質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八三号

九電川内原発を始めとした我が国の運転停止中の原発再稼働に係る「安全」及び原発事故発生後における政府の「責任」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十一月十七日

山本 太郎   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   九電川内原発を始めとした我が国の運転停止中の原発再稼働に係る「安全」及び原発事故発生後における政府の「責任」に関する質問主意書

 九州電力株式会社川内原子力発電所(以下「九電川内原発」という。)一号機及び二号機については、原子力規制委員会(以下「規制委」という。)による実用発電用原子炉及びその付属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年六月二十八日原子力規制委員会規則第五号)等(以下「新規制基準」という。)に係る適合性審査によって、平成二十六年九月十日、新規制基準に適合すると認められ原子炉設置変更許可が行われたが、規制委の田中俊一委員長は、平成二十六年七月十六日の記者会見等で述べているように、九電川内原発一、二号機が再稼働の前提となる審査について「安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということです。基準の適合性は見ていますけれども、安全だということは私は申し上げませんということをいつも、国会でも何回も答えてきたところです。」(以下「委員長発言」という。)などと、適合性審査は必ずしも原子力発電所(以下「原発」という。)の安全性を担保するものではないとの認識を再三明言している。
 一方、安倍政権は平成二十六年四月十一日に閣議決定した「エネルギー基本計画」において、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」とし、さらに規制委が九電川内原発の安全対策が新規制基準を満たすとする審査書案を公表した平成二十六年七月十六日、菅義偉官房長官は記者会見において、「規制委が原発の安全性については責任を持ってチェックするわけであるから、その専門的判断に委ねている。個々の再稼働についてはこの新規制基準に適合すると認められた場合、原子炉等規制法に基づいて事業者の判断で決めることだ。規制委は政府の独立した組織であり、そこで安全であることの判断を下すわけであるから、きわめて重い責任がある。政府としては安全に責任を持つということだ。」(以下「官房長官記者会見発言」という。)などと述べた。
 さらに、小渕優子経済産業大臣(当時)は平成二十六年九月十二日、伊藤祐一郎鹿児島県知事に宛てた「九州電力株式会社川内原子力発電所の再稼働へ向けた政府の方針について」(以下「小渕大臣通達」という。)で、「万が一事故が起きた場合には、政府は、関係法令に基づき、責任をもって対処いたします。」、「実際の再稼働は、今後、原子力規制委員会によって、工事計画認可など所要の法令上の手続きが進められた上で行われる。さらに、再稼働後についても、政府は、関係法令に基づき、責任をもって対処する。」と記している。
 また、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)(以下「原賠法」という。)第三条第一項においては、「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない。」とされている。
 これらの事実及び法律等を踏まえて、九電川内原発を始めとした我が国の運転停止中の原発再稼働に係る「安全」及び原発事故発生時における政府の「責任」について政府の認識を明確に示されたく、以下質問する。
 なお以下の質問は、現在運転停止中の原発が再稼働した後の事故を想定した、あくまで仮定に基づいた質問も含まれているが、それを理由に、政府として答弁することは困難であるなどとして明確な答弁を回避することは、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東電福島原発」という。)事故を経験し、世論調査においても国民の過半数が原発再稼働に反対している現状でありながら、原発を国策として再稼働させようとしている政府の対応として、甚だ責任感を欠くものと判断せざるを得ない。国民への政府の説明責任を全うする意味においても、この点を十分に留意し、各質問項目ごと個別に、誠実な答弁を求めたい。

一 第一次安倍内閣は、全電源喪失による炉心溶融を始めとした原発過酷事故発生の可能性とその対策について問うた、吉井英勝衆議院議員の平成十八年十二月十三日提出「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」(第百六十五回国会質問第二五六号)(以下「同質問主意書」という。)に対する答弁書(内閣衆質一六五第二五六号)(以下「同答弁書」という。)の一の3についてで「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない。」とし、続くスウェーデンのフォルスマルク発電所一号炉における発電機トラブルに関する質問に対しては、同答弁書一の5についてで「我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない。」、次いで大規模地震によって原発が停止した場合の電源喪失による機器冷却系停止、崩壊熱が除去出来ないことによる核燃料棒焼損(バーン・アウト)の可能性、その場合の原発事故がどのような規模の事故になるのかについて、どういう評価を行っているかとの質問に対しては、同答弁書一の7についてで「経済産業省としては、お尋ねの評価は行っておらず、原子炉の冷却ができない事態が生じないように安全の確保に万全を期しているところである。」などとしている。
 同質問主意書によって、このように原発過酷事故を予見した指摘がなされていたにもかかわらず、東電福島原発においては、これらの指摘に対する具体的対策が取られなかった後に、東日本大震災により全電源喪失による炉心溶融という過酷事故が実際に発生してしまったわけであるが、東電福島原発事故に関して、同答弁書を閣議決定した当時の第一次安倍内閣に負うべき責任はあるか、その責任の有無について、当時と首相を同じくしている第二次安倍内閣の現在の見解を明確に示されたい。

