質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五一号

内閣参質一八九第一五一号
  平成二十七年六月十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員福島みずほ君提出戦争法案に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出戦争法案に関する質問に対する答弁書

一について

 従来から、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる「海外派兵」は、一般に、自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないが、他国の領域における武力行動でいわゆる自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと考えてきている。このような考え方は、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」(平成二十六年七月一日閣議決定)でお示しした「武力の行使」の三要件(以下「新三要件」という。)の下で行われる自衛の措置としての「武力の行使」にもそのまま当てはまるものと考えられる。
 なお、新三要件については、現在、国会に提出している我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)による改正後の自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十六条第一項及び第八十八条並びに改正法案による改正後の武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第二条第二号及び第四号、第三条第三項及び第四項並びに第九条第二項第一号ロにおいて過不足なく規定されている。

二について

 御指摘の答弁書(平成二十六年四月十八日内閣参質一八六第六七号)六及び七についてでお示しした報告事例については、我が国が参加していない第三国間の軍事行動に関するものであり、政府としてその詳細な事実関係について、お答えすることは差し控えたい。

三及び四について

 お尋ねの「非戦闘地域」は、旧イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(平成十五年法律第百三十七号)第二条第三項で定められていた「現に戦闘行為・・・が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域をいうと考える。
 政府として「戦場」との語は用いておらず、また、お尋ねの「戦場の隣り」及び「将来」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、「戦場の定義は何か」、「戦場の隣りは、将来、戦闘行為が行われる可能性があるが、そのような理解でよいか」及び「戦場の隣りまで拡大されるとの理解でよいか」についてお答えすることは困難である。
 なお、現在、国会に提出している国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(以下「国際平和協力支援活動法案」という。)第二条第三項においては、協力支援活動及び捜索救助活動は、現に戦闘行為が行われている現場では実施しないものとすることを明記している。

五、七及び八について

 国際平和協力支援活動法案においては、防衛大臣は、自衛隊の部隊等が協力支援活動等を円滑かつ安全に実施することができるように当該協力支援活動等を実施する区域を指定することとしており、現に戦闘行為が行われておらず、自衛隊の部隊等が現実に協力支援活動等を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することになる。また、万が一、状況の変化により、当該自衛隊の部隊等が協力支援活動等を実施している場所若しくはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合若しくは付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合又は当該部隊等の安全を確保するため必要と認める場合には、当該部隊等の長又はその指定する者は、当該協力支援活動等の実施を一時休止し又は避難するなどして危険を回避するものとしている。そして、このような判断は、人を殺傷し、又は物を破壊する行為が行われているか否かという明らかな事実により、当該部隊等の長等が客観的に判断することができるものである。
 以上のような仕組みにより、国際平和協力支援活動法案においても、自衛隊の部隊等が安全な場所で活動を行うことについて、従来と変更はなく、御指摘のように「自衛隊員が戦闘行為に巻き込まれるリスクが高まる」とか「後方支援を行う場所が、戦場になる」とは考えていない。

六について

 具体的に実施する協力支援活動の内容については、対象となる事態に応じ、また、諸外国の軍隊等からの要望等を踏まえ、個別具体的に判断する必要があるため、一概にお答えすることは困難である。

九について

 自衛隊が米軍に対して後方支援を行う場合を含め、自衛隊及び米軍は、緊密に協力し、及び調整しつつ、各々の指揮系統を通じて行動することとなる。

十について

 ある事態が、重要影響事態及び国際平和共同対処事態のいずれの要件にも該当することはあり得るが、その場合には、法律の適用については、当該事態が我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるものであり、その観点から優先的に対応する必要があることから、まずは改正法案による改正後の重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成十一年法律第六十号。以下「重要影響事態法」という。)の適用を検討し、重要影響事態法の適用のない場合にのみ、国際平和協力支援活動法案の適用を検討することとなる。

十一及び十二について

 国際平和協力支援活動法案は、国際社会の平和及び安全の確保に資するために、国際平和共同対処事態に際して我が国が諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等の対応措置を実施する場合の一般法であることに鑑み、自衛隊による対応措置の実施について、事前に国会の承認を得ることを要件としている。
 一方、重要影響事態法においては、国会の事前承認を原則としつつ、我が国の平和及び安全の確保のため、緊急に合衆国軍隊等に対する後方支援活動等の対応措置を実施する必要がある場合もあり得ることから、これまでと同様、その例外を認めることとしている。
 また、新三要件に該当する場合においても、国会の事前承認を原則としつつ、我が国を防衛するため、緊急に防衛出動を命ずる必要がある場合もあり得ることから、これまでと同様、その例外を認めることとしている。