質問主意書

第189回国会(常会)

質問主意書


質問第四号

避難者の定義に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十七年一月二十六日

吉田 忠智   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   避難者の定義に関する質問主意書

 復興庁は、二〇一一年八月三日以降、東日本大震災により避難を余儀なくされている方々の人数を「全国の避難者等の数(所在都道府県別・所在施設別の数)」として同庁ホームページ上で毎月公表している。このうち、復興庁が二〇一四年八月二十九日に公表した「全国の避難者等の数」(以下「文書一」という。)には、「埼玉県については、今月から公的主体が提供している住宅に避難されている避難者以外も調査対象としたため、人数が大幅に増加しています。」との「なお書き」(以下「本件なお書き」という。)が付記されている。
 埼玉県は、二〇一四年八月二十九日に「東日本大震災の避難者数の調査方法の変更と調査について 県内避難者数は五千六百三十九人」を同県ホームページ上で公表した(以下「文書二」という。)。同報告には、「調査方法の経緯」として、調査対象の追加により同県における避難者数が増加していることを明らかにしている。
 一方、復興庁担当者は各都道府県の避難者数調査担当者宛てに、「避難者数調査についての留意事項」(以下「文書三」という。)を二〇一四年八月四日付けで発出していたことが明らかになった。同連絡文書は、避難者数の調査方法について更なる指示を行っており、震災から三年以上経過した後も、避難者の定義について、政府と自治体に共通した了解がないことをうかがわせるものとなっている。
 そもそも全国の避難者数調査については、消防庁災害対策本部から各都道府県消防防災担当者宛に依頼していた。その後、二〇一一年五月二十七日付け、内閣府被災者生活支援チームと消防庁災害対策本部の連名による各都道府県防災担当部局宛の事務連絡「震災による避難者の避難場所別人数調査」(以下「文書四」という。)により、内閣府被災者生活支援チームが避難者数調査の中心となり、さらに復興庁設立後は同庁が引き継いだことが分かっている。
 二〇一一年三月十一日の東日本大震災及び東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)から四年近く経過した現在、復興庁調査によれば、少なくとも約二十三万四千人がなお避難を余儀なくされている。避難者は、復興施策、原発事故被災者支援の対象であり、その人数は極めて基礎的なデータである。それにもかかわらず、右の経緯に見られるとおり、避難者について、復興施策の司令塔として設置された復興庁による定義が未策定ないしは混乱しており、その結果として被災者支援施策が適切なものとなっていないのではないかとの疑念も否定できないところである。
 よって、以下質問する。

一 文書一について

1 本件なお書きは、埼玉県においてのみ、避難者の定義が他の都道府県と相違していたという意味か。本件なお書きが意味するところを示されたい。
2 文書一における「避難者」の定義及び集計方法を明らかにされたい。

二 文書二について

1 二〇一四年八月二十九日以前の埼玉県の報告について、避難者の過少申告との認識はあるか、復興庁の見解を明らかにされたい。
2 他の都道府県における埼玉県に類似するような避難者数の過少申告につながる可能性のある事例について、復興庁は調査したのか。調査を行っていた場合、同様の事例が存在した都道府県名と復興庁としての対応を明らかにされたい。
3 全国の都道府県別の避難者数を、埼玉県が実施した各回調査時の調査方法により、その内訳とともに、明らかにされたい。

三 文書三について

1 これまでの調査・照会においては、定義がまちまちであったため、避難者が過小に申告されていたというのが文書三の基本認識ではないか、復興庁の見解を明らかにされたい。
2 避難者を「東日本大震災をきっかけに住居の移転を行い、その後、前の住居に戻る意思を有するもの」と定義しているが、旧住所地に「戻る意思を有するもの」に限ったのは、いかなる理由・根拠に基づくものか、明らかにされたい。
3 東日本大震災をきっかけに住居の移転を行い、その後、「前の住居に戻る意思を有しないもの」について、政府として人数、世帯数、推移等につき、調査・把握しているか。把握しているとすれば、月ごとの人数、世帯数、推移等につき、明らかにされたい。
4 東日本大震災をきっかけに住居の移転を行い、その後、「前の住居に戻る意思を有しないもの」については、支援する必要がないとの認識なのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 文書四について

 文書四による調査目的は、「今後避難所の解消を図る上では、各避難場所で生活されている方の人数を直接把握する必要があるため」という極めて限定されたものとなっており、支援すべき避難者の全体像を全て把握するという点で不適切だったのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

五 避難者数調査全般について

1 総務省「全国避難者情報システム」における避難者の定義及び集計方法、並びに最新の避難者の人数を避難元、避難先自治体別に、それぞれ示されたい。
2 これまでの避難者数調査について、調査依頼文書の日付、発出主体、依頼対象、依頼文書記載の調査の目的を、時系列に沿って明らかにされたい。
3 復興支援の根幹に関わる、このような避難者定義の未策定ないし混乱は、結果として避難者の過小申告、震災被害の過小評価につながったのではないかとの批判もあるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。