二 九電川内原発については、九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(一号及び二号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書案(原子炉等規制法第四十三条の三の六第一項第二号(技術的能力に係るもの)、第三号及び第四号関連)に対する科学的・技術的意見(以下「パブリック・コメント」という。)あるいは規制委員以外の専門家等から地震や火山噴火等により引き起こされる深刻な事態や過酷事故の可能性、事故発生時における住民避難対策の不備や非現実性等が指摘されているが、政府としてこれらの指摘があることを十分に把握しているか。政府の認識を明確に示されたい。
 加えて、新規制基準に適合した原発に関して、パブリック・コメントや規制委員以外の専門家等によって、地震、津波や火山噴火等の天災地変あるいはテロ等の社会的動乱による当該原発の過酷事故発生の危険性が指摘され、かつ政府がその指摘を把握していた場合において、そのパブリック・コメントや専門家等の指摘どおりの深刻な事態や過酷事故が実際に発生した際に、「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」とした政府が、当該原発の過酷事故に対して負うべき責任の有無について、政府の認識を明確に示されたい。

三 新規制基準については「世界で最も厳しい水準の規制基準」との解釈がエネルギー基本計画において示され、安倍首相始め菅官房長官からも度々この解釈で説明されているが、この「世界で最も厳しい水準の規制基準」との表現は極めて抽象的で理解しにくい。平成二十六年十月二十一日の参議院内閣委員会(以下「内閣委員会」という。)において、私の「世界の規制基準にはなくて日本の新規制基準にあるもの」、「これぞ世界最高だと言える部分」について説明を求めた質問に対して、竹内大二原子力規制庁原子力安全技術総括官より「世界的に原子力の規制はIAEA等で基準等を作られてございますが、日本の新規制基準におきましては、例えば非常用電源について申し上げますと、一定期間の外部電源喪失や全交流電源喪失に耐えられる備えをしているという点では、米国やフランスの三日程度ということに対しまして、日本では七日間としているなど、具体的な要求が強いものがございます。」、「そのほかにつきましても、例えばバックフィットの基準について、日本ではバックフィットを既設炉に対しても適用するというようなところも同等以上の水準であるというふうに考えております。また、地震や津波に対しましても、想定の方法というものが同等以上であるというふうに考えております。」との答弁があったが、この答弁では我が国の新規制基準が「世界で最も厳しい水準の規制基準」であるとの説明がなされたとは言えない。「世界で最も厳しい水準」とはいかなる定義によるものであるのか、政府の認識を改めて具体的根拠とともに示されたい。加えて、「世界の規制基準にはなくて日本の新規制基準にある」装備や対策に関する具体的要求が、前記答弁によって例示されたもの以外にも存在するのであれば、具体的に全て示されたい。

四 前記三に関して、内閣委員会で私の「今回規制委員会が作った新規制基準、世界で最も厳しい基準と言えますか。」との質問に対して、田中委員長より「正確に申し上げますと、世界で最も厳しい基準とは言っていなくて、最も厳しいレベルの基準と言っているんです。ですから、そこのところは間違えないようにしていただきたいと思います。」との答弁があり、新規制基準は「(世界で)最も厳しいレベルの基準」であって、「世界で最も厳しい基準」ではないとの認識が示された。政府においても田中委員長の認識と同じく、新規制基準は世界で最も厳しい基準ではないとの認識か、明確に示されたい。

五 「規制委による新規制基準に基づいた審査に適合した原発」と「世界最高水準の安全が確認された原発」は同義との理解でよいか、政府の認識を明確に示されたい。

六 田中委員長自身が「(新規制基準の適合性審査は行ったが)安全だということは私は申し上げません」と述べているにもかかわらず、安倍首相始め菅官房長官等からは、「世界最高水準の安全」との言葉が度々発信されている。すなわち原発の「安全」については、規制委が「安全」との判断を下したのではなく、安倍政権が「安全」との判断を下したという解釈をせざるを得ないが、その理解でよいか、政府の見解を明確に示されたい。

