質問主意書

第187回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二七号

内閣参質一八七第二七号
  平成二十六年十月二十四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員吉田忠智君提出安倍内閣の基本姿勢に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉田忠智君提出安倍内閣の基本姿勢に関する質問に対する答弁書

一の1について

 我が国の景気は、このところ弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている。

一の2について

 今般の消費税率(国・地方)の引上げは、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成することを目指す観点から行われるものであり、その増収分は全額社会保障の充実・安定化に充てられ、国民に還元されるものである。平成二十七年十月に予定される消費税率の十パーセントへの引上げについては、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成二十四年法律第六十八号)附則第十八条第三項及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律(平成二十四年法律第六十九号)附則第十九条第三項の規定に従い、経済状況等を総合的に勘案して、本年中に適切な判断を行うこととなる。

二の1について

 御指摘の「人口減少や地方の疲弊」の意味するところが必ずしも明らかでないが、長期的な合計特殊出生率の低下や厳しい地方経済の状況には様々な要因があると考えられることから、お尋ねの「責任」や「検証」について、一概にお答えすることは困難である。

二の2について

 大胆な金融緩和によるデフレからの脱却、環太平洋パートナーシップ(以下「TPP」という。)による成長するアジア太平洋地域の活力の我が国への取り込み、農協改革を通じた農業の成長産業化、東京におけるオリンピック・パラリンピック競技大会の開催効果の全国への波及、国土強靱化による強くしなやかな国土・地域・経済社会の構築などは、いずれも我が国経済の成長や景気回復につながるものであり、景気回復を全国津々浦々で実感できるようにするため進める地方創生と矛盾するものではない。

三の1及び2について

 お尋ねの九月のTPP協定交渉に係る日米閣僚協議終了後において甘利経済再生担当大臣が「柔軟性のある案を示した」と述べたことについて、その具体的内容を明らかにすることは、交渉内容そのものを明らかにすることとなり、現在TPP協定は交渉中であることから、詳細についてお答えすることは差し控えたい。また、米国政府との交渉の具体的内容についてもコメントすることは差し控えるが、政府としては、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求するよう、全力で交渉に当たっているところである。

三の3について

 お尋ねの米国の国内法等について、我が国として判断する立場にはない。また、一般論として申し上げれば、国際約束の締結については、それぞれの国内で必要な手続を経て、国民に説明することは、各国政府がそれぞれの責任において行うべき問題である。

四について

 政府としては、「農林水産業・地域の活力創造プラン」(平成二十五年十二月十日農林水産業・地域の活力創造本部決定。以下「プラン」という。)に基づき、経営所得安定対策の見直し、日本型直接支払制度の創設、麦・大豆・飼料用米等の戦略作物の本作化による水田のフル活用及び米の生産調整の見直しを含む米政策の改革の各改革を着実に進め、農業を成長産業としていく考えである。プランに基づき、収入減少影響緩和対策については、農業の担い手に対するセーフティネットとして実施することとし、第百八十六回国会において農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律(平成二十六年法律第七十七号)が成立したところであり、また、米の直接支払交付金は、平成二十六年産米から交付金の単価を半減した上で、平成三十年産米から廃止することとし、米価変動補填交付金は、平成二十六年産米から廃止することとしたところであり、これらの措置を撤回することは考えていない。
 また、収入減少影響緩和対策については、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律(平成十八年法律第八十八号)第四条第一項の規定に基づき、同項に規定する前年度収入額が同項に規定する標準的収入額を下回った場合に交付金を交付するものであり、平成二十六年産米に係る収入の減少について平成二十六年度に当該交付金を交付することは困難であるが、農業の担い手に対するセーフティネットとして適切に実施してまいりたい。

五の1及び2について

 東日本大震災からの復興については、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成二十三年七月二十九日東日本大震災復興対策本部決定)において、復興期間を十年間とした上で、①復興需要が高まる当初の五年間を「集中復興期間」(平成二十三年度から平成二十七年度)と位置付けるとともに、②復旧・復興事業の進捗等を踏まえて、集中復興期間後(平成二十八年度から平成三十二年度)の施策の在り方を定めることとしており、まずは、集中復興期間において、被災地の一刻も早い復興を目指すことが重要と考えている。そのために、五年間の集中復興期間の区切りとなる平成二十七年度予算において、必要な額を措置していきたいと考えている。集中復興期間後の平成二十八年度以降の復旧・復興事業については、お尋ねの復興交付金事業も含め、同基本方針に沿って、それまでの進捗状況等を踏まえ、財源を含めて、その在り方を検討していくことが必要と考えている。

