質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一八七号

徴兵制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月二十五日

中西 健治   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   徴兵制に関する質問主意書

 政府は、徴兵制について、昭和五十五年八月十五日の政府答弁書(内閣衆質九二第四号。以下「昭和五十五年政府答弁書」という。)一及び二についてにおいて、「一般に、徴兵制度とは、国民をして兵役に服する義務を強制的に負わせる国民皆兵制度であって、軍隊を常設し、これに要する兵員を毎年徴集し、一定期間訓練して、新陳交代させ、戦時編成の要員として備えるものをいうと理解している。このような徴兵制度は、我が憲法の秩序の下では、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らし当然に負担すべきものとして社会的に認められるようなものでないのに、兵役といわれる役務の提供を義務として課されるという点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考える。」として、軍隊であること、兵員を新陳交代させるものであること、兵役という役務の提供の義務付けに本質があることを前提に、徴兵制度は憲法上許容されない旨答弁している。
 しかし、政府は、平成十八年十二月一日の政府答弁書(内閣衆質一六五第一七二号)一及び四についてにおいて、「軍隊については、その定義が一義的に定まっているわけではないと承知しているが、自衛隊は、外国による侵略に対し、我が国を防衛する任務を有するものの、憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものと考えている。」として、自衛隊は軍隊とは異なる旨答弁している。そのため、徴兵制の前提となる「軍隊」と自衛隊の関係が問題となる。
 また、昭和五十五年政府答弁書は、兵員を新陳交代させることを徴兵制度の前提としているため、新陳交代に当たらない一時的臨時的な戦時編成の要員としての徴集と、憲法第十三条、第十八条などの規定との関係が問題となる。
 加えて、緊急時には兵役以外の義務が国民に課されているため、これらの義務と憲法第十三条、第十八条などの規定との関係も問題となる。
 さらに、兵役の義務は、大日本帝国憲法下において臣民の義務(大日本帝国憲法第二十条)として定められていたところ、日本国憲法への改正(大日本帝国憲法第七十三条)の過程で廃止されたものである。そのため、日本国憲法を改正(日本国憲法第九十六条)することで、改めて兵役の義務を設けることも考えられる。
 以下、質問する。

一 自衛隊は、徴兵制の前提となる「軍隊」に当たるか。仮に当たらないとした場合、自衛隊の業務の全部又は一部を国民の義務として課すことは、憲法上許容されるか。その理由とともに明らかにされたい。

二 新陳交代を前提としない一時的臨時的な戦時編成要員の徴集は、徴兵制に当たるか。仮に、当たらないとした場合、一時的臨時的な戦時編成要員の徴集は、憲法第十三条、第十八条などの規定に反しないか。その理由とともに明らかにされたい。

三 自衛隊法第八十九条第一項では、治安出動により出動を命じられた自衛隊の自衛官の職務の執行について警察官職務執行法の規定を準用すると定めていることから、当該自衛官は職務の執行に当たり、その場に居合わせた者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置を取ることを命じることができる(警察官職務執行法第四条第一項)。このような国民の義務を定めることは憲法第十三条、第十八条などの規定に反しないか。その理由とともに明らかにされたい。

四 日本国憲法の改正により兵役の義務を設けることは、憲法上許容されるか。憲法改正の限界を逸脱しないかという点を明らかにされたい。

  右質問する。