質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三〇号

政府の憲法と自衛権の関係の公定解釈に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十月二十日

浜田 和幸   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   政府の憲法と自衛権の関係の公定解釈に関する質問主意書

 政府の憲法と自衛権の関係の公定解釈は、防衛省・自衛隊のホームページに示されるように、「日本国憲法は、第九条に戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関する規定を置いています。もとより、わが国が独立国である以上、この規定は、主権国家としての固有の自衛権を否定するものではありません。政府は、このようにわが国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上認められる」である。
 右の点を踏まえて、以下質問する。

一 政府は日本が「主権国家としての固有の自衛権」を保持していると解釈しているが、放棄することのできない固有の権利があるとすれば、憲法学上の通説でもある、個人の人権に関するもののみであると思われる。日本国憲法の崇高な目的は、自然法思想を淵源として、全ての国民の基本的人権を保障することである。これを担保するために統治機構に関する規定も設けられていると見るべきである。
 学説上も、国家の権利、義務は国際法上の問題として位置付けられており、他国との協定、協議の中で確認されるべきもので、必ずしも固有のものではない。主権の不可侵は国際法における慣習で認められているものの、自衛権の内容については各国に差異があり、必ずしも固有であるとは言い切れない。これについては、憲法学者の東京大学名誉教授の樋口陽一氏などが政府見解について繰り返し批判している。
 政府はどのような根拠に基づいて「主権国家としての固有の自衛権」があると主張するのか。また、その内容について、政府の見解を示されたい。

二 外敵の攻撃から我が国の国民の生命、財産を守ることは政府の責務であると考えるが、それが日本国憲法の規定にかかわらず、日本が固有の自衛権を保持していることを必ずしも根拠付けるものではない。現行の日本国憲法が条文中に自衛権に関する規定を持たないのは、学説や通説がいうように、憲法制定当時、自衛権の行使を含めて武力の行使を放棄したからと考えるべきである。
 他方、政府の責務として、外敵の攻撃から国民の生命、財産を守るべきであることは否定しないが、この行為は、「主権国家としての固有の自衛権」に由来するのではなく、自衛隊法第七十六条でいう「防衛出動」で定義されるように、法の定めるところにより内閣総理大臣が自衛隊に防衛出動を命じ、国会の承認を得ることで、国民を代表する国権の最高機関である国会が政府に対して自衛権の行使の権限を授権していると見るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。固有の自衛権という根拠付けではなく、国民主権の見地に立ち、国民の総意に由来し、国民の代表機関である国会の意思として、政府に対して自衛権の行使の権限を授権していると見るべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。