質問主意書

第186回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六五号

内閣参質一八六第一六五号
  平成二十六年六月二十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員川田龍平君提出福島第一原発事故に伴う地下水対策等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出福島第一原発事故に伴う地下水対策等に関する質問に対する答弁書

一から四までについて

 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所(以下「発電所」という。)におけるいわゆる汚染水への対応に関し、原子炉建屋等への地下水の流入を抑制するための遮水壁については、東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議(当時)の下に設置された汚染水処理対策委員会において、複数の対策の比較検討を行った結果、凍土方式の陸側遮水壁(以下「凍土壁」という。)について、遮水効果、施工性等に優れていると評価されたものであり、凍土壁により、原子炉建屋等への地下水の流入が抑制され、汚染水の発生量が減少し、汚染水の保管等に係るリスクや費用の低減が図られるものと考えている。
 また、凍土壁については技術的な難易度が高いことから、国が予算措置を講じ、鹿島建設株式会社が実証実験を行うとともに、汚染水処理対策委員会等において、凍土壁の構築後の原子炉建屋近傍における水位の管理等の技術的課題について、検討を行っているところである。
 さらに、凍土壁以外の対策として、雨水の浸透を防止するために発電所の敷地内を舗装する等の重層的な対策を講ずることとしているところ、これらの対策を検討するに当たっては、その手法として、御指摘のセメントミルク等の注入工法による遮水の可能性についても排除せずに検討を行ったものである。

五について

 御指摘の「地下水バイパス計画」については、関係者の理解を得ながら運用されているものと承知している。

六について

 御指摘の「完全に把握」の意味するところが必ずしも明らかではないが、発電所の敷地内における地下水の流れについては、東京電力による調査及びシミュレーション、汚染水処理対策委員会等における検討等を通じて把握している。

七について

 深刻な原子力事故における原子炉の廃止措置及び汚染水に係る対策については、世界にも前例のない困難な事業であり、民間事業者のみで実施することが困難なことから、関連する技術開発のうち、あくまで技術的な難易度が高いものに限って予算措置を講じているものである。
 また、参議院で可決された原子力損害賠償支援機構法案に対する附帯決議(平成二十三年八月二日参議院東日本大震災復興特別委員会)の二において、原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号。以下「機構法」という。)は「あくまでも被災者に対する迅速かつ適切な損害賠償を図るためのものであり、東京電力株式会社を救済することが目的ではない。」とされている。
 その上で、機構法においては、国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償支援機構を通じて、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図り、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資するよう、万全の措置を講ずるものとされている。

八について

 お尋ねの国営ひたち海浜公園においては、平成二十四年六月以降、利用者が多く滞在する箇所において、定期的に空間線量率を測定し、その測定値を公表してきたところであるが、平成二十六年五月二十三日に、定期的に測定している箇所以外の箇所で空間線量率を測定したところ、そのうち三箇所において、茨城県ひたちなか市が定める除染実施計画において除染の対象とされている値を超えた空間線量率が測定されたことから、除染が必要な区域を立入禁止としたところである。当該立入禁止とした箇所については、利用者が多く滞在する箇所ではないことから、定期的な空間線量率の測定はしておらず、東京電力の発電所の事故直後と比べて空間線量率が上がったかどうかについては、お答えすることは困難である。
 また、空間線量については、近傍にある放射線同位元素によって汚染された物等による影響を受ける可能性もあるため、必ずしもお尋ねのように「新たな原子力発電所事故が起きない限り、関東・東北地方で現在より空間放射線量が上がる地点はない」ものとは言えないと考えている。

九について

 御指摘の「いわゆる「生物濃縮」をしやすいとされている食品」の範囲が必ずしも明らかではないが、食品の出荷制限については、食品中の放射性物質に関する検査の結果、食品中の放射性物質に関する基準値を超えた品目について、産出地域に広がりがあると考えられる場合に、当該産出地域及び品目を対象として行うこととしている。