質問主意書

第189回国会(常会)

答弁書


答弁書第一九号

内閣参質一八九第一九号
  平成二十七年二月十三日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員大久保勉君提出日本銀行の量的・質的緩和が地域金融機関へもたらす影響に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大久保勉君提出日本銀行の量的・質的緩和が地域金融機関へもたらす影響に関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十四年三月期、平成二十五年三月期及び平成二十六年三月期において、総資金利ざやがマイナスとなっている地方銀行、第二地方銀行、信用金庫及び信用組合(以下「地域金融機関」という。)の数は次のとおりである。なお、本年三月期の総資金利ざやについては各地域金融機関における今後の貸出し、有価証券の運用状況、調達金利を含めた経費の動向等により変動するため、本年三月期の総資金利ざやがマイナスとなる地域金融機関の数の見込みについてお答えすることは困難である。
 平成二十四年三月期
 地方銀行 二行
 第二地方銀行 一行
 信用金庫 十七金庫
 信用組合 十二組合
 平成二十五年三月期
 地方銀行 六行
 第二地方銀行 一行
 信用金庫 十三金庫
 信用組合 十四組合
 平成二十六年三月期
 地方銀行 四行
 第二地方銀行 なし
 信用金庫 十二金庫
 信用組合 十七組合

二について

 お尋ねの中期及び長期の国債の金利が低い状況が長期間継続した場合の総資金利ざやに与える影響については、地域金融機関の貸出しや調達の条件、有価証券の運用状況等により異なることから、一概に申し上げることは困難であるが、一般論として、地域金融機関が保有する国債の債券利息収入が減少することは、地域金融機関の総資金利ざやを縮小させる一つの要因になると考えられる。

三について

 住宅ローンの貸出金利は、各金融機関が、市場の動向等を踏まえ、経営判断により決定するものであり、その水準について一概に申し上げることは困難であるが、一般論として、近年の金利水準の低下や金融機関間の貸出競争等により、住宅ローンの貸出金利は低下してきており、これが金融機関の総資金利ざやの低下要因の一つとなっているものと考えられる。

四について

 例えば、地域金融機関の自己資本比率は、過去数年間、全体としておおむね同水準を維持しているほか、地方銀行及び第二地方銀行の中小企業向け貸出残高は平成二十五年五月以降前年同月比プラスで推移しており、現時点において、地域金融機関の財務内容が悪化し、「リスクテイク機能が低下している」との御指摘は当たらないものと考えている。

五について

 総資金利ざやの改善と地域金融機関の存続可能性については、昨年九月に金融庁が策定・公表した「平成二十六事務年度金融モニタリング基本方針」にもあるとおり、政府は、地域金融機関に対し、取引先企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価した上で、それを踏まえた解決策を検討・提案し、必要な支援等を行うことを促している。こうした取組により、取引先企業の生産性向上や経営改善をもたらすことが、地域金融機関自らの安定的な収益の確保及び健全性の維持・向上につながり、地域金融機関のビジネスモデルの持続可能性を高めることになるものと考えている。
 なお、預金金利及び貸出金利については、各地域金融機関が、市場の動向等を踏まえ、経営判断により決定すべきものであることから、一律に、マイナスの預金金利の導入や住宅ローン金利に適正マージン付与を義務付けることは適当ではないと考える。また、地域金融機関の経営統合や再編は、あくまでも各地域金融機関の自主的な経営判断に基づき決定されるべきものと認識している。いずれにせよ、経営環境が変化する中で、地域金融機関自身が、将来にわたって金融仲介機能を円滑に発揮していくための経営戦略を真剣に検討することが重要であると考えている。

六について

 お尋ねについては、仮定の御質問であること、また、日本銀行の金融政策運営に関するものであり、日本銀行の自主性を尊重する観点から、お答えすることは差し控えたい。
 なお、「日本銀行の金融機関への考査権限付与の目的との関係を踏まえ」とのお尋ねであるが、日本銀行は、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第二条に規定されている「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ことを理念として、金融政策を行う必要があると考えている。