質問主意書

第187回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二六号

内閣参質一八七第二六号
  平成二十六年十月二十四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員荒井広幸君提出原子力損害賠償紛争解決センターによる死亡慰謝料の算定に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員荒井広幸君提出原子力損害賠償紛争解決センターによる死亡慰謝料の算定に関する再質問に対する答弁書

一について

 政府が当事者でない個別の民事訴訟について見解を述べることは差し控えたい。

二について

 原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第十八条第二項第一号に規定する原子力損害賠償紛争審査会の和解の仲介の手続(以下「和解仲介手続」という。)は、仲介委員(原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令(昭和五十四年政令第二百八十一号)第七条の二第二項に規定する仲介委員をいう。以下同じ。)が、中立・公正な立場から、申立人の個別具体的な事情に応じて判断するものであり、また、東京電力株式会社(以下「東電」という。)の福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の事故(以下「本件原発事故」という。)に係る生命・身体的損害を伴う精神的損害の額については、原子力損害賠償紛争審査会が同法第十八条第二項第二号の規定に基づき策定した指針において、「生命・身体の損害の程度等に従って個別に算定されるべきである。」とされており、御指摘の「原子力事故に伴う避難による死亡事案における死亡慰謝料の算定」についても、個別具体的な事情に応じて仲介委員が適正と判断した割合が採用されていると認識している。

三について

 お尋ねについては、先の答弁書(平成二十六年十月十日内閣参質一八七第一四号)十二についてでお答えしたとおり、原子力発電の安全確保の第一義的責任は事業者が負うべきであるという考え方が国際的な共通認識であると承知している。その上で、政府としては、本件原発事故の反省の上に立って、国がこれまで原子力政策を担ってきたことに伴う社会的責任については重く受け止め、万一事故が起きた場合には、原子力災害への迅速な対応や、被災者に対する支援、賠償等が円滑に行われるよう、関係法令に基づいて責任を持って対処していく。また、今後、安全の確保を最優先として、全ての関係者が安全性の追求に終わりはないとの姿勢で取り組んでいくことが重要と考えている。

四について

 和解仲介手続を実施するための組織として設けられた原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続は、平成二十六年十月六日現在で、和解仲介手続を終えた一万四百六十七件のうち八千五百九十五件で和解が成立するなど、その役割を果たしているものと考えており、引き続き、公平かつ適切な賠償が迅速に行えるよう取り組んでまいりたい。

五について

 お尋ねの「現在までに医師等の意見を聴取した」件数についての統計はなく、調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難であるが、和解仲介手続は、仲介委員が、中立・公正な立場から、申立人の個別具体的な事情に応じて判断するものであり、本件原発事故の影響の割合についても、個別具体的な事情に応じて仲介委員が適正と判断した割合が採用されていると認識している。

六について

 東電によれば、平成二十三年三月十一日以降の本件原発事故に関する①東電を被告とする損害賠償請求の訴訟件数、②①のうち訴訟の移送、和解の成立、判決、訴えの取下げ又は請求の放棄に至った既済件数及び③②に係る東電への訴状、控訴状又は上告状の送達日等から訴訟の移送、和解の成立、判決、訴えの取下げ又は請求の放棄までの所要期間の平均日数を最高裁判所、高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所ごとに区分して示すと、平成二十六年九月三十日現在で、最高裁判所については、①三件及び②零件、高等裁判所については、①五件(最高裁判所に上告された三件を含む。)、②五件(最高裁判所に上告された三件を含む。)及び③約百四十一日(地方裁判所及び簡易裁判所における所要期間は除く。)、地方裁判所については、①百八十六件(高等裁判所に控訴された五件を含む。)、②五十三件(高等裁判所に控訴された五件を含む。)及び③約三百九十八日(簡易裁判所における所要期間は除く。)、簡易裁判所については、①七件(地方裁判所に移送された二件を含む。)、②五件(地方裁判所に移送された二件を含む。)及び③約百八十九日とのことである。

七及び八について

 震災関連死(東日本大震災による負傷の悪化等による死亡事案で、市町村により、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和四十八年法律第八十二号)に基づく災害弔慰金の支給対象と認められたもの(災害弔慰金の支給を受けるべき遺族の不存在等によりその支給が行われていないものを含む。)をいう。)については、様々な要素が複合的に原因となっている場合があるものと考えられ、御指摘の「原発関連死」や「原子力事故に伴う避難による死亡事案」という区分をすることは困難であるが、被災者の方々の死亡と本件原発事故に伴う避難との間に相当因果関係が認められ、原子力損害の賠償の対象となる事案があると認識している。
 なお、平成二十四年八月二十一日に復興庁が公表した「東日本大震災における震災関連死に関する報告」においては、「福島県は他県に比べ、震災関連死の死者数が多く、また、その内訳は、「避難所等への移動中の肉体・精神的疲労」が三百八十人と、岩手県、宮城県に比べ多い。これは、原子力発電所事故に伴う避難等による影響が大きいと考えられる。」としているところである。