質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第一二二号

内閣参質一八九第一二二号
  平成二十七年五月十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出六ヶ所・東海両再処理工場の重大事故防止と核燃料施設の新規制基準適合性審査の強化等に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出六ヶ所・東海両再処理工場の重大事故防止と核燃料施設の新規制基準適合性審査の強化等に関する再質問に対する答弁書

一について

 先の答弁書(平成二十七年三月十日内閣参質一八九第五四号。以下「前回答弁書」という。)一の1についてでお答えしたとおり、再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第二十七号。以下「事業指定基準規則」という。)においては、再処理設備及びその附属施設(以下「再処理施設」という。)は、冷却機能の喪失により高レベル放射性液体廃棄物が沸騰し、大量の放射性物質が空気中に放出する事象等を含めた重大事故の発生及び拡大を防止するために必要な措置を講じたものでなければならないとされている。当該措置とは、重大事故の発生及び拡大を防止するための設備が有効に機能するかを確認することとされており、確認に当たっては、重大事故が単独で、同時に又は連鎖して発生することを想定して評価することとされている。日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)の再処理事業所再処理施設における当該評価については、平成二十六年一月七日付けで、日本原燃から、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十四条の四第一項の規定に基づく再処理事業に係る変更の許可を求める申請(以下「再処理事業変更許可申請」という。)がなされており、原子力規制委員会において、現在、原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)により改正された原子炉等規制法及び原子炉等規制法の規定に基づく原子力規制委員会規則等に定める基準(以下「新規制基準」という。)に係る適合性審査を進めていることから、現時点でお答えすることは困難である。また、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)の核燃料サイクル工学研究所再処理施設(以下「東海再処理施設」という。)における当該評価については、現時点において、原子力機構から再処理事業変更許可申請がなされていないことから、原子力規制委員会では把握していない。
 なお、国際原子力機関や諸外国の規制基準も参考にしながら策定した事業指定基準規則では、放射性物質の放出量を示すこととされているが、重大事故が発生した場合の放射性物質の大気拡散のシミュレーションを実施することとはされていない。
 また、再処理施設に係る原子力災害対策重点区域の範囲の見直しの具体的方法について現在検討中であることから、お尋ねの「拡散シミュレーションがないまま重点区域の範囲の見直しができるものか」について、現時点において、お答えすることは困難である。

二について

 原子力機構によれば、東海再処理施設の敷地外への放射性物質や放射線の著しい放出を伴う事故への対策として、電源の多重化に加え、お尋ねの「冷却系等」が機能しない場合には、ポンプ車等から給水することにより高放射性廃液を冷却できるようにする等の対策を講じているとのことである。また、お尋ねの「必要な措置」については、新規制基準に定められている重大事故の発生及び拡大を防止するための措置等を想定している。
 お尋ねの「深層防護(最後の手段)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、原子力規制委員会は、外部有識者も参加する「核燃料施設等の新規制基準に関する検討チーム」を設置し、再処理施設等に係る新たな規制基準の検討を行い、平成二十五年十二月に、新規制基準を策定しており、新規制基準には、重大事故の発生及び拡大を防止するために必要な措置や津波対策も含まれている。なお、一についてで述べたとおり、事業指定基準規則を含む新規制基準において、重大事故が発生した場合の放射性物質の大気拡散のシミュレーションを実施することとはされていない。
 原子力規制委員会においては、事業者から再処理事業変更許可申請がなされた場合には、新規制基準に係る適合性審査を行ってまいりたい。

三について

 お尋ねの「深層防護(最後の手段)」の意味するところが必ずしも明らかではないが、事業指定基準規則においては、重大事故が発生した場合における再処理施設を設置する工場又は事業所外への放射性物質及び放射線の放出を抑制するために必要な設備として、例えば、再処理施設の各建物に放水できる設備の配備等を想定しているが、当該設備に限定されるものではなく、事業指定基準規則に照らして十分な保安水準の確保が達成できる技術的根拠があれば、事業指定基準規則に適合するものと判断することとしている。
 また、事業指定基準規則においては、重大事故の発生及び拡大を防止するための設備が有効に機能するかを確認するに当たっては、重大事故が単独で、同時に又は連鎖して発生することを想定して評価することとしている。

四について

 原子力規制委員会のホームページのトップページでは、同委員会の組織理念を踏まえた原子力規制委員会委員長の発言、委員の活動など同委員会の主要な活動を紹介することを通じて、同委員会の果たす役割について国民に伝えていく考えである。なお、ホームページの構成や内容については、情報の見やすさや分かりやすさ等の観点から、継続的に見直しを行うこととしている。

五について

 東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の事故のような事故を二度と繰り返さないという覚悟の下、前回答弁書二の4についてでお答えしたとおり、原子力規制委員会において、最新の科学的知見や国際原子力機関等の規制基準を参考にしつつ再処理施設の規制に必要な基準を設定し、再処理施設がその基準に適合しているか否かを確認している。
 また、万が一事故が起きた場合、原子力災害の拡大の防止等に必要な措置の実施や原子力損害の賠償等について、その一義的な責任は、現行法令上事業者が負うこととなる。さらに、政府としても、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)等の関係法令に基づき、緊急事態応急対策等の実施のために必要な措置を講ずる等の責務を有するものと認識している。