五の3について

 平成二十五年十月十一日に閣議決定された「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」において、「原発事故発生後、年間積算線量が二十ミリシーベルトに達するおそれのある地域と連続しながら、二十ミリシーベルトを下回るが相当な線量が広がっていた地域においては、居住者等に特に強い健康不安が生じたと言え、地域の社会的・経済的一体性等も踏まえ、当該地域では、支援施策を網羅的に行うべきものと考えられる」とされていることから、同方針において、御指摘の東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(平成二十四年法律第四十八号)第八条第一項に規定する支援対象地域(以下「支援対象地域」という。)は、福島県中通り及び浜通りの市町村(避難指示区域等を除く。)としたところである。
 その上で、施策の趣旨目的等に応じて、支援対象地域に加え、施策ごとに、支援対象地域より広範囲な地域を支援対象地域に準じる地域(以下「準支援対象地域」という。)として定めることとし、必要な被災者生活支援等施策を推進しているところである。
 したがって、支援対象地域及び準支援対象地域により、必要な被災者生活支援等施策が講じられているものと認識しており、現時点においては支援対象地域を拡大する必要はないと考えている。

六について

 お尋ねの「パブリックコメントに寄せられた意見」に対する考え方については、特定秘密の保護に関する法律(平成二十五年法律第百八号。以下「本法」という。)第十八条第二項の優れた識見を有する者(以下「有識者」という。)の意見を踏まえ、内閣官房のホームページにおいて、「「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(案)」に対する意見募集の結果について」等として公表している。
 また、お尋ねの「恣意的な、不正な運用のできない、二重三重の仕組み」としては、有識者の意見を踏まえ、平成二十六年十月十四日に「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準」が閣議決定され、内閣府独立公文書管理監の権限として検証・監察・是正の求めを行うことが定められたことのほか、本法第三条第一項において特定秘密の指定の要件が定められていることや、本法第十八条第四項において内閣総理大臣が同条第一項の基準に基づいて内閣を代表して行政各部を指揮監督する旨が定められていること等が挙げられる。
 なお、お尋ねの自由民主党内における議論については、政府としてお答えする立場にない。
 いずれにせよ、政府としては、本法について今後とも国民の理解を得るように努めるとともに、本法の施行準備に万全を期してまいりたい。

七について

 「日本再興戦略 改訂二〇一四」(平成二十六年六月二十四日閣議決定)において、統合型リゾート(カジノ施設及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体的に運営される施設をいう。以下「IR」という。)については、「観光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待される。他方、その前提となる犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点から問題を生じさせないための制度上の措置の検討も必要なことから、IR推進法案の状況やIRに関する国民的な議論を踏まえ、関係省庁において検討を進める」としたところであり、御指摘のカジノ施設のみによる経済効果に着目しての検討は行っていない。
 なお、IRについては、シンガポール等において、観光振興、地域振興、産業振興等に資する実例があるものと承知している。

八について

 自衛隊の装備品等及び役務については、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に基づき、確実かつ計画的に調達する必要がある。現下の厳しい財政状況の下で防衛力の計画的な整備を行うためには、専ら自衛隊の用に供するために製造又は輸入される装備品、船舶及び航空機並びにこれらの装備品、船舶及び航空機の整備に係る役務の調達であって、防衛力の計画的な整備を行うために必要なものであり、かつ、長期契約により行うことが当該調達に要する経費の縮減及び当該調達の安定的な実施に特に資するものとして防衛大臣が財務大臣と協議して定めるものについて、その調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別の措置を講ずる必要があることから、特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法案を今国会に提出したところである。