七 菅官房長官は官房長官記者会見発言と同時に、「とにかく現状においては安全第一の中で審査を終えた原発については再稼働させるという方針については変わりない」とも述べている。つまり「再稼働させる」と政府として方針を明言しているのであるから、再稼働の判断は政府の判断に他ならず、「事業者の判断で決めること」との菅官房長官の発言は、同一の会見の中において明らかに矛盾していると言わざるを得ない。この菅官房長官の発言の矛盾について、政府の見解を明確に示されたい。

八 官房長官記者会見発言における「安全」の定義と「責任」の範囲は極めて不明確である。この「安全」とは、「政府が再稼働させるとした原発は過酷事故を百パーセント起こさない安全な原発である」との意味であると理解してよいか。菅官房長官の述べた「安全」の意味と定義を具体的かつ明確に示されたい。また、菅官房長官の述べた「責任」とは具体的に何を指すのか。その政府が持つとする「責任」の内容とその範囲を、法的根拠とともに具体的かつ明確に示されたい。

九 小渕大臣通達には、「万が一事故が起きた場合には、政府は、関係法令に基づき、責任をもって対処いたします。」とあるが、この「関係法令」を全て具体的に示すとともに、万が一事故が起きた場合に政府が持つとする責任の内容とその範囲を、具体的かつ明確に示されたい。

十 朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という。)の「労働新聞」二〇一三年四月十日付けには、「日本には数多くの米軍核基地と原子力関連施設、軍事施設が至る所にあ」り、北朝鮮の攻撃を受ければ「日本は一九四〇年代に被った核の惨禍とは比べものにならない途方もない災難を被ることは避けられない」と書かれている。北朝鮮のミサイル問題については、平成十四年十一月五日の衆議院安全保障委員会において石破茂防衛庁長官(当時)が「通常弾頭でも、例えて言うと、日本海側にはずらっと原発が並んでいるわけです。そこへ落ちたらどうなるのということ、これは現在のところ安全だということになっています。そして、まずそういうことについては私どもはきちんとした責任を持たねばならない、国民に対する当然のことであります。しかし、そのことに対する恐怖感だけでもこれは大きなことがございまして、そこら辺をどうしていくのか、我が方の備えを、本当に政府としてそういうような不安をかりそめにも住民の方々に与えないということも必要でありますが、通常弾頭でも十分に脅威となり得るだろうというふうに思っております。(中略)誤解を招くといけませんが、原発の問題は、私どもとしてはそれが落ちてもきちんとした対応ができるという態勢でおることには変わりはございません。」と述べている。一方、平成十七年三月三十一日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会において、三代真彰資源エネルギー庁原子力安全・保安院次長は「弾道ミサイルなどに関して、設計面で完全な対策を講じることは不可能でございます。」とし、また、平成二十五年四月十五日衆議院予算委員会第一分科会において、徳地秀士防衛省防衛政策局長はPAC3を「原子力発電所の近傍に配備をするといったような計画は、現在、持ち合わせてはおりません。」と述べている。
 これらの発言を鑑みると、我が国の原発は他国から弾道ミサイル攻撃等を受けた場合を想定して、いかなる対策が講じられているのか、政府によって安全が担保されているのかが、極めて不明確であると言わざるを得ない。安倍首相は常々「我が国を取り巻く安全保障環境はますます厳しさを増している」と述べているが、政府として、原発に対する他国からの弾道ミサイル攻撃等について、前記の石破茂防衛庁長官(当時)の認識のごとく「通常弾頭でも十分に脅威となり得る」、実際に起こり得る脅威としての認識はあるか、安倍内閣の認識を示されたい。また、これらの事態を想定している場合、講じている対策を具体的に全て列挙されたい。加えて、石破茂防衛庁長官(当時)は「きちんとした責任をもたねばならない」と述べているが、安倍内閣としてはいかなる責任を持つべきと認識しているか。その責任の内容と範囲について、法的根拠とともに具体的に全て列挙し示されたい。
 また、他国からの弾道ミサイル攻撃等によって甚大な原子力損害が生じた場合、原賠法によれば、社会的動乱によりもたらされた原子力損害に相当し、その当該原子炉の運転等に係る原子力事業者には、その損害に対する賠償責任は問われないとの見解もある。他国からのミサイル攻撃等による原子力損害が生じた場合、生じた損害の賠償責任については政府が全て負うことになるのか。政府の認識を明確に示されたい。

