質問主意書

第187回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八五号

内閣参質一八七第八五号
  平成二十六年十一月二十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員山本太郎君提出日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案及びJESCOによるPCB廃棄物処理に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案及びJESCOによるPCB廃棄物処理に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「設備の運転管理上の不具合や事故及び作業者の労働安全衛生上のトラブル」の意味するところが必ずしも明らかではないが、日本環境安全事業株式会社(以下「会社」という。)は、福岡県、大阪府、愛知県、東京都及び北海道にポリ塩化ビフェニル廃棄物処理施設を設置しており、各施設の操業開始以降、事故等が発生した場合には、会社及び関係地方公共団体が設置する会議において、その内容及び対応状況について報告しているところである。これら会議において報告された事故等の内容及び対応状況のうち主要なものについては、会社並びに福岡県北九州市、大阪府大阪市、愛知県豊田市並びに北海道及び同道室蘭市のホームページに掲載されている。

二について

 会社の職員数(正規雇用及び非正規雇用を含む。)については、平成二十六年三月三十一日現在で三百三十名と承知している。なお、お尋ねの「専門職」の意味するところが必ずしも明らかではないが、会社の職員の職種、学歴、職歴及び雇用形態の詳細については、承知していない。
 お尋ねの「天下り、及び派遣者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「天下り」とは府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させることをいうとすれば、国の行政機関から会社の役職員への天下り及び地方公共団体から会社の役員への天下りはない。また、「派遣」とは退職手当を受給せず退職して会社の役職員に就任することをいうとすれば、国の行政機関から役職員として会社に派遣をされている者及び地方公共団体から職員として会社に派遣をされている者がいる。

三について

 お尋ねの「事業監査及び外部監査」の意味するところが必ずしも明らかではないが、会社法(平成十七年法律第八十六号)第四百三十六条第二項第一号の規定に基づく、平成二十五年四月一日から平成二十六年三月三十一日までの事業年度の計算書類等に対する監査については、同年六月五日付けで独立監査人から会社宛てに監査報告がなされている。当該監査報告においては、計算書類及びその附属明細書は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、当該計算書類及び附属明細書に係る期間の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているものと認める旨記載されている。

四について

 お尋ねの「予算及び決算の執行状況」の意味するところが必ずしも明らかではないが、予算及び決算の情報については、会社のホームページにおいて明らかにされている。
 また、会計検査院は、会計検査院法(昭和二十二年法律第七十三号)第二十二条第五号の規定に基づき、会社に対して、毎年度検査を実施しているが、過去五年間において会社について検査報告に掲記されたものはない。

五について

 御指摘の「今年六月の環境大臣告示」は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画(平成二十六年環境省告示第七十五号)を指すものと思われるが、仮にお尋ねの「課題」が当該計画における「作業者に係る安全対策等、処理開始後に明らかとなった課題」を指すのであれば、当該課題とは会社のポリ塩化ビフェニル廃棄物処理施設の操業開始後、常温におけるポリ塩化ビフェニルの揮発量が施設設計時点の知見以上に多かったことが明らかとなり、作業者の安全確保のために作業時間が制限されたことなどである。

六について

 中間貯蔵施設の整備については、平成二十三年八月二十七日に、菅内閣総理大臣(当時)から佐藤福島県知事(当時)に対し、福島県内の除染に伴い生じた土壌や廃棄物を適切に管理する中間貯蔵施設を福島県内に整備したい旨要請したのを契機に、環境省内において本格的な検討を開始した。
 同年十月二十九日に環境省が策定した「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による環境汚染の対処において必要な中間貯蔵施設等の基本的考え方について」については、同日及び同年十二月二十八日に、福島県内の関係する市町村長等に説明をした。

七について

 六についてで述べた中間貯蔵施設の整備についての検討と並行して、中間貯蔵に係る事業の実施体制についての検討を行い、平成二十三年十二月二十八日に、福島県及び同県双葉郡八町村に対し、中間貯蔵施設の整備及び運営管理等に会社を活用することを検討する旨説明をした。また、平成二十五年十一月八日に自由民主党及び公明党から「中間貯蔵施設の運営管理の実施体制についても、独立行政法人や特殊会社等の専門組織の有用性について検討し、早期に結論を得ること」と提言があり、これを踏まえて会社の活用に関する検討を進めた。

八について

 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理に係る事業については、会社が、自らの施設においてポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理をその判断により計画的に行うものであるのに対し、中間貯蔵に係る事業については、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(以下「新会社」という。)が、国が整備する中間貯蔵施設において中間貯蔵等を国等から委託を受けその指示に従って行うものであるため、平成二十六年十一月十九日に成立した日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)による改正後の中間貯蔵・環境安全事業株式会社法(以下「新法」という。)において、中間貯蔵に係る事業の基本となる事項に関する計画は規定されていない。

九について

 お尋ねの「情報公開及び外部監査」の意味するところが必ずしも明らかではないが、新法第七条第一項の規定に基づき、新会社は、事業に関する情報の提供等を行うこととされている。また、監査については、会社法の規定により行われることから、新法において、関連する規定は設けられていない。なお、このほか、四についてで述べたように、会計検査院の検査の対象となっている。

