質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一五八号

集団的自衛権における「必要最小限度の実力行使」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月八日

中西 健治   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   集団的自衛権における「必要最小限度の実力行使」に関する質問主意書

 政府は、平成二十六年七月一日に「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定し、自衛の措置としての武力の行使の新三要件(以下「新三要件」という。)を満たす限りにおいて集団的自衛権の行使は憲法上も許容される、との見解を示している。
 そして、新三要件の第三要件「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」の意義について、安倍内閣総理大臣は、平成二十六年七月十五日の参議院予算委員会において、「この新三要件に言う必要最小限度とは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される原因をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味するわけであります。」と説明している。もっとも、「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」と認められるためには、「我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度」にとどめなければならないのか、それとも、これに加えて「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除」することまで許容されるのかは、不明確な点がある。
 また、「必要最小限度」の意味について、岸田外務大臣は、平成二十七年五月二十七日の衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、「必要最小限度という用語ですが、国際用語で言う必要最小限度、国際法の用語としての必要最小限度、これは均衡性を意味する、委員御指摘のとおりであります。しかし、同時に、我が国においては、この三要件を通じて、我が国に対する武力攻撃、または我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃、これを排除する、こうしたために必要最小限度である、こういった枠を当てはめております。よって、我が国における必要最小限度、国際法の用語で言う均衡性という意味とは一致するものではありません。」という説明がなされており、新三要件における「必要最小限度」と国際法における「必要最小限度」の意味の乖離が問題となる。
 そこで、以下質問する。

一 集団的自衛権の行使が許される「必要最小限度の実力行使」は、「我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度」にとどめなければならないのか。それとも、これに加えて「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除」することまで許容されるのか。また、我が国に対する武力攻撃が発生し、これを排除するために、個別的自衛権を行使する場合の「必要最小限度の実力行使」は、国際法上の均衡性と同一の範囲・内容のものとなるのか。我が国が、集団的自衛権を行使する場合と、個別的自衛権を行使する場合で、新三要件の第三要件にいう「必要最小限度の実力行使」の範囲・内容は異なってくるのか。

二 存立危機事態における自衛の措置としての武力行使が、新三要件における「必要最小限度の実力行使」を上回るために第三要件を満たさないものの、均衡性を満たすために国際法上の「必要最小限度」を満たす場合、かかる自衛の措置としての武力の行使は、国際法上適法か。憲法上の根拠を欠く自衛の措置としての武力行使の国際法上の評価について明らかにされたい。

三 新三要件の第三要件「必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと」について、国内法ではどの法律のどの条文で担保されているのか。当該条文は、新三要件における「必要最小限度」と国際法における「必要最小限度」のどちらを意味するのか、その点が明確に認識できるように規定されているのか。

  右質問する。