質問主意書

第187回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六三号

内閣参質一八七第六三号
  平成二十六年十一月十八日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員福島みずほ君提出リニア中央新幹線工事に伴う環境影響回避策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員福島みずほ君提出リニア中央新幹線工事に伴う環境影響回避策に関する質問に対する答弁書

一について

 東海旅客鉄道株式会社(以下「JR東海」という。)は、山梨実験線(以下「実験線」という。)の工事に先立ち、実験線が通過する沢や川を境にトンネル区間を八つに分けて、各区間のトンネルの掘削に伴う水資源への影響について事前に定性的な評価(以下「事前評価」という。)を行っている。JR東海が環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づき作成した「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書」(以下「環境影響評価書」という。)の中では、事前評価の結果と実際に生じた水資源への影響が対比表として示されている。

二について

 事前評価においては、水文調査や地質調査に基づき定性的な予測が行われたのに対し、環境影響評価においては、南アルプス区間について、水収支解析を実施し、水資源への影響を定量的に予測している。

三について

 環境影響評価書についての国土交通大臣からの意見(以下「国土交通大臣意見」という。)において、「必要に応じて精度の高い予測を行い、その結果に基づき水系への影響の回避を図ること」を求めたのに対して、JR東海は、補正後の環境影響評価書において、「今後、トンネル工事実施までに巨摩山地及び伊那山地においても三次元水収支解析を実施してまいります。工事にあたっては、事前に先進ボーリング等、最先端の探査技術を用いて地質や地下水の状況を把握したうえで、必要に応じて薬液注入を実施することや、覆工コンクリート、防水シートを設置することにより水位への影響を低減し、水系への影響を回避するよう努めてまいります」と記載している。
 なお、御指摘の「モデル及び計算式」については、環境影響評価書の補正前後で変更されていないが、JR東海によると、昭和五十八年に開発されてから約三十年にわたって改良が進められてきたもので、最新の予測手法であるとのことである。

四について

 中央新幹線については、全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号。以下「全幹法」という。)第五条第一項の規定に基づく指示により、昭和四十九年から平成二十年まで、日本国有鉄道、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構及びJR東海により、地形・地質等に関する調査が行われたところである。当該調査においては、水平ボーリングにより、一部の活断層の地質の状況についても調査が行われている。今後JR東海により行われる工事においても、活断層の活動度にかかわらず、水平ボーリング等により活断層の地質の状況が調査される予定であり、必要な対策が講じられるものと考えている。

五について

 平成二十四年七月に改訂された「鉄道構造物等設計標準(耐震設計)」においては、「構造物の建設地点における地震動および地震に伴い生ずる事象が構造物に与える影響等を総合的に考慮して構造物の位置、形式等を定めるものとする」としている。
 中央新幹線においても、JR東海により、鉄道構造物等設計標準に基づいて、構造物の設計等がなされる予定である。

六について

 お尋ねの「補正評価書を妥当と判断」の意味するところが明らかではないが、環境影響評価法において、国土交通大臣は、JR東海が送付した環境影響評価書について意見を述べ、JR東海は、この意見を勘案して環境影響評価書を補正し、これを同大臣に送付、公告及び縦覧することとされており、補正後の環境影響評価書には、地質学的手法による隆起量について、財団法人東京大学出版会(当時)から平成十七年に第二刷が発行された「日本の地形1総説」に基づき、浸食がない場合の隆起速度が示されている。

七について

 国土交通大臣意見において、「発生土置場からの流出土砂・・・崩壊等に伴う土砂災害・・・を最大限回避するよう、発生土置場での発生土を適切に管理すること」を求めたのに対して、JR東海は、補正後の環境影響評価書において、「発生土置き場の崩壊に伴う土砂災害・・・が生じないよう努めます。また、関係地方公共団体等と調整を行った上で、工事中及び完成後において周辺環境に影響を及ぼさないための管理計画を、発生土置き場ごとに作成して、適切に管理を行います」と記載している。これらを勘案して環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査し、中央新幹線の工事実施計画を認可したものである。

八について

 御指摘の「生物地理学的な区域を越えずに残土を処理することは不可能」の意味するところが必ずしも明らかではないが、建設発生土については、土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)等の関係法令に従って適正に処理がなされるものと認識している。

九から十一まで及び十三について

 御指摘の「法の理念」、「新たな人口予測を反映した再度の事業予測」、「リニア計画を遂行できなくなった場合」及び「全幹法に基づく鉄道事業は国及びそれに準ずる機関が建設を行うのが基本」の意味するところが必ずしも明らかではないが、中央新幹線の営業主体及び建設主体の指名並びに整備計画の決定に当たっては、国土交通大臣は、全幹法第十四条の二の規定に基づき、交通政策審議会に諮問を行っており、平成二十三年五月の同審議会の答申「中央新幹線の営業主体及び建設主体の指名並びに整備計画の決定について」において、中央新幹線の事業特性及びJR東海の事業遂行能力を「総合的に勘案し、東京・大阪間の営業主体及び建設主体としてJR東海を指名することが適当である。」とされたこと等を踏まえ、同大臣は、全幹法第六条第一項の規定に基づき、中央新幹線の営業主体及び建設主体としてJR東海を指名するとともに、全幹法第七条第一項の規定に基づき、「中央新幹線の建設に関する整備計画」を決定したものである。

十二について

 御指摘の「事業予測」の意味するところが必ずしも明らかではないが、JR東海によると、超電導磁石に使用される液体ヘリウムは、日本の年間輸入量や世界の総産出量に比べてごく僅かであり、十分に確保可能であるとのことである。