十一 平成二十五年六月十八日の参議院経済産業委員会において、はたともこ参議院議員の「原発に対する弾道ミサイル等の攻撃への対策は炉規法に基づく新規制基準では求められていないことは十分承知をしておりますが、原発には、政府も想定し対策もある弾道ミサイル等の攻撃というリスクがあるという認識が規制委員会にはおありになりますでしょうか」という質問に対して、原子力規制庁は「こういった攻撃につきましては、原子力の規制によって対処すべき性質のものではないということが我々の考え方だということで御理解いただければと思います」と答弁した。弾道ミサイル等の攻撃は、新規制基準の対象外である、ということについて、改めて政府の見解を明らかにされたい。

十二 政府は、原発には弾道ミサイル等による攻撃のリスクがあると規制委が認識していると考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。

十三 規制委が策定する「原子力災害対策指針」は原発への弾道ミサイル攻撃等も想定して策定したものか、政府の見解を明らかにされたい。また、原発への弾道ミサイル等の攻撃による原子力災害にも適用することができるものなのか、政府の見解を明らかにされたい。

十四 前記十一に関して、はたともこ参議院議員の「原発に弾道ミサイル攻撃があった場合、原子力規制委員会はどのような行動を取るのかを説明をしてください」との質問に対して、原子力規制庁は「具体的に申し上げますと、原子力規制委員会には、武力攻撃災害が発生し、また発生するおそれがある場合においては、緊急の必要があると認めるときは原子力施設の使用停止を命ずることができるといった権限が与えられているところでありますが、現実の要するにこういった事態の発生の際につきましては、大きな考え方、イメージとしましては、原子力災害発生時とほぼ同様の対応を取られるものと承知しております。つまり、現実の発災の際には、事業者が行います被害局限化のための措置に関して技術的な支援を全面的に行うことが一つ。それからオフサイトにおける住民の防護のための措置、これにつきましても、もう既に原子力災害対策指針で示しておるところでございますが、ほぼ同じ考え方で、規制委員会は各都道府県とも協力しながら所要の措置を講じていくといったようなイメージなのかと思います」と答弁した。改めて、原発に対する弾道ミサイル攻撃による原子力災害発災時における規制委の役割について、政府の見解を明らかにされたい。

十五 九電川内原発に対する弾道ミサイル攻撃による原子力災害が発生した場合の住民の避難計画・防災計画の策定の責任者は誰か。また、当該計画は策定されているのか、明らかにされたい。

十六 鹿児島県では、九電川内原発への弾道ミサイル攻撃に対する国民保護計画、住民の避難計画及び防災計画は策定されているか。また、国は当該計画策定に関してどのような支援をしたのか、具体的に示されたい。

十七 平成二十五年六月二十日の参議院経済産業委員会において、はたともこ参議院議員の「原発に対して弾道ミサイル等による武力攻撃が発生した場合、電気事業者としてどのように対処し、行動するのか」との質問に対して、電気事業連合会会長八木誠参考人は「具体的には、当然のことながら、そういう緊急事態が想定した場合、あるいは実際認定された場合には、対策本部をきちっとつくって体制を確立して対応するというのが基本でございますが、具体的なプラントの処置については、こういう災害、例えば弾道ミサイルの攻撃情報があった段階においては、これは国の例えば原子力規制委員会等々からの御指示等によってプラントを直ちに止める操作に入ると。これ、万が一それが緊急で間に合わないというような場合には、事業者自らがプラントを直ちに停止をするということを定めてございます。そういう意味で、プラントの停止に当たっては、安全の確保、それから関係機関との連携を密にして、また国とも緊密な連携を取りながら実施をするということを定めておりますので、そういう対応になると思います。ただ、万が一着弾してしまった場合には、これは事態の状況を把握して、被害の損壊状況に応じた災害対応措置をとっていくということになろうかと思います。」と述べた。九州電力は、九電川内原発に対する弾道ミサイル攻撃による原子力災害に対する国民保護計画は策定しているのか。また、政府は九州電力に対して支援をしたのか、具体的に示されたい。

