質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一六〇号

漢方薬原料生薬の国内自給率と品質管理に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月十日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   漢方薬原料生薬の国内自給率と品質管理に関する質問主意書

 昨今、医療需要の増大とそれに伴う医療費の増加が社会問題となっている中において、病気が顕在化する以前のいわゆる未病と言われる段階からの健康増進への関心の高まりとともに、東洋医学及びその処方に用いられる漢方薬が注目を浴びている。このような漢方薬需要の増加に伴い、原料となる生薬市場も右肩上がりの成長トレンドにある一方で、平成二十五年十月十五日に厚生労働省医政局経済課より発表された「薬用植物の国内生産拡大に向けた厚生労働省の取組」によって、平成二十年当時の原料生薬の調達現況は中華人民共和国(以下「中国」という。)産八十三パーセントに対して国産は十二パーセントと、原料生薬の国内自給率は著しく低く、輸入の大部分を中国に依存している現状が明らかにされた。また、漢方薬需要の増加は原料生薬の価格高騰を招き、さらにその供給が不安定化すれば、漢方生薬製剤の品質低下にもつながることから、原料生薬の国内安定供給を図るためにも、その国内自給率の向上及びより一層厳格な品質管理は、今後我が国において官民一体となって推し進められるべき喫緊の政策課題とも言える。
 以上を踏まえて、漢方薬原料生薬の国内自給率(以下「生薬国内自給率」という。)及びその品質管理に関する政府の見解を確認すべく、以下質問する。

一 医療費の増加が政策課題として議論される場合、湿布薬やいわゆる風邪薬等とともに、漢方薬を健康保険適用外とすべきであるとの議論が度々なされる。しかし、我が国のような他に類を見ない超高齢社会においては、漢方薬を用いた診療を健康保険適用外とすべきどころか、むしろ積極的に健康保険適用対象として活用していくことこそが、その期待される治療効果はもちろんのこと、医療費の適正化さらには国民皆保険制度を持続可能なものとしていくことに資するとともに、非常に重要かつ必要欠くべからざる医療政策であると考える。これらを踏まえて、健康保険診療における漢方薬を用いた治療の意義に関して、その健康保険適用の是非も含めて、政府の現在の認識を示されたい。

二 前記の如く平成二十年当時において原料生薬等は、その約八割を中国からの輸入に依存している状態であったが、現時点における中国からの輸入依存度及び生薬国内自給率について、政府が把握している直近のデータを具体的な数値をもって示されたい。

三 前記二に関して、今後、生薬国内自給率を向上させていく必要性及びその是非について政府の見解を示されたい。加えて、政府として生薬国内自給率の目標値等を設定しているのであれば、具体的な数値をもって示されたい。

四 前記三に関して、生薬国内自給率向上に向けた、政府として取り組んでいる施策あるいは事業等があれば具体的に示されたい。

五 平成二十五年、国際環境団体グリーンピースは、アメリカ合衆国等七か国で行った中国産中医薬原料の残留農薬サンプリング調査の結果を公表した。そのサンプルには各種の農薬が残留しており、世界保健機関(WHO)が劇薬に指定している薬品も検出され、大部分が欧州連合(EU)の基準を上回っていたことが明らかになったという。このように原料生薬等の過度な国外依存は、国内にて流通する漢方生薬製剤の品質担保の観点からも望ましくなく、また原料生薬等の品質管理においては、現在、世界共通の基準が存在しないため、輸入側と輸出側との条件を擦り合わせるのが困難という課題も存在すると言われている。
 現在、原料生薬の品質管理については日本薬局方によって最低限の品質担保がなされているものの、その基準はあくまで最低限の品質担保にとどまるものである。我が国が今後、世界において漢方薬市場を主導的に牽引していくためには、より一層高精度な良否の鑑別基準、等級の識別基準、同等性の確認技術、さらにより一層厳格な異物、残留農薬、放射性物質、重金属、ヒ素等に関する純度試験等について、我が国が主導的立場で安全・安心な生薬であることを証明する基準を確立し、世界に向けて発信、提案していくことが重要と考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。