質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第四九号

軽度外傷性脳損傷(MTBI)患者救済に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年二月二十六日

小池 晃   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   軽度外傷性脳損傷(MTBI)患者救済に関する質問主意書

 画像所見が認められない外傷性脳損傷(以下「TBI」という。)による高次脳機能障害について、二〇〇三年策定の労災認定基準では、障害等級第十四級とされてきた。
 一方、WHOは二〇〇四年、軽度外傷性脳損傷(以下「MTBI」という。)の定義を策定し、その予防を呼びかけている。そして、二〇一三年六月十八日、厚生労働省は「画像所見が認められない高次脳機能障害に係る障害(補償)給付請求事案の報告について」(基労補発〇六一八第一号厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長通知。以下「本件通知」という。)を出した。画像所見が認められないTBIによる高次脳機能障害について、本省協議で丁寧に検討することによって、一律障害等級第十四級とせず、それを超える救済が図られることが期待されている。
 しかるに、本件通知以前に、画像所見が認められないため障害等級第十四級とされたTBIの労災事案について、被災者が審査請求したところ、MTBIでないとしてTBI自体を否定された。それを受け、船橋労働基準監督署はあえてTBIを否定する復命書を作成し、それをもとに労災アフターケアの健康管理手帳も更新できないものに変更された。
 せっかく二〇一三年に、MTBI患者救済の方向が示されたにもかかわらず、それに逆行するゆゆしき事態が見られる。
 右の点を踏まえ、以下政府の見解について質問する。

一 被災者が原処分においてTBIと認定されているのに、労災の障害等級について審査請求したばかりに、原処分をTBI否定の内容に変更するなら、被災者の審査請求への意思を萎縮させるのではないか。また、労働者保護の観点に照らした場合、労災に係る審査請求に対する決定書に即して、原処分を安易に変更することは許されないのではないか。

二 労災認定の基本は診断なので、例えば石綿作業による中皮腫では病気の確定診断、精神障害では国際疾病分類への該当を前提に因果関係が究明されているように、MTBIの本省協議においても、神経診断学によるTBIの診断を確定させたうえで、因果関係を判定すべきではないか。

三 WHOのMTBI定義の第一要件は、受傷時の意識障害など急性症状だが、証拠がほとんどない時間帯のことなので、TBIとの診断を確定させたのちに、その原因を究明するという姿勢で、丁寧に検討すべきではないか。

四 WHOのMTBI定義の第二要件は、初診時などの意識障害だが、MTBIは初診時には意識障害がない場合を含むので、初診時の意識障害がないからといって、MTBIを否定するということがないようにすべきではないか。

  右質問する。