質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二九六号

PKO法改正と国外犯処罰規定等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年九月十六日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   PKO法改正と国外犯処罰規定等に関する質問主意書

 「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」による国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(以下「PKO法」という。)の改正では、国連PKO活動等に参加している自衛隊の部隊等が、防護を必要とする住民等の生命、身体及び財産に対する危害の防止及び抑止等を行ういわゆる安全確保業務や、近隣に所在する活動関係者から緊急の要請を受けた場合に、当該活動関係者の生命及び身体を保護するいわゆる駆け付け警護を実施できるようになる。また、両業務に従事する自衛官には、いわゆる自己保存型を超える新たな武器使用権限が付与される。
 以下、これらの改正内容について質問する。

一 国際平和協力業務に安全確保業務を追加する背景について、政府は、「冷戦が終わりまして以降、国際社会による対応が迫られる紛争の多くが国家間の武力紛争から一国内における紛争へと移行をしてまいりました。その結果、国連PKOの活動も多様化をいたしまして、紛争終了後の国づくりの取組への支援、そしてそのための安全な環境の創出、これが重要な役割となってきておるわけでございます。現在展開中の十六の国連PKO活動のうち十一のPKOにおきましても、住民の保護と国連要員の保護、これが任務として明記をされております。」と説明している。
 我が国が現在参加中の国連PKO活動は、南スーダンで展開されているUNMISS一件のみである。現在展開中の十六件の国連PKO活動のうち、自衛隊が安全確保業務や駆け付け警護を実施できないことが理由で、参加を見送っている活動はあるか。仮に、今般の改正法が成立した場合、UNMISS以外の国連PKO活動に自衛隊が参加する可能性はあるか、政府の見解を明らかにされたい。

二 政府は駆け付け警護について、これまでも海外に派遣された自衛隊は平素より国際機関やNGOとの情報交流・連携を図ってきており、自衛隊による緊急時の保護への期待もあると考えていると答弁しているが、国際機関は本当に自衛隊に駆け付け警護を求めているのか。今般の法改正に当たり、世界各地で国際平和協力活動に携わるNGOの意見を、実際にどの程度聴取したのか。
 また、自衛隊が活動関係者から緊急の要請を受けた実例として、政府は、一九九四年、我が国のNGOがザイールのキブンバ難民キャンプでの活動中に難民により車両を強奪され、ルワンダ難民救援隊として現地で活動していた自衛隊に対し緊急の要請をしたケースを挙げている。このケース以外に、自衛隊が活動関係者から緊急の要請を受けた事例はあるのか。法改正により駆け付け警護の実施を可能にすべきほどの事例があったのか。件数と詳細を具体的に示されたい。

三 駆け付け警護で自衛隊が防護する対象である「活動関係者」には、国連PKO活動等に参加している他国軍隊の部隊等も含まれるのか。過去に、自衛隊が他国軍隊の部隊等から緊急の要請を受けたことはあるか。件数と詳細を具体的に示されたい。
 また、他国軍隊の部隊等は我が国の自衛隊とは異なり、活動の実施に当たって、PKO参加五原則や武力の行使との一体化の禁止などの厳しい制約を課されているわけではない。仮に、他国軍隊の部隊等がテロリストに襲撃されて自衛隊に緊急の要請があった場合、その現場においてはPKO参加五原則や受入同意の安定的な維持が保たれていたとしても、当該部隊等を自衛隊が防護したことにより、自衛隊が当該部隊等とテロリストとの対立関係に巻き込まれる、あるいは、自衛隊がテロリストの次なるターゲットと目される危険性は非常に大きいと考えるが、政府の認識を示されたい。

四 今般の法改正では、自衛官が安全確保業務や駆け付け警護に従事する際、現行のいわゆる「自己保存型」だけでなく、これを超えるいわゆる「任務遂行型」の武器使用も可能となる。新たな武器使用権限が付与されることで、国際平和協力業務に従事する自衛官による武器使用の蓋然性は従前よりも高くなるものと思料されるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 自衛官の武器使用権限が拡大する一方で、仮に、自衛官が海外の派遣先で民間人を誤射や誤爆により死亡させてしまった場合、法務大臣の答弁にもあったとおり、業務上過失致死に関する国外犯処罰規定はなく、日本の刑法を適用することはできない。この問題に関して、防衛大臣は「まず、自衛隊がこのような武器使用について極めて厳格な注意義務が求められて、また、各種情報をもとに相手を的確に識別して武器を使用するよう事前に厳しい教育訓練を行っているということ、そして、派遣された隊員も、現地の社会的な、文化的な慣習を尊重して地元の住民と友好な関係をまずつくるようなことの教育訓練を行っている、このようなことから、武器を使用して一般の現地住民に対して危害を加える事態というのは極めて想定しにくいことであるとは考えております。」と答弁している。
 アフガニスタン戦争やイラク戦争などにおいて、自衛隊よりも実戦経験豊富な米軍による誤射や誤爆が多発しているのに、どのような根拠で「極めて想定しにくい」と言えるのか、示されたい。また、このようなケースに対する想定も規定もなしに、自衛隊の海外派遣を行うつもりでいるのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。