質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一五〇号

年金積立金を活用した奨学金制度の創設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年六月二日

江口 克彦   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   年金積立金を活用した奨学金制度の創設に関する質問主意書

 生まれ育った環境にかかわらず、全ての子供たちが夢と希望を持って成長していくことのできる社会の実現は、我が国の喫緊の課題の一つであり、政府においても、平成二十六年八月に「子供の貧困対策に関する大綱」が閣議決定されるなど対策が講じられている。しかし、独立行政法人日本学生支援機構による我が国の奨学金制度は、多くの諸外国で既に整備されている給付型奨学金が設けられていない上、貸与型奨学金についても無利子奨学金と比較して有利子奨学金の割合が圧倒的に高いなど、質・量ともに不十分な点が多い。
 一方、グローバル人材の育成も我が国の重要課題の一つであるが、私が提出した「日本人の海外留学促進に関する質問主意書」(第百八十六回国会質問第七〇号)に対する答弁書(内閣参質一八六第七〇号)において政府が明らかにしたとおり、「留学費用等の経済的負担が大きいこと」等の要因により、日本人の海外留学者数は減少傾向にある。昨年度に「官民協働海外留学支援制度」が創設されたが、日本人学生の海外留学を促進するためには、奨学金制度の更なる充実を始め、海外留学に要する経済的負担の軽減に重点的に取り組む必要がある。
 子供の貧困対策及びグローバル人材の育成という重要課題の早期解決のためには、奨学金制度の抜本的な改革が必要不可欠であるが、我が国の厳しい財政状況下において、それを直ちに実現に移すことには困難も伴う。そこで、新たな制度として、約百三十兆円に上る年金積立金の一部を活用した奨学金制度の創設が、これらの課題を解決する上で有力な選択肢になり得ると考える。
 右を踏まえ、以下質問する。

一 平成二十年六月四日に開催された社会保障国民会議第一分科会(所得確保・保障(雇用・年金))(以下「第一分科会」という。)において、宮武剛委員から、「年金積立金を活用する「若者・皆奨学金」創設」について提案がなされ、同制度の創設により、「年金制度が「次代の人材育成」という最大の公共事業に参画する、いわば現代版の「米百俵」になる」等の効果が説明されたが、年金積立金を活用した奨学金制度を創設した場合のメリット及びデメリットについて政府の見解を示されたい。

二 平成二十年六月十九日に公表された第一分科会の「中間とりまとめ」では、「積立金を活用した若者(就労機会や能力開発機会に恵まれなかった者も含む)に対する奨学金制度を創設したりするといったことなども検討に値する」ことが盛り込まれたが、中間とりまとめから現在に至るまでの検討状況を示されたい。また、このような制度を創設する必要性について、現時点における政府の見解を示されたい。

三 諸外国において年金積立金を活用した奨学金制度を導入している事例があれば、その内容を示されたい。

  右質問する。