質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三四号

米国議会がTPA法案を通じてTPP協定への反映を目指す事項と我が国国内への影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十月二十日

徳永 エリ   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   米国議会がTPA法案を通じてTPP協定への反映を目指す事項と我が国国内への影響に関する質問主意書

 TPP協定交渉が各国政府となされている。そのなか主要な交渉相手国である米国政府とは、様々な協議が行われていると承知している。
 しかし、米国国内の事情をみると、そもそも外交交渉の権限は、米国議会に委ねられており、これまでも米国政府は、外交交渉を円滑に進めるため、外交権限を一時的に行政府に委任するTPA(貿易促進権限、Trade Promotion Authority)の取得に努めてきた。
 そのような中で今回のTPP交渉に際して提出されたTPA法(通商優先事項法、Trade Priority Act)案の特性は、言わば議会の政府に対するTPP協定への注文書とも呼べるものであるが、米国政府としては、当然その実現に全力を挙げて取り組んでくると思われる。しかし、その内容は、我が国にとって問題となる条項が多く散見され、交渉の結果、TPP協定に反映された場合には、我が国への影響が看過できないほど重大なものになると推測される。
 右を踏まえ、以下質問する。

一 今次のTPA法案中には「通貨操作禁止条項の義務化」が含まれていると仄聞するが、政府がその事実を把握しているのか明らかにされたい。また、同法案で指摘する通貨操作とはどのようなものを指し、日本銀行等が、これまで実施してきた外国為替に関する諸施策等が、米国政府あるいは議会から通貨操作と指摘される懸念はないのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 米国議会は、特定国との貿易バランスが米国にとって不利となっている場合に、通貨操作により輸出競争力をつけたものと同議会が判断すれば、TPPが与える当該国への有利な待遇を停止することを明文化した条項を作成するよう要求していると聞いている。我が国との一連の交渉の中でこのような事項が提起された事実があるか、明らかにされたい。

三 米国のWTO協定における対応と同様に、TPP協定の受入れについては、米国の国内法・制度に抵触しないよう求められ、米国各州の判断に依らなければTPP協定参加国は、それぞれの州におけるTPP参加の利益を享受することができないと聞く。我が国が同協定への参加により、全ての義務の履行を求められることに比べれば、著しく均衡を欠くことは明らかである。そこで、このような米国の要求が、これまでの交渉において我が国に対し提起されたか否か明らかにされたい。また、これまで交渉で取り上げられたことがなくとも、このような米国議会の要求が、米国政府になされたか否か、政府の承知するところを明らかにされたい。

四 前記三の「米国の国内法・制度に抵触しない」に関して、フロマン米国通商代表部(USTR)代表が「TPPによって、バイ・アメリカン条項が影響を受けることはない」との趣旨を米国議会に対し言明したとの報道を承知している。「バイ・アメリカン条項」は、米国市場の制限を強化するものとして、これまでもWTO等で問題となったものだが、「米国の国内法・制度に抵触しない」との要求は、我が国がTPP協定交渉参加を決断する上で重要なメリットと説明された米国市場の開放が、実現できないことを意味するものと考えられる。このように交渉開始以前に想定されたTPP協定実現による利益が、全く達成できない状況に至った場合には、交渉からの撤退も含めた断固たる対応をとる考えはあるのか、政府の見解を明らかにされたい。

五 オークランド大学法学部のケルシー教授(Prof.JaneKelsey)は、米国議会がTPPに「承認(Certification)」条項を求めていると指摘している。いわゆる「Certification」は、米国が結んだこれまでのFTAでも散見されるが、FTA相手国の立法に際し、事前に米国国内法に抵触しないかを確認する行為であり、特に米国に影響があると懸念されるものについては、司法長官の「Certification」を必要とするものであると承知している。その際、司法長官の承認が得られなければ当該国の法律を修正する必要が生じると聞くが、これが実現されれば我が国立法権の重大な侵害であると考えられる。かかる懸念に基づき、これまでの米国との協議においてこのような条項が提起されたか否か明らかにされたい。

  右質問する。