十及び十四について

 中間貯蔵に係る事業については、新法の規定に基づき、新会社により平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)第二十条、第二十三条第一項若しくは第二項又は第四十一条第一項の規定に従って行われるものである。また、最終処分(新法第二条第三項に規定する最終処分をいう。以下同じ。)についても、放射性物質汚染対処特措法のこれらの規定に従って行われるものであり、御指摘のような「検討」を行う必要はないものと考えている。
 お尋ねの「法の整合性から問題がないのか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、放射性物質汚染対処特措法は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する措置を定めること等により、当該汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的とした法律であり、暫定的な措置を定めたものではなく、「放射性物質汚染対処特措法という暫定法での規定を基礎にして、今後三十年も中間貯蔵や最終処分するとする本法律案」との御指摘は当たらないと考えている。

十一について

 お尋ねの「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずるものとする」とされた根拠については、福島県内においては、濃度の高いものを含め除染等に伴い発生すると見込まれる除去土壌等の量が膨大であり、直ちに最終処分の方法を明らかにし難いこと、最終処分の方向については、放射性物質の効果的な分離、濃縮等の技術の発展によるところが大きいこと等を総合的に勘案したことによるものであり、新法第三条第二項において、福島県外での最終処分についての国の責務が定められている。
 最終処分の見通し及びその具体的な可能性については、平成二十六年七月二十八日に佐藤福島県知事(当時)並びに渡辺大熊町長及び伊澤双葉町長に提示し、その後、環境省ホームページにおいて公表している「中間貯蔵施設等に係る対応について」等の中で明らかにしているとおりである。

十二について

 新法附則第三条において、政府は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理期限である「平成三十九年三月三十一日までの間に、中間貯蔵の状況、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理の状況その他の状況を勘案しつつ、会社の組織及び事業全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。」と規定されるとともに、御指摘の改正法附則第九条第一項において、改正法の施行の日から平成三十九年三月三十一日までのおおむね中間的な時期である改正法の「施行後七年を経過した場合において、新法の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と規定されており、これらの規定に加えて、御指摘のように改正法の施行後三年を経過した場合における新法の見直しについて規定する必要性は乏しいものと考えている。
 また、御指摘の国会への報告、公表及び関係者に対する説明の義務付けについては、日本環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)の国会審議における平成二十六年十月三十一日の衆議院環境委員会の附帯決議及び同年十一月十八日の参議院環境委員会の附帯決議において、最終処分の取組の進捗状況について毎年国会に報告することとされたところであり、これに適切に対応していく必要があるとともに、中間貯蔵に係る事業の実施に当たっては、新法第三条第二項の規定を踏まえ、関係者の理解と協力が得られるよう中間貯蔵施設の整備状況、中間貯蔵の状況等について適時適切に公表していくなどの措置を講ずることとしている。

十三について

 御指摘の「防災計画及び近隣住民への安全対策の策定計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、中間貯蔵に係る事業の実施に当たっては、福島県内除去土壌等の安全かつ確実な搬入、中間貯蔵等ができるよう、万一事故が発生した場合に備え、必要な対応策を講じていく方針である。

十五について

 御指摘の「廃棄物や汚染土壌に関する取扱いを規制する官庁」、「自治体の責任や関与」等の意味するところが必ずしも明らかではないが、事故由来放射性物質に汚染された廃棄物の処理や除染等の措置等を定めた放射性物質汚染対処特措法を所管するのは、環境省である。また、放射性物質汚染対処特措法第四条の規定により、地方公共団体は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、国の施策への協力を通じて、当該地域の自然的社会的条件に応じ、適切な役割を果たすものとされている。
 また、改正法案の作成及び提出に当たっては、平成二十六年五月二十七日に石原環境大臣(当時)及び井上環境副大臣(当時)が福島県郡山市で渡辺大熊町長及び伊澤双葉町長に対し、同年七月二十八日に石原環境大臣(当時)、根本復興大臣(当時)及び井上環境副大臣(当時)が東京都千代田区で佐藤福島県知事(当時)、渡辺大熊町長及び伊澤双葉町長に対し説明するなどしている。

十六について

 御指摘の「周辺環境、人命及び健康に影響する事故並びに取扱いの不具合」の意味するところが必ずしも明らかではないが、新会社や新会社から委託を受けた者が、中間貯蔵に係る事業を実施するに際し事故等を発生させた場合の責任及び罰則については、個別具体的な状況に応じて判断する必要があるため、一概にお答えすることは困難である。なお、中間貯蔵施設の整備及び運営管理等については、国が責任を持って行うこととしている。
 お尋ねの「改定」の進捗状況については、放射性物質による環境の汚染の防止のための関係法律の整備に関する法律(平成二十五年法律第六十号)において、大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)、水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)、南極地域の環境の保護に関する法律(平成九年法律第六十一号)及び環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)について、所要の整備が行われているところである。
 御指摘の「周辺環境、人命及び健康への影響に関する基本的な法律案」の意味するところが必ずしも明らかではないが、放射性物質により汚染された廃棄物等に関する規制の在り方その他の放射性物質に関する法制度の在り方については、先の答弁書(平成二十五年十一月二十六日内閣参質百八十五第六十三号)三についてでお答えしたとおりである。
 なお、第百八十七回国会に改正法案を提出した理由は、中間貯蔵の確実かつ適正な実施の確保を図り、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することに資するため、会社を新会社に改組し、その事業に中間貯蔵に係る事業を追加する等の必要があったためである。