質問主意書

第187回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八三号

内閣参質一八七第八三号
  平成二十六年十一月二十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員山本太郎君提出九電川内原発を始めとした我が国の運転停止中の原発再稼働に係る「安全」及び原発事故発生後における政府の「責任」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出九電川内原発を始めとした我が国の運転停止中の原発再稼働に係る「安全」及び原発事故発生後における政府の「責任」に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「負うべき責任」について、具体的に意味するところが必ずしも明らかでなく、一概にお答えすることは困難である。なお、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故を踏まえ、専門的な知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する組織として、原子力規制委員会を設置し、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第四十三条の三の六第一項第四号の規定に基づき定められている実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第五号)等(以下「新規制基準」という。)に係る適合性審査等の業務を行っている。

二について

 九州電力株式会社川内原子力発電所(以下「川内原子力発電所」という。)について、様々な意見があることは承知している。
 なお、川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(一号及び二号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書案(原子炉等規制法第四十三条の三の六第一項第二号(技術的能力に係るもの)、第三号及び第四号関連)に対する科学的・技術的意見の募集を行ったところ、自然災害への対応を含め様々な意見が寄せられており、原子力規制委員会においてこれらに対する回答等を公表している。
 万が一事故が起きた場合、原子力災害の拡大の防止等に必要な措置の実施や原子力損害の賠償等について、その一義的な責任は事業者が負うこととなる。さらに、政府としても、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号。以下「原災法」という。)等の関係法令に基づき、緊急事態応急対策等の実施のために必要な措置を講ずる等の責務を有するものと認識している。

三について

 新規制基準については、原子力規制委員会が、国際原子力機関や諸外国の規制基準を参考にしながら、我が国の自然条件の厳しさ等も勘案し、地震や津波への対策の強化やシビアアクシデント対策の導入を図った上で、世界最高水準の基準となるよう策定したものである。なお、お尋ねのような事項について網羅的にお答えすることは困難である。

四について

 新規制基準については、三についてで述べたとおり、世界最高水準の基準となるよう策定したものであるが、必ずしも最も厳しい基準であることを意味するものではないと考えている。

五及び六について

 御指摘の「世界最高水準の安全が確認された原発」の定義が必ずしも明らかではないが、川内原子力発電所について、原子力規制委員会が、世界で最も厳しい水準の規制基準への適合性を確認することにより、法律に基づいて、運転に当たり求めてきたレベルの安全性が確保されることを確認したものである。

七について

 個々の原子力発電所について、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合に、実際に再稼働を行うのは事業者である。また、「エネルギー基本計画」(平成二十六年四月十一日閣議決定)において、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」こととしており、政府は、この方針に基づいて、再稼働を進めるものである。お尋ねの菅内閣官房長官の発言は、この考え方に沿ったものであると考えている。

八について

 原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ねられており、同委員会は、新規制基準を策定し、新規制基準に係る適合性審査を実施している。同委員会は、専門的な知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する組織であり、このような組織が適合性審査を実施することにより、運転に当たり求めてきたレベルの安全性が確保されることを確認している。お尋ねの菅内閣官房長官の発言は、この考え方に沿ったものであると考えている。

九について

 万が一事故が起きた場合、原子力災害の拡大の防止等に必要な措置の実施や原子力損害の賠償等について、その一義的な責任は、事業者が負うこととなる。さらに、政府としても、原災法等の関係法令に基づき、緊急事態応急対策等の実施のために必要な措置を講ずる等の責務を有するものと認識している。なお、どのような法令が適用されるかについては、個別の事案ごとに判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。

十について

 弾道ミサイル等の移転・拡散・性能向上に係る問題は、我が国や国際社会にとっての大きな脅威となっており、特に、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発は、我が国に対するミサイル攻撃の示唆等の挑発的言動とあいまって、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっていると認識している。政府としては、国民の生命・財産を守るため、平素より、弾道ミサイル発射を含む様々な事態を想定し、関係機関が連携して各種のシミュレーションや訓練を行っているところである。
 「原発に対する他国からの弾道ミサイル攻撃等」についてのお尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたいが、一般論として申し上げれば、弾道ミサイルが発射された場合の対応については、国民の生命・財産を守るため、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成十六年法律第百十二号。以下「国民保護法」という。)等に基づき、弾道ミサイル発射に関する兆候を早期に察知し、多層的な防護態勢により、機動的かつ持続的に対応するとともに、万が一被害が発生するおそれがある場合には、被害を防止、軽減するための必要な措置を講ずる所存である。
 また、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)においては、御指摘の「他国からの弾道ミサイル攻撃等」によって生じた原子力損害が、同法第三条第一項ただし書に規定する「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたもの」に該当する場合、原子力事業者は、その損害を賠償する責めに任じない。この場合、政府は、同法第十七条において、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとされている。