十八 平成二十五年十二月五日、私が提出した「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故により放出された放射性セシウム以外の放射性核種に関する質問主意書」(第百八十五回国会質問第八九号)に対する答弁書(内閣参質一八五第八九号)の二及び四についてで「お尋ねの住民の健康調査の必要性については、放射性物質が降下したかどうかや放射性ヨウ素による初期被ばく防護に関する対策が万全かどうかではなく、被ばくした線量を踏まえた医学的な評価に基づいて決定すべきものと認識している。」とされ、また、平成二十六年度原子力総合防災訓練に用いられる運びの「原子力災害対策マニュアル」においては、「ERCチーム住民安全班は、現地住民安全班及び都道府県の災害対策本部を通じて、PAZ内の地方公共団体に対し、指示内容を緊急時モニタリング情報、予測を含めた気象情報及び大気中放射性物質拡散予測等と併せて伝達する。」との記載が、「ERCチーム住民安全班は、現地住民安全班及び都道府県の災害対策本部を通じて、PAZ内の地方公共団体に対し、指示内容及び緊急時モニタリング情報等を伝達する。」と改められ、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)による予測値等は活用せず、モニタリングポスト等の放射線空間線量率の実測値等をもって住民避難誘導を行う方針に改められることとなった。さらに、内閣委員会で、私の「せめてこのPPA対策、広い距離で、実際に二〇一一年の事故が起こった後、雲が通ったというその距離を担保していただきたいんですよね。距離は決めないとか、それ曖昧にしているだけじゃないですか。おおむね五十キロでもなく、距離を決めないのでもなく、実際に二〇一一年のものを反映してくださいますか。」との放射性プルーム防護策に関する質問に対して、田中委員長から「PPA対策については、あの福島事故のときには十分な対策が取られなかったということは御指摘のとおりです。ですから、それを踏まえまして、いわゆるシミュレーション、SPEEDIのようなシミュレーションではとてもそういうことはできませんので、モニタリング体制をきちっと整えて、そのモニタリングデータに基づいて判断をすることにしております。」との答弁があった。
 これらの政府見解や原子力防災対策に関する方針の改訂及び田中委員長の発言等より、実際発生してしまった東電福島原発事故に関しても、また、将来の原発事故を想定した事故後対策に関しても、政府は、SPEEDI等による放射性物質の拡散予測を用いた被ばく防護策によって住民の被ばくを未然に防ぐ対策を講じる必要はなく、放射性物質が大気中を拡散し地表に降下した後の結果において実測されるモニタリングデータ及び実測された被ばく線量に基づいて、住民の避難対策や健康調査対策を講じることでよいとの認識を持っていることが明らかになった。こうした認識によって空間線量率の上昇を確認後初めて住民の避難誘導が実施されることとなり、住民を被ばくする環境に一定期間留め置くという、まさに後手後手の対策が講じられるおそれがあると言わざるを得ない。また、田中委員長自らも認めている、東電福島原発事故における「十分な対策が取られなかった」ことからの教訓がいかされているとは到底考えられない方針転換である。これらを踏まえると、政府は、原発事故が発生した場合には当該原発近隣住民のある程度の被ばくはやむを得ない、との認識を持っているものと理解せざるを得ないが、その理解でよいか。政府の認識を明確に示されたい。

十九 前記十八に関して、今後我が国において原発事故を始めとする原子力災害が再び発生した場合も、これまで政府が東電福島原発事故後に行ってきた対応と同様、原子力災害を起こした当該原子力施設近隣住民の被ばく線量調査や健康調査に関しては、政府主体で行うものではなく、当該原子力施設の立地する自治体又はその近接する各自治体が主体となって行うべきものであって、官房長官記者会見発言及び小渕大臣通達にある「責任」の範囲内には含まれない、との理解でよいか。仮定に基づいた質問ではあるが、再稼働後の原発において、「原発事故は百パーセント起こり得ない」と断言できない以上、国民の安全に責任を持つべき政府として、国民に十分説明すべき最重要事項であると考えるため、政府の認識を誠意をもって明確に示されたい。

二十 平成二十五年十月十五日の第百八十五回国会(臨時会)において安倍首相は所信表明演説の際に、東電福島原発の廃炉・汚染水対策に関して、「東京電力任せにすることなく、国が前面に立って責任を果たしてまいります」と発言した。この「国が前面に立って責任を果たす」との言葉は度々政府から発信されているが、東電福島原発事故後、東電福島原発事故現場及び福島県における東電福島原発事故に関連した事業のうち、政府が前面に立って責任を持って行っている事業を、具体的名称とともに、全て列挙されたい。

  右質問する。