質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一五六号

国鉄共済年金に係る附帯決議の履行等に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月八日

吉田 忠智   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   国鉄共済年金に係る附帯決議の履行等に関する再質問主意書

 本年四月二十一日に提出した「国鉄共済年金に係る附帯決議の履行等に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第一一四号。以下「前回質問主意書」という。)に対する同年四月二十八日付けの答弁書(内閣参質一八九第一一四号。以下「答弁書」という。)が送付されてきたが、政府は、前回質問主意書で求めた「削減された十%の給付」及び「職域部分の支給」の回復について、「回復することは困難である」と一刀両断のもとに断じている。
 とりわけ答弁書は、「お尋ねの「国鉄共済年金の財政危機の真の原因」の意味するところが必ずしも明らかでない」とし、曖昧模糊とした対応である。
 そもそも国鉄共済年金が十%の削減及び職域部分の支給停止を受けたのは、国鉄共済年金の財政危機を理由に、他の共済年金の支援を受けることから、自助努力として行われた支給抑制策としてであった。したがって、国鉄共済年金の財政危機の真の原因を明らかにすることが、この問題解決に向けて何よりも肝要である。
 加えて、国鉄共済年金は、その発足時から健全な財政運営を続けてきたにもかかわらず、戦中、戦後の国の政策によって財政が破綻したのであり、本来、国の責任により負担すべき年金財政を年金受給者と労働者が負担し続けてきたものと言える。
 そうした国鉄共済年金を巡る問題について、国会審議を踏まえて附帯決議が採択されているにもかかわらず、答弁書ではその事実を真摯に受け止めることなく、何ら政府の見解を明らかにしていない。
 また、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(以下「被用者年金制度の一元化法」という。)の施行に伴う、追加費用の削減のための年金額削減に当たっては、その減額の根拠となる計算式に対する疑問にも答えていない。
 よって、以下再質問する。

一 答弁書二についてで、二〇一四年三月三十一日時点における受給権が発生した者の件数及び遺族年金等の受給権が発生した者の件数が明らかとなったが、そのうち一九五六年六月三十日以前の在職者数を明らかにされたい。
 また、一九五六年六月三十日以前の在職者で恩給対象者と共済年金対象者数を明らかにされたい。

二 答弁書三についてに関し、第九十八回国会、一九八三年五月十八日の衆議院大蔵委員会で、米沢隆議員が「国鉄共済年金がこのような危機的な状況に陥った理由の中に、(中略)戦後の引き揚げ者や旧軍人等が政府の要請によって国鉄に採用してもらった(中略)戦後処理政策部分というものをお互いに理解し合ったならば、やはり国の責任もある程度あるのではないか」と質問しているのに対し、竹下登大蔵大臣は「当時の国鉄というものは、(中略)非常に健全な経営として、またその役割りを果たしてきた。(中略)同情すべきというか、そういう点はある(中略)当時の果たした役割りは、(中略)私も自覚は十分いたしております」と答弁している。
 国鉄共済年金の財政悪化の原因のうち、こうした国鉄の責めに帰さない部分について、政府の認識を明らかにされたい。

三 答弁書四から六まで及び十についてで、質問事項を一くくりに答弁している理由を明らかにされたい。

四 答弁書四から六まで及び十についてで、「回復することは困難である」としているが、政府としてどのような検討、討議が行われ「困難である」と判断したのか明らかにされたい。

五 答弁書四から六まで及び十についてで、「当分の間、職域加算額に相当する部分を支給しない旨が定められている」としている。「当分の間」とは、一時的な期間を指すと解するが、政府はどの程度の期間であると理解しているのか明らかにされたい。

六 第百三回国会、一九八五年十二月二十日の参議院本会議で可決成立した国家公務員等共済組合法等の一部を改正する法律第一条では、国鉄共済年金の職域部分は、財政調整事業を実施している期間は停止する旨規定している。
 財政調整はすでに終わっており、同法の規定に基づいて、支給停止を解除すべきと考えるが、見解を明らかにされたい。

七 政府は、国会の委員会における附帯決議を尊重することが求められている。私が前回質問主意書の質問十でただした、国家公務員等共済年金組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議における「国鉄の職域年金については、年金財政及び国鉄財政の動向等を見きわめ、設置することを将来検討すること」(一九八五年十二月十九日参議院内閣委員会)の履行について、政府は何ら見解を明らかにしていない。再度、政府の見解を明らかにされたい。

八 答弁書七についてで、一九八四年度から二〇一五年度までの①日本鉄道共済組合、②国家公務員共済組合連合会、③エヌ・ティ・ティ企業年金基金、④厚生年金の本人負担分の保険料率が明らかにされた。厚生年金との統合後も厚生年金保険料率が追いつくまでの間、高い保険料で支払ってきたにもかかわらず、鉄道共済年金の支給額が低く抑えられていることは公正・公平と言えるのか、政府の見解を明らかにされたい。

九 答弁書八についてで、旧国鉄の年金受給者の追加費用は「国家公務員同様に、事業主が負担している」とし、「国家公務員については国等」、「旧国鉄の職員については旧国鉄等の債務を承継した独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」と、事業主がそれぞれ異なっていても、「国家公務員の場合と同様に減額を行う」としている。公共企業体職員等共済組合法(新法)の施行に当たって政府は、恩給期間が共済組合員期間に通算されることによって、年金額が増加する費用を「追加費用」として国庫負担とした一方、国鉄共済年金に対しては追加費用の交付はなかった。国鉄とその職員が追加費用を負担してきたことについて、政府はどのように認識しているのか明らかにされたい。

十 答弁書八についてで言及された被用者年金制度の一元化法の施行に伴う恩給期間に係る年金額の削減による、追加費用削減額の見込みを明らかにされたい。

十一 答弁書九についてで、「昭和三十一年三月以前の旧国共済法が準用されていた期間」とあるのは「昭和三十一年六月以前」の誤りであり訂正すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

十二 答弁書九についてで、二十七%削減の計算式について、何ら答弁がなされていない。
 被用者年金制度の一元化法の「追加費用の減額の考え方」で(8.8-6.4)÷8.8=27%の計算式があるが、官吏とならない雇員、傭人は、共済年金掛金千分の五十を支払っており計算式が成り立たない。しかるに、減額に対応する計算式を明らかにされたい。

十三 答弁書十一についてで、「将来に向けて、(中略)同一の公的年金給付を受けるという公平性を確保する」としているが、被用者年金制度の一元化法において、公務員共済年金の職域部分は、「施行日前に共済年金の受給権を有するものについては、従来通り職域部分を支給する」とされ、職域年金に相当する新しい年金として「年金払い退職給付」の創設も決まっている。少なくとも公平性を確保するとすれば、鉄道共済年金に関し即刻職域部分を回復し、支給すべきである。
 鉄道共済年金は、十%の削減と職域部分の支給停止が回復されなければ、他の年金との格差はそのままとなる。また、国会の附帯決議が尊重されなければ、著しく国会の信頼を失墜させることとなると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。