質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八七号

内閣参質一八六第一八七号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出居所不明児童対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出居所不明児童対策に関する質問に対する答弁書

一について

 養育支援を特に必要としている児童を把握し、適切な支援につなげていくためには、訪問により直接家庭等に出向いて行う取組は重要であり、現在、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号。以下「法」という。)第二十一条の十の二の規定に基づき、乳児のいる家庭を訪問する乳児家庭全戸訪問事業及び同事業等で発見した支援の必要な家庭に対して保健師等が継続して訪問支援を行う養育支援訪問事業を行っているところである。
 訪問に当たっては、養育についての相談及び助言等を行うほか、保護者の心身の状況及び養育環境の把握に努めることとしており、必要に応じて、法第二十五条の二に規定する要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」という。)を通じて児童に関わる関係機関との情報共有を行い、様々な支援につなげることとしている。
 また、訪問により、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には、速やかに市区町村又は児童相談所に児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)第六条の規定に基づく通告を行い、市区町村又は児童相談所は、同法第八条の規定に基づく児童の安全の確認を行うための措置を講ずることとされ、特に児童相談所においては、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、同法第八条の二及び第九条の規定に基づく保護者に対する出頭要求や居宅への立入調査等を実施することができるとされている。
 政府としては、様々な機会を捉えて、これらの取組が着実に実施され、虐待の早期発見と適切な支援が図られるよう地方公共団体に対して周知、徹底を図ってまいりたい。

二について

 要対協については、児童に関わる関係機関の情報共有と密接な連携により、要保護児童の早期発見や適切な保護を図るために重要であることから、児童虐待の防止等に関する法律及び児童福祉法の一部を改正する法律(平成十九年法律第七十三号)による改正後の法第二十五条の二第一項の規定により、その設置を地方公共団体の努力義務としたところである。これにより、平成二十四年四月一日現在で、全市区町村のうち約九十八・四パーセントで要対協が設置されていることから、御指摘の「明確に義務付ける」ことまでは考えていない。
 また、要対協の機能向上を図るため、要対協の実務担当職員等の専門性の強化等のための研修や、要対協の支援対象者の判断に資するように、要対協を積極的に活用している全国の事例を取りまとめた事例集の作成及び配布等を行っているところであり、今後とも、このような取組を進めてまいりたい。

三について

 居所不明の児童生徒の所在の把握については、「義務教育諸学校における居所不明の児童生徒の把握等のための対応について」(平成二十五年三月一日付け二十四初初企第六十八号文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課長通知)において、市区町村教育委員会に対し、住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第三十四条に基づく市区町村長による居住実態についての定期的な調査等への協力を積極的に行うことなどを求めているところである。なお、御指摘の「厚木男児遺棄致死事件」の児童は、「一年以上所在不明」として学齢簿の別簿に記載されていたものと承知している。
 また、御指摘の「明確なガイドライン」の意味するところが必ずしも明らかでないが、学齢簿に記載されている情報を含め、児童に関わる関係機関が必要な情報共有を迅速に行い、居所不明児童生徒の所在把握の取組にいかすことは重要であると認識しており、同通知において、学校及び教育委員会に対し、児童福祉関係機関との情報共有や要対協における日常的な情報交換等を求めているところである。

四について

 医療機関は、診療の機会を通じて、養育支援を特に必要とする児童や児童虐待を把握しやすい立場にあるため、児童虐待の早期発見・早期対応のために重要な役割を果たすものであると考えている。このため、政府としては、地域の医療機関における児童虐待症例への対応力の向上を図るため、平成二十四年度から都道府県等において地域の中核となる医療機関を中心としたネットワークの構築のための事業を実施するとともに、平成二十六年三月には、都道府県等及び医療機関の参考となるよう、同事業の推進に際した留意事項等を示した手引を策定し、都道府県等に提供したところである。今後とも、これらの取組の周知、徹底を図り、市区町村及び児童相談所と医療機関との連携を推進し、児童虐待の早期発見・早期対応に努めてまいりたい。