質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一二号

内閣参質一八九第一一二号
  平成二十七年四月二十四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員櫻井充君提出社会福祉法人における内部留保及び介護保険制度に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出社会福祉法人における内部留保及び介護保険制度に関する再質問に対する答弁書

一について

 財政制度等審議会財政制度分科会が平成二十六年五月三十日に取りまとめた「財政健全化に向けた基本的考え方」においては、お尋ねの社会福祉法人の「内部留保」について、一般的な意味での利益剰余金であるとの認識に基づき、社会福祉法人の内部留保を活用し、介護職員の処遇改善を図っていくべきではないかとの当時の財政制度等審議会財政制度分科会としての考え方が示されていると承知している。また、政府としては、このような認識の下で考え方が示されていることから、特定の論点に異論を唱えなかったことのみをもって、委員は介護の現場をはっきり理解していないとまではいえないと考えている。

二から四まで及び六ついて

 平成二十七年度の介護報酬改定は、社会福祉法人の「内部留保」の状況を直接考慮したものではなく、事業者の収支差等を勘案して、適正化を行ったものであり、「内部留保はあるということを前提に介護報酬の引下げを行うのは適切ではない」との御指摘は当たらないものと考えている。
 また、各事業所における賃金水準は個々の労使交渉等で決められるべきものであり、「介護報酬を国が決めておきながら、賃金については各事業者に任せるとするのは責任転嫁である」との御指摘は当たらないものと考えている。
 平成二十七年度の介護報酬改定においては、改定後においても全体としては事業者の安定的な経営に必要な収支差が残るように各サービスの報酬を設定しつつ、介護職員の賃金を一人当たり月額一万二千円相当引き上げるため、介護職員の処遇改善加算(以下「処遇改善加算」という。)の充実を図っている。事業者に対して、介護職員の賃金の改善に要する費用の見込額が処遇改善加算の算定見込額を上回る賃金改善に関する計画を策定し、都道府県知事等に届け出るとともに、事業年度ごとに処遇改善に関する実績を都道府県知事等に報告することを求めているため、処遇改善加算は処遇改善に着実に結びつくものと考えている。

五について

 お尋ねの割合、箇所数については、平成二十六年度のものは把握していないが、平成二十五年度のものについては、厚生労働省が実施した介護従事者処遇状況等調査によると、平成二十五年十月一日時点において、調査対象となった訪問介護、通所介護及び認知症対応型共同生活介護の事業所並びに介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び介護療養型医療施設のうち、処遇改善加算を取得するための届出をしていたものの割合は、八十七・二パーセントである。

七について

 今回の介護報酬改定においては、事業者の収支差等を勘案して適正化を行うとともに、介護職員の処遇改善や中重度の要介護者及び認知症高齢者への対応の更なる強化を図るための加算等を設けており、改定後においても全体としては事業者の安定的な経営が可能であると考えているが、事業者の経営状況は様々であるため、お尋ねの「事業者の安定的な経営に必要な収支差」の定義及び具体的な数値について、一概にお答えすることは困難である。

八について

 お尋ねの「子どもを国公立大学又は私立大学に進学させる場合、家庭はいくら負担しなければならないのか」については、独立行政法人日本学生支援機構が実施した平成二十四年度学生生活調査によれば、子どもを大学に進学させる場合の平均的な家庭の負担は、一年間で、国立大学の場合九十九万六千二百円、公立大学の場合八十三万八千円、私立大学の場合百二十八万八千四百円である。
 また、お尋ねの「介護職員の未婚率」については、平成二十四年就業構造基本調査によれば、同年十月一日時点における介護サービス職業従事者の総数に占める未婚であるものの数の割合は約二十八・二パーセントであるが、お尋ねの「平均の子どもの人数」及び「子どもの大学進学率」については把握していない。
 さらに、お尋ねの「現在の介護職員の一般的な給与水準で、子どもを大学に進学させることができるのか」については、世帯が有する資産等の状況によっても異なってくるものであることから、一概にお答えすることは困難である。
 また、お尋ねの「現在の介護労働者の平均賃金で安心して子育てをできるのかどうか」については、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。