質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇九号

二〇三〇年度の電力の需給構造における原発依存度に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年七月十七日

吉田 忠智   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   二〇三〇年度の電力の需給構造における原発依存度に関する質問主意書

 東京電力株式会社(以下「東電」という。)福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の過酷事故がいまだ収束しない中、原子力発電所(以下「原発」という。)を減らすべき又はなくすべきという回答が世論調査で多数を占めている。去る二〇一五年六月二日、資源エネルギー庁により「長期エネルギー需給見通し(案)」が示され、この中で二〇三〇年度の電力の需給構造における原発依存度は二十%から二十二%程度であるとされたところである。これは、多数の国民の原発を減らしたい又はなくしたいという願いに逆行し、さらには「原発依存度については、(中略)可能な限り低減させる」(「エネルギー基本計画」二〇一四年四月十一日閣議決定)とする政府の方針とも反するものではないか。以下、質問する。

一 1 二〇一〇年度に二十八・六%であった原発依存度は、二〇三〇年に二千百六十八億から二千三百十七億キロワットアワー程度(二十から二十二%)(「長期エネルギー需給見通し関連資料」平成二十七年六月、資源エネルギー庁)とされるところ、二十から二十二%程度というのは、願望ベースのおおまかな数値ではないかと批判されているが、数値に根拠はあるのか。
2 前記一の1の数値に仮に根拠があるならば、二十から二十二%程度とは、どのように導かれたものか、数値の根拠、積算の経緯を明らかにされたい。

二 1 資源エネルギー庁によれば、我が国の震災前三十年間の原発の設備利用率の平均は、約七十三%であり、過去最高は一九九八年の八十四・二%(「原子力発電における論点」平成二十七年三月、総合資源エネルギー調査会長期エネルギー需給見通し委員会(第5回会合)資料4)とされるが、二〇三〇年度における原発の設備利用率はどの程度と想定しているか、数値とその根拠を明らかにされたい。
2 福島第一原発事故以前の実績である二〇一〇年度の原発の設備利用率は六十七・三%であり、二〇一〇年度から過去五年間の設備利用率の平均は六十四・七%であることから、保守的に見て六十%程度と想定すべきではないか。

三 1 廃炉済み・廃炉決定したものを除き、建設中のもの(電源開発株式会社大間原発、東電東通原発、中国電力株式会社島根原発三号機)を含めて、現在、我が国に合計で何基の原発が存在しているか、それぞれの炉の名と、設備容量を示されたい。
2 二〇一二年の核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律改正により、原則として運転開始後四十年を経た原発は廃止すること(以下「四十年運転制限制」という。)が規定されたが、仮に延長せず原則どおり四十年運転制限制が適用された場合、現存する原発のうち、二〇三〇年段階の稼働原発は何基か、それぞれの炉の名と、合計の設備容量を示されたい。

四 1 前記三の2において示された二〇三〇年段階の合計設備容量及び前記二の1において示された同年度の想定による設備利用率を前提にすると、二〇三〇年度の発電電力量はどのようになるか示されたい。
2 二〇三〇年度の電力の需給構造における、前記四の1の発電電力量から算出される原発依存度は何%か。
3 「長期エネルギー需給見通し関連資料」では、二〇三〇年の原発の発電電力量は二千百六十八億から二千三百十七億キロワットアワー程度と見込んでいるところ、前記四の1の発電電力量との差はどのようになるか示されたい。その差は、現在、日本最大の設備容量を有する東電柏崎刈羽原発七号機(百三十五・六万キロワット)の、前記二の1において示された同年度の想定による設備利用率換算で何基分に相当するか併せて示されたい。

五 経済産業省はこの間、原発の新増設、リプレースは想定していない旨の答弁を繰り返しているが、これは現内閣のみの方針か、政府として今後も堅持していくのか、明らかにされたい。

六 四十年運転制限制は今後とも堅持していく方針であると理解してよいか。

七 原子力発電支援策である「差額決済契約(Contract for difference)」制度について、経済産業大臣は「少なくとも私が経済産業省の責任者である間に、そういうものの検討を指示するとかいうことは一切行うつもりはございません」と明言しているが、政府として今後とも検討しないということか、明らかにされたい。

八 前記四の1において示されたとおり、想定される設備利用率、稼働原発設備容量を前提とする発電電力量で二〇三〇年度の電力の需給構造における原発依存度を二十%から二十二%程度とするのは現時点で既に非常に困難であると思われるが、二十%から二十二%程度の原発依存度を達成するため、設備利用率の抜本的引上げ、四十年運転制限制のもと延長申請の多用、新増設・リプレースの奨励、あるいは二十%から二十二%程度との原発依存度自体の抜本的見直しなど、政府としてどのような対応を採るのか、具体的に明らかにされたい。

九 仮に「国連気候変動枠組条約第二十一回締約国会議」(COP21パリ会議)に向けた二〇二〇年以降の日本の約束(国別目標)が確定した場合、その一部を構成する「長期エネルギー需給見通し」についても、「国際公約である」として、政府が内容の見直しを回避することがあってはならないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。