質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三〇二号

我が国に対し国際法上違法な武力攻撃をしているA国に後方支援しているB国の補給艦に対する自衛権の行使に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月十七日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   我が国に対し国際法上違法な武力攻撃をしているA国に後方支援しているB国の補給艦に対する自衛権の行使に関する質問主意書

 平成十一年四月二十日の衆議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員会において高村外務大臣(当時)は、A国に対してB国が後方支援している場合、我が国の自衛権をB国の後方支援に行使できるかとの質疑に対し、「A国に対するB国の後方支援と我が国の自衛権行使について一般論としてお答えをいたしますと、第三国であるB国がその国の行為として、我が国に対して武力攻撃を行っているA国を支援する活動を行っている場合について、B国のそのような行為が我が国に対する急迫不正の侵害を構成すると認められるときは、我が国は、これを排除するために他の適当な手段がなく、必要最小限度の実力の行使と判断される限りにおいて自衛権の行使が可能である、こういうことでございます。」と答弁している。
 一方、中谷防衛大臣は、平成二十七年八月五日の参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会(以下「参議院平和安全法制特別委員会」という。)の質疑において、「支援活動というのはそのような戦闘行為に当たるものではなくて、後方支援と言われるものは、支援活動それ自体は武力の行使に当たるものではないということで、そのような支援活動を行う者に対して武力行使を行うということは国際法的には違法な武力行使であって、正当化をされないということでございます。」と、自衛隊は我が国を攻撃している国の軍隊へ後方支援している国を攻撃できないと答弁した。また、日本が攻撃される際、いわゆる後方支援を行う国のヘリ空母があった場合、それが魚雷の射程圏内であっても自衛隊の潜水艦は攻撃できないとも答弁した。この答弁は、自衛隊が海外で外国軍隊に対する弾薬の提供や出撃する航空機への給油などを行う後方支援を正当化するためのもので、海外での外国軍隊に対する弾薬の提供や武器の輸送など、攻撃される国から見れば明らかに「武力行使と一体化」したものを、あくまでも武力行使と一体化していないと言い張るためのものと言わざるをえない。自衛隊が海外で攻撃されないと説明するために、我が国が侵略された場合も「相手国の後方支援には攻撃できない」としたものである。我が国が攻撃された場合に、攻撃側の後方支援を自衛隊は攻撃しないことを国会で言明すると「B国が、A国に日本を攻撃させ、B国はその後方で全く攻撃される心配なく武器や弾薬を運ぶ」という可能性が出てくるのではないか。これは我が国の安全を著しく損なうものである。
 よって、以下質問する。

一 国際法上、「武力行使」については、国連憲章第二条のみに規定されていると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 我が国に対し国際法上違法な武力攻撃をしているA国に後方支援しているB国の補給艦に対する自衛権の行使に関して、中谷防衛大臣は「国際法的には違法な武力行使であって正当化をされないということでございます。」としているが、どの国際法に基づき答弁しているかを明確にされたい。また、国際法上、つまり国連憲章上、「後方支援への武力行使が正当化されない」のではなく、そもそも紛争を行っている国や組織の武力行使全て(後方支援への攻撃を含む)が正当化されていないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 平成二十七年九月十一日の参議院平和安全法制特別委員会における福山委員への答弁で、中谷防衛大臣は、「B国のそのような行為が我が国に対する急迫不正の侵害を構成すると認められるときは」B国に武力行使ができると答弁したが、B国から後方支援を受けたA国から我が国に対して武力行使が行われることは「B国のそのような行為が我が国に対する急迫不正の侵害を構成すると認められるとき」であるため、A国から我が国が攻撃をされた場合には、急迫不正の侵害として、後方支援を行うB国を攻撃できるのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。