質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第二三号

内閣参質一八九第二三号
  平成二十七年二月二十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員江口克彦君提出ふるさと納税に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員江口克彦君提出ふるさと納税に関する質問に対する答弁書

一について

 個人が都道府県、市町村又は特別区(以下「地方団体」という。)に対し寄附を行った場合に、当該寄附に係る寄附金について個人住民税の寄附金税額控除を適用する制度(以下「ふるさと納税制度」という。)は、ふるさとに対する納税者の思いを寄附税制上配慮する観点から創設されたものである。

二について

 平成二十一年度以降の各年度分の個人住民税について、ふるさと納税制度の適用を受けた寄附金の合計額は、次のとおりである。
 平成二十一年度 約七十二億五千九百万円
 平成二十二年度 約六十五億五千三百万円
 平成二十三年度 約六十七億八百万円
 平成二十四年度 約六百四十九億千四百万円
 平成二十五年度 約百三十億千百万円
 これらのうち平成二十四年度以後の年度分については東日本大震災に関連する寄附金が含まれていると考えられるため、お尋ねの「傾向」について断定的にお答えすることは困難であるが、おおむね増加傾向にあるものと考えている。

三及び六について

 総務省が地方団体を対象に平成二十五年度に実施したふるさと納税制度に関する調査において、返礼品の送付については、「自治体のPR、地域経済への波及効果が期待できる」等の理由により「積極的に実施すべき」との回答や、「特に問題はない」との回答がある一方で、「問題はあるが、各地方団体の良識に任せるべき」との回答もあったこと等を踏まえ、同省としては、返礼品の送付については良識をもって対応するよう地方団体に要請してきたところである。
 また、返礼品としての特産品送付が地場産業の育成やふるさとの宣伝に効果があると考えられる一方で、最近になって、一部に返礼品の送付が過熱しているとの意見もあることから、まず地方団体間で議論をしていただくよう要請したところ、地方六団体からは、ふるさと納税制度の拡充についての要望と併せて「寄附に対する謝礼としての特典の提供については、節度ある運用がなされることが求められる」との認識が示されたところである。
 これらを踏まえ、「平成二十七年度税制改正の大綱」(平成二十七年一月十四日閣議決定)に基づき、同省としては、地方団体に対し、ふるさと納税制度に係る寄附金が経済的利益の無償の供与であること及びふるさと納税制度は当該寄附金に通常の寄附金控除に加えて特例控除が適用される制度であることを踏まえ、豊かな地域社会の形成及び住民の福祉の増進に寄与するため、返礼品の送付が寄附に対する対価の提供であるとの誤解を招きかねないような表示により寄附の募集をする行為や、換金性の高いもの、高額なものなどを返礼品として送付する行為を自粛するなど、ふるさと納税制度に係る周知、募集等の事務を適切に行うことを要請することとしている。当該要請を踏まえた対応については、地方団体において、個別具体的な事情を踏まえ適切に判断されるべきものと考えている。なお、当該要請は、平成二十七年二月十七日に閣議決定し、今国会に提出した地方税法等の一部を改正する法律案が成立した後に、総務大臣通知により行うことを予定しているが、各地方団体における新年度へ向けた対応等が可能となるよう、事前にその内容を各地方団体に連絡しているところである。

四及び五について

 ふるさと納税制度が適用される事例における納税者の出身地等は個人情報に関わるものであり、地方団体においても把握は難しいと考えられることから、お尋ねの「出身地以外の地方公共団体に対して寄附を行う事例」に関する実態の調査は行っていない。また、納税者が寄附を行う目的についても把握は困難であるほか、その目的も様々であると考えられるため、お尋ねのふるさと納税制度の趣旨との関係について一概にお答えすることは困難である。

七について

 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第百九十九条の二第一項において、公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下「公職の候補者等」という。)は、当該選挙区(選挙区がないときは選挙の行われる区域)内にある者に対し、同項ただし書に規定する場合を除き、いかなる名義をもってするを問わず、寄附をしてはならないこととされており、同項の規定により禁止される寄附の相手方には、地方団体も含まれる。
 参議院(比例代表選出)議員の選挙には選挙区がないため、当該選挙の公職の候補者等は、全国の地方団体に対し寄附を行うことが禁止される。
 他方、衆議院議員の選挙又は参議院(選挙区選出)議員の選挙の公職の候補者等が当該選挙区の区域外の地方団体に対し寄附を行うことは禁止されない。

八について

 お尋ねについては、いわゆる金のかかる選挙を是正するという公職選挙法第百九十九条の二の規定の趣旨との関係をはじめ、例外の対象とする寄附の範囲、その金額など様々な論点が考えられることから、各党各会派において十分に御議論いただくべき問題であると考えている。