質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一六五号

自衛隊法第三条からの「直接侵略及び間接侵略に対し」の削除と専守防衛の関連に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月十五日

藤末 健三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   自衛隊法第三条からの「直接侵略及び間接侵略に対し」の削除と専守防衛の関連に関する質問主意書

 政府は、「専守防衛」について、昭和五十六年三月十九日の参議院予算委員会での大村防衛庁長官の答弁において、「相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その防衛力行使の態様も自衛のための必要最小限度にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限度のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」との見解を示し、それ以降の防衛白書でも、同様の表現により説明を行っている。
 しかしながら、今般、国会に提出された「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」においては、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第三条第一項の「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。」との規定から「直接侵略及び間接侵略に対し」を削除するとしている。この点に関連して以下質問する。

一 「直接侵略」及び「間接侵略」の定義如何。

二 「直接侵略及び間接侵略に対し」を削除する理由如何。過去の国会審議を踏まえた上で、法改正が必要であると判断するに至った経緯も含めて明らかにされたい。

三 「直接侵略及び間接侵略に対し」を削除することにより「専守防衛」を緩和することにならないか。もしならないとしても我が国周辺諸国などに不要な誤解を与えることにならないか。

四 中谷防衛大臣は、平成二十七年五月十二日の参議院外交防衛委員会において、「従来、専守防衛の説明に用いてきた、「相手から武力攻撃を受けたとき」も我が国が武力攻撃を受けたときを指すものと考えてきたところでございます。他方、昨年七月の閣議決定におきまして、憲法九条の解釈の基本的な論理は維持した上で認識が改められて、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合にも、自衛の措置として武力行使が容認されるとされたものであります。これに伴いまして、専守防衛の説明に用いてきた、「相手から武力攻撃を受けたとき」には、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合も含むと解しております」と答弁している。これは昨年七月の閣議決定を受けて、専守防衛の説明に用いてきた「相手から武力攻撃を受けたとき」の考え方を従来と変えたということでよいか。変更があったのかなかったのかを明確に示されたい。

五 前記四に関して、同じ答弁の中で中谷大臣は、「憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう専守防衛の定義には何ら変更はない」と述べているが、我が国に対する「直接侵略」及び「間接侵略」以外の状況において、我が国が武力を行使するのであれば、それはもはや「専守防衛」とは呼べないのではないか。少なくとも専守防衛の考え方を変更したことは認めるべきではないか。また、こうした新たな専守防衛の考え方については、我が国周辺諸国の理解が得られていないのではないか、加えて、今まで専守防衛を旨として任務を遂行してきた多くの自衛官にとっても認められないのではないか。

  右質問する。