質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第五五号

再処理工場における高レベル放射性廃液の危険性と六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の審査に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年三月二日

川田 龍平   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   再処理工場における高レベル放射性廃液の危険性と六ヶ所再処理工場のアクティブ試験の審査に関する質問主意書

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」という。)で放出された放射性物質によって福島県を始め広い地域が汚染され、取り返しのつかないことになった。汚染地に住む人々は故郷を追われ、仕事をなくし、一家離散、自死など、まさに塗炭の苦しみを味わっている。
 他方、日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)六ヶ所再処理工場(以下「六ヶ所再処理工場」という。)や独立行政法人日本原子力開発機構(以下「原子力機構」という。)東海再処理施設(以下「東海再処理施設」という。)には原子力発電所をはるかに上回る大量の放射性物質が貯蔵されており、一旦事故が起これば、その影響範囲の広さ、長期にわたる健康被害、未来世代への遺伝的影響などその深刻さにおいて福島第一原発事故の比ではない。そのような観点から、以下質問する。

一 高レベル放射性廃液(原子力機構では「高放射性廃液」と呼称し、日本原燃では「高レベル廃液」と呼称するが、同じ定義である。)について

1 原子力機構は平成二十五年七月一日に原子力規制委員会に対し「「再処理施設に関するこれまでの検討チームにおける議論に対する意見」(東海再処理施設)」を提出している。同意見において原子力機構は「既に多くの高放射性廃液や、Pu溶液を保有しており、再処理運転の実施とは別に、可能な限り早期にこれらの溶液を固化し、安定化を図ることで、施設の潜在的なハザードを低減し施設の安全性を高めることが重要であると認識している」との問題提起をしている。
 その後の原子力機構による東海再処理施設での高レベル放射性廃液の固化・安定化の進捗状況はどうなっているのか。また、固化・安定化を早期に開始し早期に終了させるよう指導強化する予定はないのか、政府の見解を示されたい。
2 六ヶ所再処理工場における高レベル放射性廃液の貯蔵の状況(排液量と含有核種・放射線量、貯槽毎の沸騰到達時間、水素爆発限界到達時間)とその固化計画の現状について示されたい。原子力機構は含有核種としてストロンチウム90、イットリウム90を国に報告しているにもかかわらず、日本原燃がこれを報告していないことは不誠実な対応であり厳重に注意すべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。また、高レベル放射性廃液の危険性に鑑み、日本原燃へ早期に廃液の固化を求める必要性があると思われるが、政府の見解を示されたい。
3 高レベル放射性廃液はこの世の中で最も危険で不安定な液体である。冷却ができなくなり、一旦沸騰が始まれば、硝酸塩や放射線分解水素による爆発を免れなくなる。今後、六ヶ所再処理工場におけるこのような極めて危険な廃液の発生は、ガラス固化可能分だけに止め、常時貯蔵量をゼロにするよう規制するべきではないか、政府の見解を示されたい。

二 六ヶ所再処理工場のアクティブ試験について

 原子力発電所で発生した使用済み核燃料を使用し、ウランとプルトニウムを取り出す試験操業をアクティブ試験と呼称しているが、同試験は二〇〇六年三月三十一日の開始後、四百二十五トンの使用済み核燃料を処理して二〇〇八年度に取り出しを終了していると承知している。
 アクティブ試験の最終段階として、「第五ステップ」と呼ばれる最終試験がある。「工場全体の安全機能及び運転性能の確認」を行うものだが、六ヶ所再処理工場においては第四ステップから持ち越されてきた高レベル放射性廃液のガラス固化設備の不具合が続いてきたにもかかわらず、ガラス固化が二〇一三年五月に終了したとし、二〇一三年七月二十六日に報告書が国へ提出されている。この報告を原子力規制委員会は第五ステップの終了報告とみなしているようだが、この報告書について原子力安全・保安院時代には行われていた審査が原子力規制委員会ではいまだに行なわれていない。技術的に非常に問題があるガラス固化試験結果報告が提出されているのに、それを審査せず、核燃料施設の新規制基準適合性に係る審査だけで済ますようなことはあってはならない。
1 アクティブ試験第五ステップ終了が正式に認められてから、新規制基準の申請をするのが順序に思えるが、日本原燃から第五ステップ終了報告はなされたのか。国は第五ステップ終了報告を原子力規制委員会のどの機関で審査するのか。また、アクティブ試験全体の終了報告書の審査と現在行われている核燃料施設の新規制基準適合性に係る審査との関係はどうなっているのか、示されたい。さらには、審査から本格稼働までの審査計画はどのようになっているのか、審査の流れを明らかにされたい。
2 アクティブ試験においてトラブル続きだったガラス固化溶融炉の試験運転は、二〇一二年六月からそれまでとは異なり極めて順調に進み、二〇一三年に終了したと聞いている。その報告書が国へ提出されているが、同報告書の審査は行われたのか示されたい。ガラス固化における白金族の問題が本当にクリアできたのか疑問がある。厳重な審査を行い、審査機関の議事録を原子力安全・保安院時代同様に公開するべきではないか。
3 現在の溶融炉は天井レンガが剥離するなどかなり傷んでいるものと思われる。新型炉が完成していると聞いているが、この新型炉の使用前検査等はどのように行われるのか。また、その審査機関の名称及び構成メンバーの氏名を示されたい。
4 ガラス固化体の品質基準を示されたい。本年一月三十日に私が行った市民との意見交換会では、「アクティブ試験で発生したガラス固化体三百四十六本のうちガラス固化体の品質基準を満たしていない固化体は存在しない」との政府回答があったが、二〇一一年三月五日の東奥日報には「製造、貯蔵されているガラス固化体百十七本のうち、通常の固化体は五十四本で、残りはガラスの充てん量が少なかったり、洗浄運転などで発生した「逸脱」や「非定常」に該当する固化体である」と報じられていた。これら通常ではない固化体はどのように最終処分されるのか、他の固化体と同様に扱ってもよいのか示されたい。容器は地下埋設し数十万年腐食せずに耐えるものか、その科学的根拠とともに示されたい。

  右質問する。