとともに、レセプトのデータ等のデータベースを構築し、その利活用の促進を図るなどの取組を着実に進めているところである。今後も、「「日本再興戦略」改訂二〇一五」に基づき、更なる健康長寿社会の実現を目指して、医療介護政策へのデータの一層の活用を行うこととしている。

五の1について

 御指摘の「我が国独自の衛星ネットワークの確立」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、政府としては、これまで宇宙基本法(平成二十年法律第四十三号)に基づき、着実に人工衛星等を整備してきたところである。「宇宙基本計画」(平成二十七年一月九日宇宙開発戦略本部決定)においても、今後十年間に必要となる人工衛星等の機数や整備の年次を明記しており、今後、これに従い着実に人工衛星等の整備等の施策を実施することとしている。

五の2について

 政府としては、これまで宇宙基本法に基づき我が国の宇宙産業の振興に着実に取り組んできたところであり、「宇宙基本計画」においても、「衛星リモートセンシング情報や衛星測位による位置情報等、宇宙システムを活用して取得・蓄積される「ビッグデータ」を情報通信技術を駆使して新たな価値を生み出す等、宇宙に関連した新事業・新サービスを創出する民間事業者の取組を後押し」することとしている。今後、「宇宙基本計画」に基づき、宇宙政策のみならず情報通信技術や地理空間情報等に関係する府省が密接に連携して、施策を具体化し、これを着実に実施することとしている。