質問主意書

第188回国会(特別会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質一八八第一八号
  平成二十七年一月九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員田村智子君提出新国立競技場の建設及び維持等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員田村智子君提出新国立競技場の建設及び維持等に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「オリンピックムーブメンツ アジェンダ二十一」及び「オリンピックアジェンダ二〇二〇」については、平成三十二年に東京都で開催される予定の第三十二回オリンピック競技大会(以下「オリンピック」という。)の開催に当たり、尊重されるべきものと考える。

二について

 国立霞ヶ丘競技場陸上競技場(以下「国立競技場」という。)の改築に係る工事費の総額については、平成二十五年十二月に、事業主体である独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「センター」という。)において、新しく建設する国立競技場(以下「新国立競技場」という。)の建設工事費を約千六百二十五億円と試算し、これを設計条件の一つとしたところである。お尋ねの「上限額」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成二十五年十二月以降における建設資材価格及び労務単価の高騰並びに消費税率の引上げ(以下「市場価格の変動等」という。)を加味した新国立競技場建設工事費の試算額については、センターにおいて現在行っている実施設計の作業の中で、市場価格の変動等に伴う増額要因とともに、低コスト化に伴う減額要因を勘案し、精査しているところであることから、お答えすることは困難である。また、国立競技場の解体工事費については、センターのホームページに契約金額が掲載されているところである。
 御指摘の文部科学大臣の発言は、新国立競技場建設工事費は、新国立競技場が竣工するまでの間において、市場価格の変動等の影響を受けることが考えられることから、建設工事費の変動の可能性があることについて言及したものである。

三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、センターでは、新国立競技場の耐用年数を五十年と仮定し、一般財団法人建築保全センター発行の「平成十七年版建築物のライフサイクルコスト」に基づき、新国立競技場建設後五十年間分の修繕費を約三百十九億円と、大規模改修費を約六百五十六億円と試算していると承知している。なお、これらを合計した金額は、平成二十五年十二月に設計条件の一つとした新国立競技場建設工事費の試算額約千六百二十五億円の約六十パーセントに相当する。また、大規模改修費の試算額の内訳は、固定屋根の膜約六十二億六千五百万円、開閉式遮音装置の膜約二十二億九百万円、その他の建築仕上等約五十五億八百万円、大型映像装置約二十二億三千百万円、受変電設備約十四億九千九百万円、その他の電気設備約百五億六千五百万円、空気調和機約七十二億六千九百万円、空調配管及びダクト約五十六億百万円、その他の機械設備約百八十六億四千七百万円、その他の管理設備約五十七億九千九百万円であると承知している。

四の1及び3について

 新国立競技場の建設に当たっては、センターが設置した国立競技場将来構想有識者会議において、新国立競技場が備えるべき要件について検討が行われ、大規模な国際競技大会の主会場となるために備えるべき機能及び稼働率の向上の観点から、屋根の設置が要件の一つとされたものと承知している。
 センターでは、施設の運営に関し、天然芝の育成に必要な採光及び通風等が最大限確保できるよう、屋根に設置する開閉式遮音装置を通常は開いた状態とするとともに、南側の屋根に透過率の高い材料を採用して太陽光の入射量を高めるほか、グローイングライト及び地中温度制御システムを導入する等の対応策を計画している。また、天然芝の育成及び維持に関する研究を行う予定であると承知している。
 なお、センターによれば、開閉式遮音装置の設置に伴う音楽等文化イベントの開催日数の増加による収益増加額を年額約五億円と見込む一方、同装置の毎年の減価償却費を約四億三千六百万円、維持管理費を約二千五百万円、合計約四億六千百万円と見込んでいることから、同装置のライフサイクルコストは、収益により賄えるものと考えているとのことである。

四の2について

 センターでは、新国立競技場の耐用年数を五十年と仮定した場合のお尋ねのC種膜材の更新費用について、約二十二億九百万円を見込んでいると承知している。

五について

 オリンピック開催後の新国立競技場の利用については、センターから、これまでと同様に、非営利団体も利用できるようにするとともに、大規模な国際競技大会や音楽等文化イベント等の開催を想定していると聞いている。また、新国立競技場の使用料金については、今後、センターにおいて、利用者に配慮しつつ適切に検討が行われるものと承知している。