十一及び十二について

 弾道ミサイル等による攻撃に対しては、原子力の規制によって対処すべき性質のものではないと考えている。

十三及び十四について

 原子力災害対策指針(平成二十四年十月三十一日原子力規制委員会決定)は、武力攻撃による原子力災害が発生した場合の対応について定めていないが、武力攻撃による原子力災害が発生した場合には、国民保護法第百六条の規定に基づき、原子力規制委員会は原子炉等に係る武力攻撃災害の発生等を防止するため必要な措置を講ずべきことを命ずることができる旨が規定されている。

十五及び十六について

 お尋ねの「九電川内原発に対する弾道ミサイル攻撃による原子力災害が発生した場合の住民の避難計画・防災計画」及び「弾道ミサイル攻撃に対する国民保護計画、住民の避難計画及び防災計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国民保護法においては、都道府県知事及び市町村長は、国民の保護のための措置の実施に関し、国民の保護に関する計画を作成することとされており、鹿児島県及び薩摩川内市においては、当該計画を作成済みであるが、当該計画においては弾道ミサイル攻撃等を含む武力攻撃による原子力災害への対処についても記載があると承知している。また、都道府県及び市町村が当該計画を作成するに当たっては、国において、地方公共団体の当該計画が「国民の保護に関する基本指針」(平成十七年三月二十五日閣議決定)に基づいて適切に作成されるよう、地方公共団体向けの説明会において技術的助言を行う等、作成を支援してきたところである。
 なお、実際の避難に当たっては、国民保護法に基づき、国が都道府県知事に対して避難措置の指示を行い、それを受けた都道府県知事は市町村長を経由して住民に対して避難の指示を行い、避難の指示を受けた市町村長は避難実施要領を定め、避難住民の誘導等を行うこととなる。

十七について

 お尋ねの「九電川内原発に対する弾道ミサイル攻撃による原子力災害に対する国民保護計画」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国民保護法においては、九州電力株式会社を含む指定公共機関は、国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項等を定めた国民の保護に関する業務計画を作成することとされており、同社においては作成済みであるが、当該業務計画においては弾道ミサイル攻撃等を含む武力攻撃による原子力災害への対処についても記載があると承知している。なお、同社が当該業務計画を作成する際、国として具体的な支援は行っていない。

十八について

 政府としては、原子力災害対策指針に基づき、国際放射線防護委員会等の勧告や国際原子力機関の原則にのっとり、原子力災害が発生した場合には、住民等の被ばく線量を最小限に抑えると同時に、被ばくを直接の原因としない健康等への影響も抑えることを、放射性被ばくの防護措置の基本的考え方としている。

十九について

 原子力災害対策マニュアル(平成二十四年十月十九日原子力防災会議幹事会決定)において、現地に設置される原子力災害現地対策本部の事務局の医療班は、「公衆の被ばく線量の推計、原子力被災者等の健康管理及び健康相談を関係機関と連携して実施する。」とされている。

二十について

 お尋ねの「政府が前面に立って責任を持って行っている事業」について、具体的に意味するところが必ずしも明らかではなく、一概にお答えすることは困難であるが、国としては、廃炉・汚染水対策について、廃炉・汚染水対策チーム会合の事務局会議の場等も活用し、「東京電力(株)福島第一原子力発電所一~四号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(平成二十五年六月二十七日原子力災害対策本部東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議決定)に記載した各種対策が着実に実施されるよう進捗管理を行っている。加えて、廃炉・汚染水対策現地事務所を設置し、現場で日々発生する様々な問題の把握、対応策の検討等も実施しているほか、廃炉・汚染水対策現地調整会議を開催し、現場での工程管理を行っている。
 また、技術的難易度が高く、国が前面に立って取り組む必要があるものについては、財政措置を進めることとしている。具体的には、凍土方式の陸側遮水壁及びより高性能な多核種除去設備の設置並びに原子炉内の溶解した燃料の取り出し等の多くの技術課題の解決に向けた研究開発をその対象とすることとしている。