質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三一八号

「国際平和支援活動」における自衛隊員の安全確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月二十四日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   「国際平和支援活動」における自衛隊員の安全確保に関する質問主意書

 平成二十七年九月十九日、国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(以下「当該法律」という。)が参議院本会議で可決成立した。これは、国際平和共同対処事態と内閣が認めた場合において、自衛隊の海外における協力支援活動及び捜索救助活動といった対応措置を「国際平和支援活動」として、その都度、特別措置法を立法することなく実施可能とするものであり、これまで我が国の自衛隊が行ってきた人道支援活動とは、その活動の意義や様態、方法、手段そしてその実施に向けての手続等を根底から変革するものであるため、多角的見地の下、あらゆる起こり得る事態を想定して、慎重かつ十分な議論が持たれるべきであったことは言うまでもない。加えて、実施可能とされる活動内容の拡大とそれに伴う自衛隊員に及ぶ生命、身体、精神への危険の拡大について、また、万が一にも自衛隊員の生命、身体、精神に被害が生じた場合の責任の所在についても、極めて慎重かつ十分に議論すべきであり、国民の生命に直結する当該法律を拙速な判断で決してしまうことは許されなかった。
 以上を踏まえて、当該法律によって想定されている「国際平和支援活動」における自衛隊員の安全確保に関して、安倍内閣の見解を確認すべく以下質問する。

一 安倍内閣が当該法律及び我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律の第百八十九回国会会期中の成立を急いだ理由について、具体的かつ明確に示されたい。加えて、同会期中にこれらの法律が成立しなかった場合、我が国に如何なる不利益がもたらされると考えていたのか、具体的事例を挙げて明確に示されたい。

二 当該法律第二条第三項には「協力支援活動及び捜索救助活動は、現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われている現場では実施しないものとする。」と規定している。いわゆるイラク戦争の際にサマーワの陸上自衛隊宿営地に向けて何者かが迫撃砲あるいはロケット弾を発射した行為(以下「当該行為」という。)は、この「戦闘行為」に該当するか、安倍内閣の現在の認識を明確に示されたい。加えて、当該行為が前記の「戦闘行為」に該当するのであれば、当時のサマーワの陸上自衛隊宿営地は「現に戦闘行為が行われている現場」に該当することになるが、その理解で相違ないか、安倍内閣の現在の認識を明確に示されたい。

三 前記二に関して、協力支援活動の実施について当該法律第七条第五項には「協力支援活動を実施している場所若しくはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合若しくは付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合又は当該部隊等の安全を確保するために必要と認める場合には、当該協力支援活動の実施を一時休止し又は避難するなどして危険を回避しつつ」とあるが、当時のサマーワの陸上自衛隊宿営地の直面した事態は、この条文に規定する「活動の実施を一時休止し又は避難するなどして危険を回避」すべき事態に該当するか、安倍政権の現在の認識を明確に示されたい。

四 前記二に関して、同第二条第三項には「ただし、第八条第六項の規定により行われる捜索救助活動については、この限りでない。」との但書きが規定されている。この第八条第六項においては「既に遭難者が発見され、自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときは、当該部隊等の安全が確保される限り、当該遭難者に係る捜索救助活動を継続することができる。」とあり、「現に戦闘行為が行われている現場」であっても活動の継続が許される場合を規定している。衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会等において、安倍首相始め担当閣僚らは「現に戦闘行為が行われている現場では活動は行わない」と繰り返し答弁しているが、このような例外規定を当該法律において定めている事実等、当該法律の内容について、国民に詳らかかつ明確にすべきと考えるが、政府の見解如何。

五 当該法律第五条には国会への報告について規定されているが、ここには、遅滞なく、国会に報告すべきこととして、同条第一号に「基本計画の決定又は変更があったときは、その内容」と規定しているが、続く第六条の手続を経て国会の承認を得た基本計画は、その全部あるいは一部の変更がなされた場合、いずれの場合であっても国会の再承認は不要、すなわち一度国会承認が得られた基本計画であれば、その基本計画を自衛隊派遣後にいかに変更しようとも、改めて国会承認を得ることなく対応措置等の実施が可能となるとの理解でよいか、政府の認識を明確に示されたい。

六 いわゆるイラク戦争、アフガニスタン戦争におけるアメリカ合衆国軍隊の死傷者に関して、前線の直接戦闘行為による死傷者と、兵站に代表されるいわゆる後方支援活動中の死傷者について、政府の把握している人数を各々具体的数値にて示されたい。

七 いわゆるイラク戦争、アフガニスタン戦争におけるアメリカ合衆国兵士の死傷者については、道路脇に仕掛けられた即席爆発装置(IED)等の爆発装置による攻撃が、兵站あるいは補給路に多大なる影響を与えたとの報告があるが、安倍内閣として、兵站あるいは補給路に対するこれらの爆発装置等による攻撃及びその危険性に関する認識を明らかに示されたい。

八 当該法律において規定される国際平和共同対処事態(以下「当該事態」という。)が生じ、内閣がこれを認め、当該事態に対する対応措置を行うことを決定し基本計画が立案された上で、国会の事前承認を得、自衛隊が当該対応措置を実施すべく海外派遣され活動している最中に、当該事態が存立危機事態と認定される事態に変化した場合について

1 活動の継続に当たって、国会の事前承認を得た基本計画を変更する必要が生じた場合、その新たな基本計画案については実施前に国会承認を得ることが不要な場合はあり得るか、明確に示されたい。
2 我が国と活動を共にしている我が国と密接な関係にある他国軍に相手国から武力攻撃がなされた場合かつ他に適当な手段が無く、必要最小限の範囲で行われる我が国による武力行使については、事前の国会承認を得ることなく行うことは可能となるか、明確に示されたい。

  右質問する。