質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第三四号

関東大震災時に起こった朝鮮人等虐殺事件に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年二月十八日

神本 美恵子   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   関東大震災時に起こった朝鮮人等虐殺事件に関する質問主意書

 大正十二年(一九二三年)九月一日に起こった関東大震災時には、朝鮮人や中国人、日本人が虐殺された(以下「朝鮮人等虐殺事件」という。)。それらの虐殺事件については被害者の姓名の多くや被害者数、事件の具体的な様相などについて不明なままである。大正十二年十二月十四日の衆議院本会議では、田淵豊吉議員が、政府が「朝鮮人殺傷問題」に一言も触れないのは問題であり、被害を受けた朝鮮人に謝罪し遺族を救済すべきだと述べて政府の見解を問い、また、朝鮮人と中国人殺傷事件への対応について確認したのに対し、山本権兵衛首相は「熟考ノ上他日御答ヲ致ス」として、事件の事実認定を含めて答弁を避けた。
 翌日の衆議院本会議では永井柳太郎議員が、内務省が海軍東京無線電信所船橋送信所から各地方長官宛に出した電文「鮮人ハ各地ニ放火シ不逞ノ目的ヲ遂行セントス既ニ東京市内ニ於テハ爆弾ヲ所持シ石油ヲ注ギ放火セル者アリ(以下略)」や、内務省から埼玉県庁を通じて県内各町村に伝えた「暴行ヲ為シタル不逞鮮人多数ガ(中略)本県ニ入リ来ルヤモ知レズ、(中略)町村当局ハ在郷軍人分会員、消防手、青年団ト一致協力シテ其警戒ニ任」ずるようにとの通牒を読み上げた。そして、このように政府が流言を拡げ警戒態勢を構築させたことが虐殺事件を引き起こす原因となったとして、政府の責任を追及した。これに対して山本首相は、「政府ハ起リマシタ事柄ニ就テ目下取調進行中デゴザリマス、最後ニ至リマシテ其事柄ヲ当議場ニ愬ヘル時モゴザリマセウ」と答弁し、質問に対する明快な回答はなかった。
 このことを踏まえて、以下質問する。

一 前述の衆議院本会議の質疑の中に見られるように、当時の山本権兵衛首相は朝鮮人等虐殺事件について「取調進行中」であると答弁したが、その後、同事件について政府はいかなる調査を行い、いかなる結論を得たのか。

二 朝鮮人等虐殺事件により亡くなった被害者の遺族に対して政府は救済措置や賠償などの措置を講じたのか。講じたとすれば、いかなる名目でどのような措置を講じたのか。

三 朝鮮人等虐殺事件に対する政府の調査と措置について、それが妥当であるかどうか、現政府の認識を明らかにされたい。

  右質問する。