質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇四号

産業活性化のための国家デジタル戦略に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年七月十三日

石上 俊雄   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   産業活性化のための国家デジタル戦略に関する質問主意書

 今をさかのぼること五十年前の一九六五年、米国インテル社の創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が「集積回路上のトランジスタ数は十八か月で倍になる」との経験則を提唱して以来、この「ムーアの法則」は半導体産業における技術性能の指数関数的向上の傾向を現在に至るまで極めて正確に捉えている。まさしくコンピュータの処理能力は爆発的に増大し、各種デバイスは劇的に低廉化し、インターネットやモバイル等ICTの利活用は世界中に拡散し、最近では二〇四五年頃にコンピュータが人類の知性を超える技術的特異点すなわちシンギュラリティを迎えるとの予想までなされている。
 これら技術革新の底流をなしているのはデジタル化の深化・進展であり、このデジタル化に基づいた社会の将来像を欠いたままでは、国家として産業の活性化や社会的課題の解決は到底おぼつかない。その実践例として、ドイツの「インダストリー4・0」や米国GE社の「インダストリアル・インターネット」等があり、我が国も国家デジタル戦略を早急に策定して、モノづくり・コトづくりにおける国際競争力の抜本的強化や新ビジネス創出のブレイクスルー・イノベーションに国として本気で取り組む必要があると考える。
 そこで、以下質問する。

一 モノづくり・コトづくり等の産業活性化について

1 世界最先端の製造現場やシェアリング・エコノミー等の新サービスの最前線では、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ解析、クラウドコンピューティング、人工知能、仮想現実、拡張現実、ウェアラブル、3Dプリンティング等を利活用したデジタル化・ネットワーク化の融合が加速化されている。我が国も新ビジネス創出や国際競争力強化等を目指した「国家デジタル戦略」の策定が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 次世代の産業基盤を支える計算機開発について、創薬等の医療分野、革新的な設計・シミュレーション等の製造分野、防災減災や気象予測等を含む基礎科学分野等で世界最先端を切り開くためのスーパーコンピュータとそのソフトウェア開発を国家として継続的に行うために宣言的な法整備、いわゆるスパコン法を検討するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
3 ドローン等無線操縦ロボットの各分野への波及により、操縦コマンドの長距離伝送や高画質画像の伝送需要が高まっており、使用周波数の拡大や最大空中線電力の増力、エリア・用途に応じた運用ガイドラインの整備、また既存の法規制との関係整理等が必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

二 自動走行(ドライバーレス・カー)の実現について

1 自動走行の実現について、欧米を中心に開発競争が過熱しており、我が国も二〇二〇年の東京五輪開催までに何らかの成果を国際社会に示すべく国として強力に研究開発を推進するべきである。その際、短期的なアウトカムに専心するあまり我が国独特の制度・環境下での実装にとらわれるのではなく、世界的なニーズや各国主要企業の動向を踏まえた戦略的な技術開発を進めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 自動走行のカギを握るセンサー技術や運転制御ソフトの開発等、メーカー間で共通化できる部分は徹底的に共通化を進め、標準化の主導権を握り、国際競争力を強化するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

三 情報通信や放送の高度化・スマート化について

1 二〇二〇年の東京五輪開催までに、次世代ネットワーク(第五世代移動通信システム(5G)、次世代光ネットワーク)の実用化やその普及を国として強力に推進するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 前記三の1に併せて、二〇二〇年までの8K放送の実現、また欧米で一大潮流となりつつあるテレビのスマート化に国として積極的に取り組むことが必要と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

四 社会的課題(老朽インフラの維持管理、防災減災、ヘルスケア等)の解決について

1 厳しい財政状況下における社会インフラの老朽化について、各種センサーや画像認識技術、またビッグデータの解析による故障予兆監視、超低消費電力通信等の先進技術の利活用による維持管理体制を国が先導して全国レベルで展開するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 防災減災について、データ収集拡充のための各種計測器、先進的レーダーや衛星の増設、またリアルタイム・シミュレーションやSNSにおけるつぶやきの分析等も含めた災害の分析・予測技術の実用化、さらには得られた災害情報の適時伝達・的確な避難誘導のためのJアラートやLアラート、デジタル・サイネージ、無料公衆無線LAN、多言語支援技術等の連携・連動を加速するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
3 健康寿命の延伸や医療介護費の抑制について、リアルタイム生体情報や遺伝子情報、過去の診断結果等を統合した医療ビッグデータの解析を通じて生活習慣病の予防やその早期発見、また個別化医療や先制医療を実現し、社会コストを適正化するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

五 衛星ビジネス・地理空間情報の利活用について

1 宇宙基本計画の着実な実施を通じて、産業界に投資に関する予見可能性を与えつつ、我が国独自の衛星ネットワークの確立を推進するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。
2 衛星による気象情報や地形・位置等の地理空間情報は、新サービス・新産業の創出に寄与する社会インフラであり、民間企業がビジネス展開しやすい環境を国として積極的に整備するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。併せて現在までの取組、その自己評価及び今後の施策の方向性を示されたい。

  右質問する。