九について

 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号)第五条第一項の規定においては、電気事業者は、同法第四条第一項の規定により同項に規定する特定契約の申込みをしようとする同法第三条第二項に規定する特定供給者(以下「特定供給者」という。)から、当該特定供給者が用いる同項に規定する認定発電設備と当該電気事業者がその事業の用に供する変電用、送電用又は配電用の電気工作物とを電気的に接続することを求められたときは、同法第五条第一項各号に掲げる場合を除き、当該接続を拒んではならないとされている。同項第三号においては、経済産業省令で定める正当な理由があるときと規定されており、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則(平成二十四年経済産業省令第四十六号)第六条第一項各号に当該正当な理由が定められている。
 平成二十五年度末に同規則第四条第一項第二号ホに規定する接続請求電気事業者(以下「接続請求電気事業者」という。)に対する特定供給者からの同法第五条第一項の規定による接続の請求(以下「接続の請求」という。)の件数が急増した。このため、接続の請求に応じることにより、同規則第六条第一項第六号に掲げる事由に該当することとなる可能性があることから、これを見極めるために、接続請求電気事業者が、接続の請求への回答の保留をしているものと承知している。
 お尋ねの「こうした事態に至った原因」については、様々な要因が考えられるが、本年度四月からの太陽光発電設備に係る同法第三条第一項に規定する調達価格の引下げを見込んだ多数の特定供給者が、平成二十五年度末に接続の請求を求めたことも一つの要因と考えている。

十の1について

 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案は、急速な少子高齢化の進展、国民の需要の多様化その他の社会経済情勢の変化に対応していくためには、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性がその個性と能力を十分に発揮して職業生活において活躍すること(以下「女性の職業生活における活躍」という。)が一層重要となっていることに鑑み、男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)の基本理念にのっとり、女性の職業生活における活躍の推進について、その基本原則を定め、並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、基本方針及び事業主の行動計画の策定、女性の職業生活における活躍を推進するための支援措置等について定めることにより、女性の職業生活における活躍を迅速かつ重点的に推進し、もって豊かで活力ある社会を実現することを目的として今国会に提出したものである。
 なお、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るとともに、女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的としているものである。

十の2について

 平成二十六年十月三日、閣議決定により、様々な状況に置かれた女性が、自らの希望を実現して輝くことにより、我が国最大の潜在力である「女性の力」が十分に発揮され、我が国社会の活性化につながるよう、内閣にすべての女性が輝く社会づくり本部を設置するとともに、同本部の庶務を、内閣官房において処理することとしたところである。これを受け、同本部に係る事務を処理するため、内閣官房に、すべての女性が輝く社会づくり推進室が置かれたものである。

十の3について

 内閣官房に置かれたすべての女性が輝く社会づくり推進室は、すべての女性が輝く社会づくり本部に係る事務を処理するための組織であり、地方公共団体に混乱を生じさせるとは考えていない。

十の4について

 子ども・子育て支援新制度に基づき幼児教育・保育・子育て支援の量的拡充及び質の向上を図るためには、消費税引上げにより確保する〇・七兆円程度を含め一兆円超程度の財源が必要とされており、その確保については、「経済財政運営と改革の基本方針二〇一四」(平成二十六年六月二十四日閣議決定)において、「着実に進め、消費税分以外も含め適切に対応していく」こととしている。

十の5について

 選択的夫婦別氏制度を導入するか否かは、我が国の家族の在り方に深く関わる問題であり、国民の間にも様々な意見があることから、慎重な検討が必要であると考えている。

十一の1について

 御指摘の「吉田清治証言」は、平成五年八月四日の内閣官房長官談話及び平成七年八月十五日の内閣総理大臣談話の文言に反映されておらず、同内閣官房長官談話についての政府の見解は、衆議院議員鈴木貴子君提出河野談話に対する安倍晋三内閣の見解に関する質問に対する答弁書(平成二十六年四月一日内閣衆質一八六第八六号)一から九までについてでお答えしたものと同じである。

十一の2について

 文部科学省としては、義務教育諸学校教科用図書検定基準(平成二十一年文部科学省告示第三十三号)及び高等学校教科用図書検定基準(平成二十一年文部科学省告示第百六十六号)(以下「教科用図書検定基準」という。)において規定する「閣議決定その他の方法」は、閣議決定及び閣議了解を指すものと考えている。その上で、平成七年八月十五日の内閣総理大臣談話の内容及び平成五年八月四日の内閣官房長官談話についての衆議院議員辻元清美君提出安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問に対する答弁書(平成十九年三月十六日内閣衆質一六六第一一〇号)三の2についてでお答えした内容は、閣議決定を経たものであることから、教科用図書検定基準において規定する「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解」に該当するものであると考えている。

十一の3について

 教科用図書の検定は、申請図書の具体的な記述について、教科用図書検定基準等に従い、教科用図書検定調査審議会の調査審議に基づいて、検定の時点における客観的な学問的成果、適切な資料等に照らして記述の欠陥を指摘することを基本として実施しているものであり、申請図書における具体的な記述と切り離して、お尋ねについてお答えすることは困難である。