質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七五号

内閣参質一八六第一七五号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員大野元裕君提出自衛権と集団安全保障の関係に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員大野元裕君提出自衛権と集団安全保障の関係に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 御指摘の国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号。以下「憲章」という。)第四十二条を含む憲章第七章においては、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為が行われた場合に国際の平和及び安全を維持し又は回復するため国際連合安全保障理事会(以下「安保理」という。)が採ることのできる一連の行動(いわゆる経済制裁措置を含む。)について定めており、これらの一連の行動を総称して講学上集団安全保障の措置と呼ぶことがある。また、憲章第七章は、第五十一条において、国際連合加盟国(以下「加盟国」という。)に対して武力攻撃が発生した場合の個別的又は集団的自衛の権利についても定めている。御質問の趣旨は必ずしも明らかではないが、仮に御質問が、憲章上安保理が前述のいわゆる集団安全保障の措置のいずれかを採った場合において、それ以後加盟国は憲章第五十一条の定める個別的又は集団的自衛の権利を行使し得なくなるか否かを問うものであれば、その点は、それぞれの場合の具体的状況によるものであり、憲章の解釈上必ず行使し得なくなるというものではないと考えている。

四について

 我が国に対する武力攻撃が発生し、いわゆる自衛権発動の三要件を満たす場合においては、我が国自身が武力の行使をしてこれを排除することは、憲法上許容されるところ、これは国際法上は個別的自衛権の行使として正当化されるものであるが、お尋ねのように、安保理により武力の行使を含む必要な措置が採られることとなった場合、国際法上の正当化の根拠が安保理の決議になるとしても、憲法上の考え方が変わることになるとは解されない。

五について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。なお、いわゆる「他国の武力の行使との一体化」の考え方とは、仮に自らは直接武力の行使をしていないとしても、他国が行う武力の行使への関与の密接性等から、我が国も武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとするものであり、他国の武力の行使に関連する我が国の活動が、当該他国の武力の行使と一体化するかどうかについては、一般に、我が国の活動の具体的内容等諸般の事情を総合的に勘案し、事態に即して判断すべきものである。

六及び七について

 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が平成二十六年五月十五日に報告書を提出したことを受けて、国民の命と平和な暮らしを守るため、あらゆる事態に切れ目のない対処を可能とするための国内法制の整備の在り方について、憲法解釈との関係も含め、現在、「安全保障法制整備に関する与党協議会」において協議が進められているものと承知しており、現時点において、集団的自衛権の行使容認を前提としたお尋ねにお答えすることは差し控えたい。

八について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中、それにふさわしい対応を可能とするよう安全保障の法的基盤を再構築する必要があるとの問題意識の下、集団的自衛権の問題を含めた、憲法との関係の整理につき研究を行うため、内閣総理大臣の下に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を開催することとしたものである。