質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二一五号

イノベーション創出のための研究開発等環境整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年七月二十七日

石上 俊雄   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   イノベーション創出のための研究開発等環境整備に関する質問主意書

一 新しい産業や市場を創出するための方策や発明の奨励について

1 新しい産業や市場を創出するためには、異分野・異業種間交流等によるアイデアの創発、また「シーズ指向からニーズ指向へ」の発想の転換等の重要性が一般的に指摘されている。しかし、昨今の米国シリコンバレーにおける、間断なく出現するイノベーションやそのあり得ない程のスピードでグローバル企業へと成長していく様を見せつけられると、何とかせねばと思う一方で、我が国産業界には何か重要なものが決定的に欠けているのではないかとも考えさせられてしまうが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 我が国は原子力分野の発明に関しては、原子力基本法第十九条で「政府は、原子力に関する特許出願に係る発明又は特許発明に関し、予算の範囲内において奨励金又は賞金を交付することができる。」と奨励金等の規定を定めているが、これ以外で類似の規定を持つ法律があればその名称、これまでに奨励金等が交付された事例の有無等実績について示されたい。そもそも発明に対して国は、原子力分野に限ることなく、経済成長等に資する極めて画期的なものがあれば、同様の奨励金又は賞金を交付する等、発明やイノベーションに対する評価・価値付けを積極的に行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

二 将来の科学者・技術者の卵、理工学系学生の育成について

1 今の子どもたちにとって、ほとんどの電気製品は、パソコンやスマホに限らず、既に存在し利用するだけのものであり、基本原理や内部機構がどうなっているのか、どこでどのように製造されているのかを知る機会は少なく、ましてやそれら知識を基に独自のアイデアを着想・展開したいと思うことは極めて稀である。こうした状況を打破するには、学校や地域、企業、行政等が連携して、将来の科学者・技術者の卵、理工学系学生を育成する社会的なシステムを創設するのも有効と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 生産年齢人口の減少が進むにつれて生産現場ではこれまで以上に自動化が求められるが、現在残っている人手を要する作業は、長年の経験や勘に基づく暗黙知、いわば「匠の技」となっているものが多く、自動化が意外と難しい。そこでこうした「匠の技」の可視化・自動化に挑戦していく人材、また、更に磨きを掛けて付加価値の創造を担う人材を育成できる環境を、工業高等学校や工業高等専門学校等に整えていくべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

三 企業における技術系人材の育成について

1 企業が外国からインターンシップを受け入れる際に、短期滞在ビザの申請手続が国ごとに異なるため、企業側の行う受入作業や受入時期が統一化しづらく問題が生じている。ビザが必要な場合の手続方法の統一化を各国と進めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 インターンシップの受入れで帯同者がいる場合、本人と帯同者の同時申請ならば処理日数が数週間程度だが、同時でないと手続内容は同じであるにもかかわらず数か月要する場合も少なくない。子どもの学校入学等で日程調整に支障を来すケースもあり、就労系在留資格と家族滞在の申請が同時申請でない場合においても手続処理期間の短縮化を図るべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

四 研究開発や償却資産に関する税制について

1 研究開発及び設備投資を促進する税制は、法人減税の代替財源としないだけでなく一層充実させることによって企業の稼ぐ力・イノベーション力を強化し、その結果、国内雇用の安定化を図っていくべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 償却資産税制については、国際的に極めて異例な課税であり、グローバル競争における国内外条件のイコールフッティング確保、設備型産業への偏重という税の不公平性、また、モノづくり産業の国内立地維持や生産設備の新陳代謝の観点からも廃止の検討を始めるべきと考える。そもそも償却資産は取得時には消費税、償却に伴う収益には法人税が課税されており多重課税とも言える。また、実態として償却資産税は社会保障の割合が高い地方自治体の行政サービスの財源となっていることから、償却資産保有に関連した応益の対価としての意味合いも薄い。以上を総合的に考えると、地方税体系の抜本的見直しにおいて償却資産に対する固定資産税を廃止するのが適当と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

  右質問する。