質問主意書

第187回国会(臨時会)

質問主意書


質問第二八号

土砂災害防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十六年十月十七日

江口 克彦   


       参議院議長 山崎 正昭 殿



   土砂災害防止対策に関する質問主意書

 昨年の伊豆大島における土砂災害に引き続き、平成二十六年八月には広島で豪雨による土砂災害が発生し、死者七十四名にも上った。これらの土砂災害が発生した場所においては、避難勧告の遅れや土砂災害危険箇所の土砂災害警戒区域等への指定の遅れなどの問題点が指摘されている。
 平成十一年六月豪雨の際の広島市における土砂災害をきっかけに、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下「土砂災害防止法」という。)が制定され、政府は、同法改正案を今国会に提出しているが、それだけでは十分とは言い難い。
 国民の生命・財産を守るため、政府は地域の自然災害の特性を踏まえたまちづくりを推進するとともに、住民に土地の危険性を正しく理解していただくよう努めるべきである。右の点を踏まえて、今後の土砂災害対策の在り方等について、以下質問する。

一 法施行から十三年以上経過するにもかかわらず、土砂災害危険箇所のおよそ三割では、土砂災害防止法第四条に定められる基礎調査がいまだ一度も行われていない。政府の提出している土砂災害防止法改正案では、都道府県に対し基礎調査の結果を公表することを義務付けているが、そのためには、土砂災害防止法に定められている都道府県による基礎調査の実施を確実なものとする必要がある。基礎調査の実施促進に向けた具体策について明らかにされたい。
 また、土砂災害警戒区域に指定されても土砂災害ハザードマップ等の印刷物を配布している市町村は約半数にとどまるとされているが、市町村による土砂災害ハザードマップ等の印刷物の作成及び配布の促進に向けた具体策について明らかにされたい。

二 土砂災害ハザードマップをはじめとする各種のハザードマップが、今後のまちづくりにおいても十分に活用されていく必要がある。特に、人口減少社会の進展とともに、集約都市(コンパクトシティ)を形成していくに当たっては、自然災害の発生するような場所に、人口を集中させず、自然災害を極力回避できるようなまちづくりを進めていく必要があると考える。
 国土交通省による集約都市形成支援事業の実施に当たっては、防災的観点を踏まえた支援体制も確立していくべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 平成二十六年十月六日、平成二十六年台風第十八号によって、静岡市の由比地区で地すべりが発生し、JR東海道線や国道一号などが不通となり、物流や人流の大きな障害となった。
 同地区のうち、地すべり等防止法に基づく「地すべり防止区域」に指定された箇所については、直轄で地すべり対策が行われているが、今回被災した箇所については、「地すべり防止区域」に指定されていなかったと報じられている。今回の被災箇所が「地すべり防止区域」に指定されていなかった理由について明らかにされたい。また、今回の土砂災害を受けて、「地すべり防止区域」の指定基準の見直しを検討しているか明らかにされたい。加えて、今後の由比地区における土砂災害防止対策について示されたい。

四 「土砂災害危険箇所」は、「土石流危険渓流」、「急傾斜地崩壊危険箇所」及び「地すべり危険箇所」からなっている。このうち地すべり危険箇所については、法指定による「地すべり防止区域」となっているものもあるが、その指定基準は、面積とともに、鉄道、道路等の重要な公共施設の存在が要件として定められている。しかし、土石流危険渓流及び急傾斜地崩壊危険箇所については、鉄道や道路の存在は指定要件とはされていない。
 今回の由比地区で発生した土砂災害に見られるように、土砂災害によって主要な鉄道や道路が寸断されると、非常に大きな影響が生じることから、鉄道や道路が寸断しないようハードの土砂災害対策を推進していくため、土石流危険渓流及び急傾斜地崩壊危険箇所についても、鉄道や道路の存在を指定要件とするよう改めるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。