質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八一号

内閣参質一八六第一八一号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員大久保勉君提出日本版スチュワードシップ・コードに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大久保勉君提出日本版スチュワードシップ・コードに関する質問に対する答弁書

一について

 日本版スチュワードシップ・コード(以下「日本版コード」という。)は、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレイン(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明するか)の手法を採用している。すなわち、日本版コードの原則の中に、自らの個別事情に照らして実施することが適切でないと考える原則があれば、それを実施しない理由を十分に説明することにより、一部の原則を実施しないことも想定している。ただし、機関投資家が当該説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、顧客・受益者の理解が十分に得られるよう工夫すべきであるとしている。

二について

 日本版コードは、その趣旨に賛同しこれを受け入れる用意がある機関投資家に対して、その旨を公表することとともに、日本版コードを踏まえて行動することを期待するものである。したがって、日本版コードを受け入れるか否かについては、各機関投資家が自らの置かれた状況等を踏まえ、適切に判断することが重要であると考えている。
 また、お尋ねの「上場株式の時価千億円以上を保有する政府機関を挙げ、日本版コードの受入れ状況をそれぞれ明らか」にすることについては、「政府機関」とは具体的に何を指すのかが必ずしも明らかではないことなどから、お答えすることは困難である。
 なお、平成二十六年五月三十日までに日本版コードの受入れを表明した機関投資家には、独立行政法人としては、年金積立金管理運用独立行政法人が含まれているほか、いわゆる公務員年金としては、国家公務員共済組合連合会など六の公務員年金が含まれている。

三について

 日本銀行が保有する株式の平成二十六年三月末時点における簿価総額及び時価総額は、それぞれ、簿価総額が約一兆三千五百十五億円及び時価総額が約二兆二千八百八十四億円であると承知している。なお、当座勘定取引の相手方である金融機関が発行する株式は、買入れ対象としていないと承知している。
 預金保険機構が保有する金融機関(銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第一項に規定する銀行及び同条第十三項に規定する銀行持株会社をいう。以下三についてにおいて同じ。)の上場株式の同月末時点における簿価総額及び時価総額は、それぞれ、簿価総額が約五千八百三十四億円及び時価総額が約二千二百四十七億円であると承知している。
 銀行等保有株式取得機構(以下「株式取得機構」という。)が保有する金融機関の株式の同月末時点における簿価総額及び時価総額は、それぞれ、簿価総額が約二千三百七十九億円及び時価総額が約二千五百二十三億円であると承知している。

四及び六について

 日本銀行、預金保険機構及び株式取得機構(以下「日本銀行等」という。)から運用を委託されている金融機関が日本版コードの受入れを表明しているからといって、日本銀行等が日本版コードを受け入れたことにはならないと考えている。
 また、日本版コードは、その受入れを表明した機関投資家の行動について記載したものであり、受入れを表明しない主体の行動については記載しておらず、日本銀行等自身が日本版コードの受入れを表明しない場合に、「運用の委託について、日本版コードを受け入れない他の金融機関に変更すべき」とは考えていない。

五及び七について

 一般に、日本版コードの受入れを表明した機関投資家が、既に議決権行使の判断基準に係るガイドライン等を定めている場合、当該ガイドライン等を変更する必要があるか否かについては、当該ガイドライン等の内容等を踏まえ、当該機関投資家が適切に判断すべきものであり、一律に、当該ガイドライン等を変更する必要があるとは考えていない。
 預金保険機構が保有する旧日本長期信用銀行及び旧日本債券信用銀行から買い取った株式の議決権の行使については、預金保険機構の「理事長談話(旧日本長期信用銀行及び旧日本債券信用銀行から買取った株式の当機構への一部移管について)」(平成十七年三月二日)の中でその方針が示され、当該株式の管理の受託者が、預金保険機構と協議の上合意した議決権行使の判断基準に係るガイドラインに基づき、議決権を行使しているものと聞いている。また、預金保険機構が保有する公的資本増強を行った金融機関等の株式の議決権の行使については、「資本増強行に対するフォローアップに係る行政上の措置についての考え方の明確化について」(平成十三年六月十一日金融庁公表)及び「株主議決権行使の基本的な考え方」(平成二十年十二月二十二日預金保険機構理事会決定)に基づき、預金保険機構が議決権を行使しているものと聞いている。
 株式取得機構が保有する株式の議決権の行使については、株式取得機構の「銀行等保有株式取得機構の議決権行使の基本的考え方」(平成十四年三月八日銀行等保有株式取得機構理事会決定)の中でその方針が示され、当該株式の管理の受託者が、株式取得機構の承認を得て策定した議決権行使の判断基準に係るガイドラインに基づき、議決権を行使しているものと聞いている。
 また、日本版コードの公表日(平成二十六年二月二十六日)以降平成二十六年六月二十日現在までの間において、日本銀行は、三菱UFJ信託銀行株式会社による「ガイドライン変更」を承認した事実はなく、「ガイドライン変更」を行う必要性については、三菱UFJ信託銀行株式会社において検討されていると聞いている。
 預金保険機構が保有する株式の管理の受託者は、日本版コードの受入れを表明しているが、日本版コードの公表日(平成二十六年二月二十六日)以降平成二十六年六月二十日現在までの間において、預金保険機構は、当該株式の管理の受託者による「ガイドライン変更」に係る協議を受けた事実はなく、「ガイドライン変更」を行う必要性については、当該株式の管理の受託者において検討されていると聞いている。
 株式取得機構が保有する株式の管理の受託者は、日本版コードの受入れを表明しているが、日本版コードの公表日(平成二十六年二月二十六日)以降平成二十六年六月二十日現在までの間において、株式取得機構は、当該株式の管理の受託者による「ガイドライン変更」を承認した事実はなく、「ガイドライン変更」を行う必要性については、当該株式の管理の受託者において検討されていると聞いている。

八について

 日本銀行が保有する株式の議決権行使の状況について、日本銀行が確認している範囲では、平成二十四年四月から平成二十五年三月までの間に議決権行使の基準日が到来した日本銀行が保有する株式の発行会社の株主総会の全議案のうち、賛成の割合は約八十五・六パーセント、反対又は一部反対の割合は約十四・四パーセントであり、白紙委任、棄権又は不行使はないと聞いている。
 預金保険機構が保有する株式の議決権行使の状況について、預金保険機構が確認している範囲では、同年一月から平成二十六年五月までの間に開催された預金保険機構が保有する株式を発行している上場会社の株主総会の全議案のうち、賛成の割合は約八十二・七パーセント、反対又は一部反対の割合は約十七・〇パーセント、不行使の割合は約〇・二パーセントであり、白紙委任又は棄権はないと聞いている。
 株式取得機構が保有する株式の議決権行使の状況について、株式取得機構が確認している範囲では、平成二十五年一月から平成二十六年五月までの間に開催された株式取得機構が保有する株式の発行会社の株主総会の全議案のうち、賛成の割合は約八十七・五パーセント、反対又は一部反対の割合は約十二・二パーセント、不行使の割合は約〇・四パーセントであり、白紙委任又は棄権はないと聞いている。
 なお、日本銀行等が保有する株式の発行会社の株主総会におけるお尋ねの「取締役選任の議題において、社外取締役が一人以上就任している企業と社外取締役が存在しない企業との、反対(一部反対を含む)の議決権行使の比率」に関しては、日本銀行等において計数として把握していないと聞いている。

九について

 日本銀行等についていえば、日本版コードを受け入れるか否かにかかわらず、その保有する株式について、自ら定めた指針等に基づき適切な議決権行使がなされるよう努めることが重要であると考えている。