質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第一八号

ハーグ条約の適用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年二月五日

浜田 和幸   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   ハーグ条約の適用に関する質問主意書

 昨年四月、日本が正式加盟した国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約。以下「本条約」という。)では、両親の一方が子どもを国外に連れ出した場合、子どもは原則として元の国に戻すと規定している。本条約に基づき、「妻が無断で子どもを日本に連れ帰った」として、スリランカ在住の日本人男性が子どもの返還を求めた審判で、大阪家庭裁判所は昨年十一月十九日、当時四歳の子どもをスリランカに返還するよう命じる決定を出した。また、本年一月三十日の大阪高等裁判所での控訴審判決では、妻の即時抗告が棄却された。本条約加盟後、日本の裁判所による返還命令のケースはこれが初めてとみられる。なお、父母はいずれも日本人だった。これに関し、以下質問する。

一 日本人同士の夫婦であっても、子どもを国外に連れ去れば元の国に戻すのが国際社会の常識であり、一方的に連れ去る行為は誘拐罪で起訴されるケースもある。他方、日本国内で同様のケースが生じた場合、連れ去られた側の親が子どもに二度と会えなくなるばかりか、身に覚えのないドメスティック・バイオレンス(DV)の疑いまでかけられるケースが圧倒的に多い。なかには絶望のあまり自殺に至る例も後を絶たず、離婚件数の増加とともに問題は拡大する傾向にある。同じ人権問題でありながら、連れ去ったのが国外か国内かによって法の適用が正反対となる現状について、政府の見解を示されたい。

二 前記一で指摘したような問題が起こる原因として議論に上るのが、離婚後の単独親権制度である。離婚時に親権者を決定し片親の親権を剥奪する必要から、離婚の危機が生じた段階で片方の親が離婚前に子どもを連れ去る。連れ去った側の同居親は親権を獲得するために、離婚調停において虚偽のDV申立てを行い、夫婦間の亀裂は更に深まる。同居親は審理を有利に進めるために、何ら罪のない子どもに連れ去られた側の非同居親の悪口を言い続け、子どもは非同居親を恨み、同居親の顔色を伺って「良い子」を演じ続ける。このような生活環境が、親が離婚した子どもの人格形成の阻害要因になっているとの報告もある。我が国でも批准している児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)や、基本的人権尊重の立場から、同居親だけが得をし、子どもや非同居親が苦しみ続ける現状の制度を改め、離婚後も共同親権が続くように民法を早急に改正すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 日本では過去の事例が多いことを理由に親権が母親に付与される例が圧倒的に多く、男性差別といえる状況にある。面接交渉権についても、親権者が非親権者に事実上面接させない事例も多い。養育費の滞納に対する強制執行が多くある一方で、面接交渉を拒否した親権者に対して罰則を科す判例は稀少である点など、親権者と非親権者に対する法の運用が事実上差別されている。こうした親権の付与や非親権者の扱いが平等権を侵害している問題について、政府の見解を示されたい。

  右質問する。